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2011年11月

2011年11月24日 (木)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第25章(全61章)

25.   社会への影響と社会的責任

(1)   組織はみな、二種類の社会的責任を負う。

  組織そのものが社会に与える影響から生じる責任:組織の社会への行いに関わる。

  社会が抱える矛盾から生じる責任:組織は社会のために何か出来るかという問題。

(2)   社会的影響への責任

  意図していなくても責任を負う

a.  組織が周りに影響を及ぼしたら、意図したものであろうとなかろうと、責任を負わなくてはならない

b.  たとえそれが有益そうな影響であっても、本来の役割を超えたものであるなら、いずれは反感や抵抗を招き、厄介の種と看做される。

·  世の中は反対していないという理屈は通らない。

·  世間からそんな要求はなかったというは十分な弁明にはならない。

c.   例 :

·  大手電力会社が、州の公益委員会に対し、排気管清浄装置の認可を求めたが、委員会は電力料金が高くなることを理由に再三にわたってこれ退けた。

·  にもかかわらず、やがて公害への不安が大きくなると、理不尽にも、電力会社が環境を汚染していると叩かれた。

  社会への影響を見極めるのは不可能

a.  組織の何が周りに影響を及ぼすかを見極めようとする取り組みとして、新技術の導入に当たって、社会や経済への影響を見極めようとする、技術アセスメントがある。

b.  しかしこのような取り組みは失敗に終わりかねない。

c.   その例 :

·  熱帯病など病原中から米軍兵士を守るために開発されたDDTは、全く想定されていなかった農業従事者や林業従事者が植物に使ってしまい、おびただしい環境破壊を引き起こした。

d.  他方、専門家が技術の影響を予測しても、現実がその通りになる例はまずない。

e.  このように、社会への影響を見極めるのはほぼ不可能である。

  技術を監視する必要性

a.  従って、新技術が及ぼす影響を予め見極めるのではなく、導入されたら、どのような影響が生じているかを慎重にモニタリングするのがよい。

b.  必要なのは「普及途上にある技術」にめを光らせること。そして、それは経営層の責任である。

c.   技術以外の、社会や経済の発展や革新の影響も重要である。

  影響にどう対処すべきか

a.  目標は、社会、経済、地域、個人への影響のうち、組織の目的や指名から外れたものは最小限にとどめ、できればなくすこと。

  規制が必要とされる局面

a.  上記のような自社での取り組みは常に行われるべきだが、できない場合もある。

·  一般の人々に負わされていた「外部性」が、これに取り組もうとする企業にコストとして転嫁される。

·  このため、業界全体が同じ規則受け入れない限りは、それに取り組んでいる特定企業の競争優位が脅かされることになり、取り組みが広がらないからだ。

b.  これに対処するため、規制(なんらかの公的措置)を導入するほかなく、問題解決につながりそうな規制内容を考え、導入を働きかけるのも経営層の仕事だ。

·  企業や組織はこの責任を避け、「規制はないに越したことはない。」と考えてきた。

·  しかし、これが当てはまるのは、組織の影響を事業機会に変えられる場合だけである。

c.   また、好ましくない問題を解決しようとするなら、トレードオフは避けられない。

(3)   社会矛盾への責任

  社会問題は、企業にとっては事業機会でもある。

a.  社会問題を事業機会へ変えることにより、社会のニーズに応え、組織そのものにも奉仕できる。

b.  変化をイノベーション(新しいビジネス)へとつなげるのが企業の仕事。

·  イノベーションを技術としか結び付けられないようではだめ。

·  産業史をとおして、社会変革は技術イノベーションと同等以上に重要であった。

c.   社会問題から事業機会を生み出すなら、新しい技術ではなく、新しい製品やサービスであろう。これらは社会変革のなか生れ、企業と産業に恩恵と活力をもたらす。

·  組織は技術研究には取り組んでいるが、社会革新はいまだに偶然やひらめきに頼っている。技術と同じように社会や地域の為のR&Dを組織的に進めるべきだ。

d.  考えられる分野は、中年の知識労働者の疲労へのニーズがあるだろう。

  社会の「退行性疾患」

a.  社会問題のなかには、事業機会に変えることができない深刻なものもある。

b.  社会が病んでいては企業も健全ではいられない。我々はこれらに対しても挑むべきか否かという議論を避けようとしてはいけない。

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2011年11月20日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第24章(全61章)

