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2010年6月 1日 (火)

社民党の政権離脱は正しいか

社民党の政権離脱は、彼らの得にはならないと思います。このことを社民党の前身である旧社会党に遡って考えてみます。

1994年、村山首相はそれまでの非武装中立という社会党の政策方針を修正し、自衛隊の存在を認めて日米安保を堅持する現実路線への転換を表明しました。それが原因で、党は退潮をきたし、どんどん議席を減らしてきたと言われています。その後は、土井マドンナ委員長のもとに集まった人たちも居て一時ブームの様相を呈したこともありましたが、衰退の流れは変わりませんでした。

でもその理由が、非武装中立を放棄して信念を曲げたからだというと、必ずしもそうではないような気がします。もしそうなら2006年の社民党宣言後は議席を回復するなどの効果が表れるはずなのに、そうはなっていないからです。

2006年の宣言では、自衛隊違憲論と基地縮小・排除論に回帰して元の旧社会党方針に戻しました。それでも、退潮に歯止めがかからなかったということは、当時の村山首相の方針転換が、社会党の党勢退潮の原因であったとは言えないということの証左になります。理由は他にあるということじゃないでしょうか。

だから今回も、「閣議決定への署名は、社民党の信念を再び曲げたと受け取られて社民党支持離れを加速するのでないか。」との懸念は当たりません。他にある理由をしっかり認識して、それを前提にした戦略を立て直さないと、だめです。

では、その理由はなんだったのでしょうか。

一つの解答は、旧社会党の政策方針支持層が減少している以上に選挙制度の変更が議席喪失を加速したということだと思います。

今の選挙制度では、主軸に対抗する手段として明確な対立軸は必要ありません。例えば、再軍備自主防衛に対する非武装中立というように、ゼロか百という明確な対立軸でなくても、支持層を二分するような少しの政策相違点があればいい。小選挙区制では、一番支持が多い主張と二番目に支持が多い主張の一騎打ちになる傾向があります。だから、三番目以降の主張は、たとえ二番目との間で得票率がさほど開いてなくても、一騎討ちに参加することすらできません。得票率と当選とは違うのです。そのことは今回の英国の選挙でも証明されました。だから、対立軸を明確にするより、支持の多さで二番手につけていることの方が大切なのです。もっと言うならば、二番手につけるためには、むしろ一番手との対立軸が不明確なくらい違いが小さい方が、有権者の選択を終盤まで迷わることができるので、有利と言えるかもしれません。

社民党(旧社会党)の場合はどうでしょうか。冷戦時代であれば、自衛隊違憲、非武装中立は明確な対立軸であるとともに、世論を二分できるインパクトを持ちえたのかもしれません。しかし、冷戦後は、東西の大きな対立がなくなった代わりに、世界のあちこちで、宗教がらみや民族がらみ小競合いや地域紛争が起きるようになり、平和な日本も、武力衝突の危険を身近に感じるようになりました。実際に2001年には戦後初の武力衝突が北朝鮮(工作船)との間で発生しました。そんな状況の中で、非武装中立主張層は二番手世論から三番手世論以降に劣後するようになってきたのではないでしょうか。

それでも、三番手なら三番手なりの得票率に応じた議席を確保できていいはずです。しかし、現実にはそれ以上に急速に議席を失っていった。この間に選挙制度が三番手以降に不利な小選挙区制を取り入れたものになっていったからです。そのため、前述のように、一定の得票がありながら、議席獲得の一騎打ちに参加できなかったわけです。

衆議院選挙に小選挙区比例代表制が取り入れられたのが、村山発言と同じ1994年だったというのが、象徴的です。

では、社民党はどうすれば良いのか。解答は、選挙制度を中選挙区制に変更して、三番手以降なりの得票率に応じた議席を確保できるようにするか、それが駄目なら連立政権にしがみついて、閣僚を送り込み、機会を捉えて党の政策方針を実際の行政に少しでも反映させる可能性を残しておく道を選ぶのが得策ではないでしょうか。確かにブレずに主義主張を貫き通すのはかっこいい。しかし、それでは物事は進みません。政治不信は、何も決められず、その結果何も進まないことへ不満からきているのであって、福島党首の言うようなブレることへの不信ではないと考えます。

まとめると、社民党は、村山発言まで時計の針を戻して、ブレることへの不信を恐れずに非武装中立論と基地撤廃論を封印し、現政権内で政策立案に反映できるものを主張する手段として、なりふりかまわず政権に残ることを優先すべきであったと思います。

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