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2011年7月 1日 (金)

復興の特区活用はどうするか

復興に特区を活用しようという動きがあります。いつも感じていて、今回の大震災への政府の対応で特に感じることは、なんとか本部やなんとか委員会を沢山立ち上げてそれで仕事をした気になっている愚かさです。

特区についても、「特区」という言葉の響きに惹かれて、それを使うことが自己目的化してしまい、そこで何をするかという本来の目的が忘れられてしまうことがないでしょうか。あるいは、とにかく特区を使えという政治屋の指示に応えようとして、それに馴染まないものを無理にこじつけ、かえって復興の足を引っ張ることになりはしないでしょうか。

そうならないようにする為には、特区という枠組みの目的を理解し、そのメリットを生かせる活用の仕方を検討しておく必要があります。

中国では、1978年に鄧小平が打ち出した改革開放政策の一環として主として華南地域に経済特区が設置されました。中国全土に一気に解放の特例措置を認めると国中が混乱し、イデオロギーの破壊にもつながりかねないので、まずは一部の地域では試してみようという趣旨でした。

その後、日本では規制緩和による市場重視型経済の導入を勧めた小泉純一郎政権が、規制緩和の効果を測るモデル地区として、構造改革特別区域を設定しました。

特区が使われ始めたこれらの経緯を調べてみると、どうやら特区の目的とメリットは以下のように整理できそうです。

1.    目的 :

(1)  帰納法的に試行錯誤を繰り返しながら広域に応用できる法的な枠組みを模索する。

2.    メリット :

(1)  日本全国に適用する為の制度やルールを作ろうとすると、多くの人々の意見をとりまとめて調整しなければならず、やるからにはやり直しや修正等許されないが、特区であれば全国規模ほど調整負担は大きくないので、立ち上がりが早い。

(2)  試験的に行おうという要素があるので、一発勝負の緊張を伴うのではなく、try & error を繰り返して良い物を追求することができ、初期投入案の賛成者も反対者も、まずは最大公約数的な取り決めから始めることができるので、意見の違う集団が互いに反対意見を譲らずに思考停止に陥ってしまうことがない。

では、このメリットを生かして活用するにはどうすればいいのでしょう。

A    広域展開の可能性を前提として関係者に特区の目的とメリットをよく説明してしっかり理解してもらうこと。
特に試行錯誤を繰り返しながら広域に応用できる枠組みを模索するわけですから、導入後も機会をとらえて意見を交換しなければなりません。途中で、なんでわざわざそんなことしなければならないのかという疑問を持ってしまっては目的を達成できないから、よく説明しておく必要があります

B   既存の制度枠外での対応が必要なもので取り組む。
既存の枠組みの中ではできないことを始めようというから特区という手法をとるわけです。だから既存の制度枠外での対応が必要なものでなければメリットを生かせません。それは規制緩和でも新たな規制をかけるものでもかまいません。

C   議論があっても、さしあたっての最大公約数的な合意点を見出す。
多少の議論があるほうがメリットを活用できるでしょう。実際にやってみると実験結果を目の当たりにできる体験が伴うので、納得感があるからです。ただし、導入にあたっては、少なくても走りだせるだけの合意点がなければなりません。真っ向から意見が対立したままでは始められませんから。

D   早い対応が必要なもので取り組む。
最後に、いち早く手当が必要なものに対してメリットを生かせます。但しこれには注意が必要です。メリットを生かせるだけで、本来の特区の目的を意識したものであるかどうかという点では疑問が残るからです。
上に書いた2-(1)のメリットは、広域に応用できる枠組みを模索ための試行錯誤が導入部分で時間がかかってしまっては意味がないので、機動的に対応できるようにと用意されたものです。ですから、広域応用枠組みを模索する気もないのに、このメリットだけ享受するというのはずるい方法と言わざるをえません。

さて、以上を踏まえた上で現実に持ち上がっている特区構想を検証してみましょう。

まず、宮城県の農地大規模化を促す特区構想について。これは、大規模化を目的とした農地法等の規制緩和を求めるもので、上記の活用条件のB.を満たします。また、大規模化はもとから議論があったテーマなのでこのさい試してみようということなら条件A.やC.も満たし、震災復興なので当然条件D.も満たしますから特区活用のテーマとして相応しいと評価できます。

次に、福島県の原発克服産業拠点特区構想はどうでしょうか。これも再生エネルギーのための規制緩和を伴うので、広域展開の可能性があり、既存制度枠外での試行錯誤が必要ですから、相応しいと言えるでしょう。

中でも興味深いのは、宮城県の水産業特区構想です。地元の漁業協同組合に優先的に与えてきた漁業権を企業も取得しやすくしようとしていますが、これは復興スピードを上げるために企業の資金量や人材を活用するメリットがある半面、地元漁協としては既得権が脅かされるので、真っ向から対立している案件です。

上記活用条件のC.で求める最大公約数的合意点を見出せるかどうか不透明で、それが見出せなければ、いくら復興効果があっても導入は難しい。しかし、広域展開という意味では、一度試してみる価値が相当ありそうです。いままで農業が農地法やら農業委員会への批判などで注目を浴びる機会が多かったのに対して、漁業については議論が少なかったからです。是非、議論をつくして導入の糸口を見つけてほしいものです。

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