24.  マネジメントと生活の質~企業の社会的責任

(1)   「企業の社会的責任」について

  従来の「企業の社会的責任」は、大きく以下の3つの分野に焦点を当てていた。

a.  私的な倫理と公的な倫理の関係 :マネジャーは組織への責任を果たすために、個人の倫理を踏み外してでも行動することはどこまで許されるかという視点。

b.  雇用主は権力と富を持つのだから、従業員に社会的責任を負うという議論。

c.   「社会的責任」は、経営者は率先して地域の文化を振興すべきだと主張し、経営者にそのような役目を負わせるために用いられた。

  しかし、近年は、従来と異なるところに着眼し、社会の問題に挑み、解決するうえで、企業は何をすべきか、何ができるかに焦点を当てる傾向を強めている。
例えば、人種差別問題や環境の保護や復興といった社会問題である。

(2)   背景と企業への期待

  従来とは着眼点が変わった、背景として以下が揚げられる。

a.  企業の成功
企業という仕組みがうまく機能したため、企業に対して新たな期待が生まれた。
社会的責任を果たすようにという声は、企業への敵意に根ざしているのではなく、期待している。成功の代償としての意味合いが強い。

b.  政府への失望
大きな社会問題を解決できずにいる政府に対して、能力への疑念がわき上がっている。

  このように、マネジャーが社会の主要なリーダーとして台頭し、政府への失望が広がり、生活の量が質へと重点点が移る変化が生じたため、企業のマネジャーに対して、社会への配慮を中心に据えて事業w展開するようにとの要請が生まれている。

(3)   3つの他山の石
しかし、社会的責任には、善良な意図や立派な行い、強い責任感などが誤った方向へ進んでしまう問題もある。以下はその例である。

  他山の石① :ユニオンカーバイドとウェストバージニア州ビエナ

・  19世紀、ユニオンカーバイドは、州内でも失業率の高い地域に新たに向上を立て、苦境にあえぐ地域の失業を和らげ、雇用を生み出そうと努力した。

・  一時は社会的責任を果たす姿勢が称賛されたが、10年後は、汚染が問題となった。

  他山の石②:アルゼンチンにおけるスウィフトとデルテック

・ アルゼンチンに食肉加工工場を営んでいたが、政府の政策により家畜の供給が減少し、価格が高騰したため、国際競争力を失ったと判断、デルテックに売却した。

・ デルテックは地域の雇用を維持するために頑張ったがとうとう清算に追い込まれた。

・  世間の評価は「他の外資系食肉加工会社は事業の採算が取れなくなった時点で向上を閉鎖したが、デルテックは持ちこたえようとして、周囲の期待を高めておきながら無残にそれを裏切った」と厳しいものだった。

  他山の石③ :公民権運動とクエーカー教徒の良心

・ 米国大手精製紙会社が南部に派遣した、クエーカー教徒のマネジャーは、黒人への採用差別を解消しようとしたが、その時は「大企業の経済力を振り回して、自分の道徳観や理念を地元社会に押しつけようとしている。」との批判を浴びたので、それを断念した。

・ しかし、何年か後、この会社は「地域最大の雇用主のくせに、人種問題を積極的に解決しようとしなかった。」と非難された。

  このように、企業の社会的責任を果たそうと努力したのに報われたいこともあり、ことは単純ではない。

・ しかし、「企業は経済組織であるから経済面の務めだけを果たすべきだ」というミルトン・フリードマンの主張には賛同できない。

・ 現代社会では、政府はもはや最高の権力も持っているわけでも、公益の守り手でもないから、企業が社会的責任をはたすしかないのだ。

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2011年11月13日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第23章(全61章)

23.   「人材こそ最大の資産である」

  経営者が働き手の達成意欲を満たそうと真剣にならないのは、主として権力と威信を区別できていないから。権力を手放すと威信も損なわれると誤解している。

  経営層は権力を持たないが責任は負っている。その責任を果たすために威信が要る。成果をあげないかぎり威信は保てない。アメリカの経営層は残念なことに特典を求める。

(1)   分権化。分権化すればマネジメントへの要求は大きくなる。

  1940年代、50年代は、分権化を進めると経営トップの力が弱まると懸念されたが、最近では、分権化はむしろ力を強めると理解されている。

a.  事業のマネジメントではなく、仕事のマネジメントを分権化する。従業員に責任を負わせ、職場コミュニティに自治を認めるのは分権化である。

b.  経営者はそれらの仕事から解放され、自分たちにしかできない仕事に注力できる。

  働き手に責任を負わせる(分権化)と、彼らはマネジメントに多くを求めるようになる。

a.  求めるのは、心理学や精神療法などではなく、卓越した手腕だ。

b.  それらは、プランニング、目標の設定と優先順位づけ、課題の検討と基準の設定など本来の役割である。

とかるやの注釈 :分権化により権力をもたず、従業員におろしていくことで、より大きなマネジメント手腕を従業員から求められ、その責任を、プランニング、課題の検討と基準の設定といったもので果たしていくことによって威信が保たれる。)

