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2011年10月13日 (木)

スロバキアの欧州金融安定基金拡充案否決と、タダ乗り許容力

ユーロ圏の財政や金融システムが危機に瀕しているため、この対策として、2010年からのギリシャ危機を踏まえて設立されている、「欧州金融安定基金(EFSF)」の機能を強化する案がまとめられ、各国の承認決議を待っています。先月まで順調に各国で承認されてきましたが、最後に残ったスロバキアでは、否決されてしまいました。

どこか一国でも承認が得られなければ全部だめになってしまうところ、スロバキアは他の全員が賛同しているのに、一人でこれに反対を唱え、せっかくまとまりかけた案を水の泡に帰そうとしているように見えます。

よく話を聞くと、背景には政治的な駆け引きがあるようです。次の決議では野党が、政権の総辞職等を条件に賛成に回るだろうと言われていますので、市場はこれを冷静に受け止め、ユーロの為替相場も極端には影響を受けませんでした。

それにしても、どうしてでしょう?

NHKのニュースでは、市民のインタビューが紹介されていました。彼女は、「ギリシャの人々の暮らしは私達よりいいのに、なぜ私達がギリシャを支援しなければならないの?税金を使うなら私達の為に使ってほしいわ。」と言っていました。スロバキアは厳しい基準をなんとか苦労してクリアして、ユーロ圏に加入しています。一方のギリシャは、偽りの統計を使って、基準をクリアしてユーロ圏に加入しました。つまり、粉飾決算によってごまかして加入したということです。悪意ではありませんでしたが。

こんなことが背景にあるなどして、どうやら、スロバキアの世論は、「怠けていたせいで破綻しそうな国は、いくらユーロの仲間といえども助けてなんかあげられない。助けてもどうせまた駄目になるだろう。」というようになっているようです。こう言われると解らなくもないなと思ってしまいます。議会はそうした世論を受けて、反対が多かったのでしょう。しかし、一方ではせっかくまとまりかけた案を一国の否決でつぶしてしまうことへの責任の大きさに慄き、空気を読む必要も感じている。

最終的にどんな結論を出すかはわかりませんが、この問題は、世の中のタダ乗りをどこまで許し、どこからは許さないかという永遠の課題にぶち当たっているのだと思います。

似たような問題は他にもあります。例えば、

1.  米国の健康保険

オバマ大統領が進めた皆保険は、共和党を支持する多くの人から嫌気されていました。その理由も、スロバキアの世論と似ています。「この国は自己責任の国だ。努力次第ではアメリカン・ドリームをみることができるはずなのに、ろくな努力もしてこなかった連中のために、われわれの税金が使われるのはまっぴらごめん。」というものです。彼等も社会全体として、セイフティ・ネットが整備される必要があるということは理解しているでしょうけど、感情的にはどうしても納得がいかないということでしょう。ことは「機会の平等か、結果の平等か。」という問題にも関わってきます。

2.  イタリア北部と南部

昔から、イタリア北部は、経済が発達し豊かでしたが南部地方は貧しかったので、経済的には北部地方が南部地方を支援する構造が続いてきました。当然、北部地方の人々には不満がたまります。でも同じイタリア人同士なので助け合わなければと、なんとか耐えてきました。

EUを含む上記の3つの例は、しかし、同じように見えて、同じではありません。イタリアは一国の国内の問題で関わる人々もほぼイタリア人という単一民族。米国は、相当の範囲で自治が認められている州の集まりである合衆国。そして、EUは民族も言語も異なる多数の国の寄り合い所帯。

そして、問題の根の深さもそれに応じて異なっているようです。このことから、民族の絆が強いほど、タダ乗りを許容できる力が強いということが類推できます。

もともと、EUはECでした。さらにもっと昔に遡ると、独仏国境地帯にあって、たびたび両国の争いの種になっていた炭鉱について、再び争いにならないように国境を越えた機関で管理しようという発想で、周辺の国だけで形成した欧州石炭鉄鋼共同体が始まりでした。それが、どんどん拡大し、真に迫られた当時の思いをすっかり忘れてしまったのが現在の体たらくなのではないでしょうか。だから、国家間の絆も弱く、体質も異なる。危機にひんしても仲間として助け合う気にならない。

この状態を脱するためには、EUを合理的に円満に離脱できる枠組みを作るのが一番いい。そしてタダ乗りを許容できるほどの一丸となれる規模にまとまるのがいいのではないかと思います。

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