« 島田紳助、暴力団に解決してもらった面倒なこととは何ですか? | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第15章(全61章)・・・第二巻 »

2011年8月30日 (火)

中小企業向け融資継続支援としての劣後ローン転換促進は支援になるか。

8/26日本経済新聞朝刊の記事に、「中小向け融資継続支援、金融庁指針見直し、長期ローンに転換促す」というのがありました。震災や円高で経営難に陥った中小企業を支援するのがその目的だそうです。

どんな仕組みかというと、記事によれば、企業向け貸出債権の劣後ローンへの転換を促進するために、検査指針を見直し、劣後ローン償還条件や金利設定などの明確な条件を設定するというもの。劣後ローンは貸出金に変わりありませんが、返済順位が他の融資(ローンという。住宅ローンだけがローンではありません。融資のことを英語でローンというのです)よりも後になる、つまり劣後するというものです。

貸出債権を劣後ローンにする事が、どうして借り手である中小企業にとって良いかというと、自己資本に準ずるものとして看做してくれるからです。どうしてそのように看做してくれると良いのかというと、企業の自己資本比率を改善するものになり、改善すると財務分析では、安定性が向上したと見られるからです。

その仕組みはこうです。例えば、企業の総資産が¥100、負債が¥80、自己資本が¥20であるとしましょう。

 

総資産=¥100

負債=¥80

自己資本=¥20

この場合の自己資本比率は¥20÷¥10020%です。ここで、負債は大雑把にいうと、銀行の貸出債権です。この負債のうち¥50が自己資本に代わった場合を考えてください。方法としては、第三者割当増資をして自己資本を¥50増やし、その資金で銀行の借入金を¥50返済するなどです。すると、

総資産=¥100

負債=¥30

自己資本=¥70

となり、自己資本比率は70%に大きく改善します。自己資本は最後まで株主に返す必要のないお金ですから(株主の有限責任)、返さなければならない借入が減ったということで、安定性が向上したと見られるのです。

劣後ローンは自己資本ではありませんので、最後まで返さなくても良いお金ではありませんが、他の借入金を返し終わった後で返せば良いお金なので自己資本に準ずるものとして、安定性向上に貢献します。

今回の支援策はこれを狙っているわけです。安定性が増すと、借り手としての信用力が増しますから、銀行から新規にお金を借りやすくなるというものです。

しかし、もっとよく深読みする必要があります。

お金を貸しやすくなるのは、新規の融資をする(かもしれない)銀行のことです。今までは安定性を欠いていたために融資を拒んでいた銀行が、改善したことで融資する気になるかもしれないからです。

でも、いままで持っていた貸出債権が突然劣後ローンに切り替わってしまった、既存の銀行はどうでしょう。通常の債権なら、他の債権者と同じように返済を受ける権利があったのに、劣後ローンに代わることで、他の債権者が全部返済を受けた後でしか返済してもらえない、場合によってはもう返済資金が残っていないかもしれません。すると、通常の貸出債権では貸倒引当金を10%積んでおけばよかったものを、50%くらい積まないといけなくなるかもしれません。これは大変なことです。

金融庁が検査指針を見直すといっても・・・・・かりに、「通常債権と同じように劣後ローンのリスク額も同じに看做すよ。」と言っても、劣後するという実態が変わるわけではありません。当然、既存の銀行はこれを嫌うでしょう。前回の亀井静香氏の「金融円滑化法」のように、仮に金融庁が銀行に無理強いすると、今回はいうことを聞くが、次回からは羹に懲りて、もっと審査を厳しくするでしょう。以前に当ブログに書いたように、銀行が中小企業に貸さなくなってしまったのは、この類の羹の繰り返しでした。

こんなことをしていると、結果として、既存の取引銀行が逃げ、新規の取引銀行が寄ってくるかもしれない、こないかもしれない・・・という状況に・・・つまり、かえって不安をかかえることになりはしませんか。

結論は、この支援策の効果は期待できないということです。

そもそも、融資は訳もなく継続するものではありません。お金と事業計画は対のもので、しっかりとした事業計画があって、実現可能性を説明できる納得性があれば、劣後ローンだの、継続などの手練手管をろうしなくても、ちゃんと銀行はお金を貸してくれるものです。安易に支援策にのるより、事業をしっかり見直してみましょう。

|

« 島田紳助、暴力団に解決してもらった面倒なこととは何ですか? | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第15章(全61章)・・・第二巻 »

銀行・金融」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/548369/52608599

この記事へのトラックバック一覧です: 中小企業向け融資継続支援としての劣後ローン転換促進は支援になるか。:

« 島田紳助、暴力団に解決してもらった面倒なこととは何ですか? | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第15章(全61章)・・・第二巻 »