(2)   人を率いる

働き手に達成感を得させるため、マネジャーは部下を経営資源としてみなす必要がある。それはどういうことか、人材マネジメント分野の下記3つの従来のアプローチ毎ににみていく。

  福祉的なアプローチ:働き手は様々な問題を抱えているため手を差し伸べてやらなければならないとするアプローチの仕方

a.  19世紀クルップ社の事例:従業員への助力を惜しまず、住居、医療、融資などの世話をして繁栄したが、この温情主義が期待に応えきれず没落した。

b.  「働き手は弱い存在だ」という前提の温情主義は、次第に意義を失い、人材マネジメントに代わるものではなくあくまで補完的約割にすぎない。急場しのぎ方策だ。

  人事管理 :おおぜいの人々が一緒に仕事をする以上全体を管理する業務が生じる。

a.  人事管理は怠ってはいけない。人勢選抜、採用、研修、医療、安全、賃金福利厚生など幅広く、これらは職場コミュニティにとっても関心の的である。職場コミュニティの勤めと位置付けつつ、経営層がそれにふさわしい組織づくりをすべきだ。

b.  その組織においても人材に対する誠実さが求められる。誠実さを示すのは経営トップの仕事で、人事管理部門はこれをサポートする(42章参照)。

  統制と火消し :働き手を費用や脅威の源ととらえ、費用を管理して脅威を抑える。

a.  たしかに人件費の管理や問題が起きたときの火消しは必要だが、それだけでは人材マネジメントとは言えない。

  結論

a.  温情主義、人事管理、統制と火消しを柱としたアプローチはいずれも人間は弱く、問題も起こし、ときに脅威になるという前提で、人材の強みに着目したものではない。

b.  しかし、人材マネジメントは働き手の強みを引き出すこと。強みや成果をあげる可能性期待して雇用するはず。働き手の強みをテコにして生産性を高め、人材の弱みによる悪影響をかわすことである。

とかるやの注釈:従来の人材マネジメントは従業員が問題を起こさぬように管理することに主眼が置かれていた。それも必要だが、本来は成果につながる工夫が中心とならなければならない。福祉は必要だが、温情は害になる。)

(3)   「人材こそわれわれの最大の資産である」

  会計上、人材は「経費」として位置付けられているが、最近では、財務諸表に従業員を「資産」として載せてはどうかとの提案がなされている。(とかるやの注釈:経費はその年に費消され、製品やサービスのコスト形成するものにすぎないが、資産となると、それは製品やサービスを生む為に何年も継続して使われる設備である。もちろんドラッカーのいう資産としての人材は単なる設備ではなく、それ自体が成長しさらに生産性向上をもたらす自己増殖可能なものとして捉えている。)

  人材を資産と捉えるために必要な慣行は・・・

a.  業務と働き手に責任を伴わせ、実績のあがる仕組み作りをする。

業務ごとに、担当者が上司と相談して目標を決める。

働き手が成果を手に入れられるよう、仕事を生産性があがるように組み立てる。働き手には、要求基準、規律、インセンティブなどを与える。

b.  マネジャーは部下たちを情報源、知恵袋として扱う。

  ・上司への責任と貢献意欲を部下に植えつけるため、自身の業務について 部下に意見を求める。「上司・会社からどんな後押しがあれば仕事に役立つか?

  ・ いまさらのようだが、このような問いと向き合うと、上司部下ともに共通成果に着目し、互いの関係が何を目的とするのかを考えるようになり効果的だ。

(4)   人材の選り分け

  人材マネジメントの中で最も重要なのが、適材適所の見極めである。

  日本企業は、人材を解雇できず長く付き合わなくてはいけないから、人材の選り分けに長けているが、解雇しやすい欧米においてこそ選り分けができてなくてはいけない。

  成果の思わしくない人材も、たいていの場合は「役立たず」ではなく、仕事や職場の相性が悪いだけである。

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2011年11月10日 (木)

TPP協議に参加すべき。政治の出番となる社会的規制の話はもっと後。

TPP協議参加の賛否を巡る議論は、協議内容が我が国にどのような影響をもたらすかについて、ひとつひとつ詰めている作業になっています。例えば、国内農業保護、医療から皆保険など。個々の問題について対症療法的に議論するときりがないので、それらを議論の性質で括って、その括り毎に議論してみる必要もあると思います。

1.   ます、関税障壁と非関税障壁の問題に分け、関税障壁について考えます

関税を撤廃することによって、影響があるのが農業等の国際競争力のない国内産業の保護が必要であるかどうかです。

僕はないと思います。

製造業は随分以前から国際競争のリスクにさらされて、そのリスクに打ち勝つための努力を続けてきました。その間に競争力のない企業は市場から撤退し、その度に血を見てきました。そのかいあって、現在があります。

農業やサービス業などは、急に国際競争リスクにさらすと大変だから、当面保護して、その間に競争力を養おうということではなかったでしょうか。仮に当面ではなく、永久に保護するというコンセンサスがあったとしても、競争力は即ち高生産性、高品質などで測りますから、これらを向上させる努力は国際競争に関係なく継続して行われているべきでした。それができていないとなれば、実際に国際競争にさらすことで、危機感を感じるしか向上努力を促す道は残されていません。これは反対派からみれば乱暴は意見だと思われるかもしれませんが、しかし、製造業はその乱暴を強要されてきたのです。

だから、非関税障壁に限定するならTPP参加すべきという結論になります。

2.   次に、非関税障壁について考えます。

これは、経済的規制と社会的規制に分けて考えるのがいいでしょう。

経済的規制については、緩和していくべきだと思いますので、多国間協議の中で迫られなら外圧を利用した緩和が進むでしょうから好ましいと思います。例えば、実際にはTPPの協議対象にはなっていないかもしれませんが、通信回線の開放などです。

社会的規制については、困ります。

実際には協議対象になっていないが、将来は議論の対象になり得るとされている、医療分野の問題などは社会的規制の範疇に入ります。国家の理念として国民皆保険はその大切な柱の一つです。この辺は米国とは全く異なる国民性によるもので、政治の力で守らなければならないと思います。だからこれが損なわれるならTPP参加には反対します。

で、結局TPPに反対かというと、そうではありません。

TPPに参加することで得られる最大のメリットは国際競争条件の平等化、つまり機会均等です。参加しなければ、メリットが得られないが、デメリットもないと考えるのは無理です。この機会均等がなければ、それこそ日本経済は破綻してしまうでしょう。農業やサービス業を守って、日本経済全体が破綻してしまうという道を選択するのでしょうか。

では、どうすればいいのでしょう?

判断の材料を、TPP参加のメリット(機会均等)は近い将来だが、社会的規制への影響、つまり政治が必要になるのはもっと先の話だろうというところに求めてみました。従って、結論は、TPP協議には参加し、将来社会的規制の話になった時に抵抗する。抵抗できなければ撤退するというものです。

将来、抵抗するのは不可能だというのが反対派の意見ですが、これに対しては、現在のEUがヒントになると思います。

EUは石炭をきっかけとして発足した経済共同体ですが、いくつかの段階を踏んでここまで来ていますが、その都度多くを巻き込んだ議論がなされ、多くは民主的にかつ個別国を尊重して進められました。その証拠にイギリスは共同体に参加していますが、EMSから離脱しました。

そのEUの段階とは、

a.  資本や労働の国境を超えた自由な移動を認める

b.  個別国が金融政策自由度を放棄して、通貨を統合する

ここまでが、現在の段階です。今後EUの存続維持に欠かせない段階として、

c.  個別国が財政政策自由度を放棄して、財政を統合する

d.  最終段階として、政治を統合して国家運営の理念を統合する

二次大戦後から「a.」に進み、「b.」が実現するまで数十年かかりました。今後「d.」までは相当の時間がかかるでしょうし、そもそも「d.」の段階の話すらでていません。

TPPがEUと全く同じとは言いませんが、政治の力が必要な、社会的規制云々を議論するまでの段階は相当将来のことではないかと思います。

それを今から心配するより、まずは前に進むことが大切なのではないでしょうか。

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2011年11月 4日 (金)

ギリシャのユーロ離脱を許してあげてほしい。自由な市場を維持してこそユーロは安定する。

先月下旬(2011.10.26)に、ギリシャ救済パッケージを含むユーロ対策包括案が合意されたばかりなのに、今度は、当のギリシャがこの救済パッケージを受けるか否かで国民投票を実施すると言いだしました。これには独仏が我慢できず、怒りを露わにした。読売新聞によりますと、まるで居酒屋の口論を見ているようであったということですから、メルケル首相もサルコジ大統領も大変な剣幕であったのでしょう。

その気持ちはよくわかります。財政内容を粉飾していたギリシャがユーロ圏の皆に迷惑をかけ、それでも我慢して支援しようとしている。支援のためにはギリシャ自信も自助努力が必要ですよと言っているのに、当のギリシャがそれは困ると我儘を言っているわけですから。

ちょっと前に、日経の大機小機に面白いことが書いてありました。「どの国にもいくら施してもどうにもならない教育がある。それは、米国で行う反戦教育、日本で行う英語教育、イタリアで行う純愛教育。そして、ギリシャでは金銭教育だ。」というものでした。ギリシャ人には、お金の使い方をいくら教えても身に付かないということを言っているのです。今のギリシャの状況を見ると、申し訳ないが本当にそうだなと思ってしまいます。

それは、ギリシャ国内の問題ですので、自分でなんとかしてほしい訳ですが、本件は当然ですがユーロ圏全体で考える必要があります。

その際に考えなければならない事は、これも当然ですが、ユーロが今後も安定して存続し続けるには、今どういう対応すればいいかということです。その視点で見たとき、ギリシャを含めた今のユーロ首脳の対応の仕方は間違っているのではないでしょうか。

·           まず、ギリシャが財政内容を粉飾していたという事実の精算が終わっていないということ。

·           それから、対策が市場の評価を尊重する自由主義に基づいていないということです。

前者については、それを理由に遡ってユーロ加盟をはずすという対応ができないのであれば、他に解決方法はないので、議論の余地はありません。

後者について、もっと話を進めてみます。

そもそもユーロは資本主義経済の枠組みの中で運用される国際通貨です。そうであるからには、資源の最適配分が行われる自由な市場で評価されているものでなければなりません。ユーロ経済圏も、それが前提となっているはずです。

ならば、そのルールの中で存続ができなくなっているギリシャは市場から退場しなければなりません。市場の「資源の最適配分」という大切な機能を損なう危険があるからです。それはユーロという通貨の将来にとっても禍根を残すことになると思われます。

市場からの退場を認めないというルールが、ギリシャの前例で定着し、退場すべき参加者にかかるユーロ圏全体の負担が、将来の第2第3のギリシャ問題によってのしかかるだろうと市場が予測するからです。市場の評価がユーロの価値を決定しますから、市場がそのように予測するなら、今後のユーロは下落の一途をたどるでしょう。

ですから、ユーロの首脳が、将来のユーロの安定と存続を望むなら、ユーロから離脱する方法とルールを明確に設定し、ギリシャには離脱を許してあげるというのが一番いいと思います。

ギリシャ国民にとっても、その方がいいはずです。ユーロの一員として全員が背伸びして汲々とした生活を続けるよりも、自分たちの身の丈に合った生き方をする方が幸せだと思うし、なによりも自分たちで国家を再建設しなければならない状況に追い込まれることで本来の自治に目覚めると思うからです。

だから国民投票しましょう。投票によって救済パッケージの受け入れを拒否するなら、ユーロ首脳も離脱を認めるルールを用意せざるを得なくなるでしょう。そして、その枠組みの中でギリシャがユーロを離脱することになります。その時、ユーロの救済パッケージである他力救済はなくなり、正式にデフォルトとなって自力で立ち直る道のスタートラインにつきます。国民は自分で選択した道ですから、もういやとは言えない。そうして国民が一体となって本気で走り出せば、国力を回復し再びユーロに返り咲くことが出来るかもしれません。粉飾しなくても。

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2011年11月 1日 (火)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2011年10月末現在)

【米ドル】

10月の米ドルは、76円台前半~77円台半ばで推移していましたが、最終週で高値更新後、日銀介入により混乱する動きでした。

月初は、77円台前半で始まりましたが、米国FRB議長が「さらなる金融緩和の余地」について改めて発言した事などから、76円台半ばまでドルが売られました。月半ばには、日本政府が円高抑制策を発表するとの報道を材料に、77円台半ばまで戻す場面もありましたが、9月に引き続き、ユーロ圏に関する材料に注目が集まっていたため、ドル円は大きな動きもなく、緊張しながらも狭い範囲での動きに収まっていたと思います。

しかし、後半では9月から続いている、世界的金融システムへの不安を背景とした当面の緊急流動性確保の動きから、円も買われる展開となり、金融緩和策(QE3)への期待が次第に現実味を帯びてきたことも手伝って、76を切ると連日円高値更新する動きとなりました。月末には75.32をつけると、日銀の介入で一気に79.55までドルが買われ、混乱したまま月を超えています。

【ユーロ】

10月のユーロは、安い水準で始まり、後半ではユーロ対策の合意を好感して1.4ドル台まで買われる動きでした。

月のはじめは、欧州金融安定基金(EFSF)強化策の各国承認を待つ状況の中、1.32ドルを挟むような水準で始まりました。その後もECBが金利引き下げ期待を裏切って据え置いた事や、イタリア・スペインの格付けが下げられた事など売り材料が目立ちました。

しかし、半ばから後半にかけては、EFSF強化策が最後のスロバキアで再承認され、G20でも一定の結束を見せたことや、下旬には、ギリシャ2次支援、EFSFによる支援枠強化、主要銀行の自己資本充実策の3分野でのユーロ対策が合意されたことで、1.42台半ばまで買われました。月末は1.38ドル半ばで越しています。

【今後の短期~長期予想】

極短期の材料としては、まず10/31の日銀の大規模な市場介入効果の時間的射程距離の長さに注目します。効果は限定的との評価ですが、75円に大きな抵抗線を形成したことは間違いありません。

しかし、米国の追加緩和策(QE3)への期待も高まっているので、円買い材料として注意を払う必要もあります。ドル円は76前後で引き続き上値の重たい状況が続くと思います。

一方、ユーロは包括策の合意が当面はユーロ安定に寄与するでしょう。但し、中期的にはこの包括策の実施状況を監視しておく必要があります。市場の最大の注目は欧州情勢ですから、実施が円滑に進むプラス材料は小さく、支障が出るマイナス材料は大きく市場に影響すると思われ、1ヵ月以内の短期では1.4ドル前後と評価されるものの、数ヵ月の中期では1.3ドル台前半までの圧力に弱いと予測します。

長期材料としては、新たにTPP参加議論の行方を材料として書き加えました。参加が見送られるなら、貿易収支の悪化から円売り材料となるでしょう。その他、米国の長期化する緩和方針が円買い材料となるものの、欧州不安から世界的なデフレとなって円の実質金利が相対的に低下する円売り材料や、日本の財政破綻のリスクも変わりませんから、数年で見た長期では80円台半ばまでの円安を予想しています。

【短期的な材料(1ヵ月前後】

1. 10/31の日銀為替介入の効果が及ぶ期間はどれほどか(ごく短期と思われる)。

2. 1112日にはFOMCが開催。緩和策(QE3)が発表される公算は小さい。

3. 欧州財政・金融システム不安から派生する当面の緊急流動性確保の動き(米ドル買い)

4. 11/10月のユーロ危機対応包括策(ギリシャ2次支援、EFSF機能強化、銀行自己資本強化)合意当面はユーロ安定に寄与するだろう。

                           

【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 欧州(ユーロ圏)の財政・金融システム不安から、新興国を中心に、安全資産より緊急時の流動性確保が重要との対応変化が顕れ、円・米ドルへ需要が強まっている。

2. 日本:円高対策パッケージ(日本企業の海外投資支援の為JBIC通して$資金融通(残額を円投させる)、主要銀行に持ち高日次報告義務付け)

3. 11/10月のユーロ危機対応包括策合意。中期的には、包括策の実施状況に注目。

4. 2011/10月から複数高官の発言が相次いでいる、米国の追加量的緩和策(QE3)の実現可能性ドル売り材料。

             

【長期的な材料(数年)】

1. 米国金融危機に続いた欧州金融・財政不安が、世界的なデフレに発展すると、円実質金利が相対的に低下し、円売り材料となる。

2. TPP参加議論の行方参加見送りは、長期的貿易収支悪化による円売り材料となる。

3. 円高対策パッケージに含まれる、日本企業による海外投資支援策(ドル建て支援だが長期的にはじわり効果)。

4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻

5. 米国:FOMC声明(8/9)「景気回復スピード予想以上に遅く、少なくとも2013年半ばまで超低金利政策を継続する」と発表 米金利引き上げ時期のずれ込み。ドル売り材料

6. 日本:復興需要と製造業の海外移転で輸出競争力低下貿易収支悪化経常収支悪化(円売り材料)。

7. 米国:米国債務上限引上げ法案可決と引き換えに、財政赤字削減2兆ドル以上は今後2年間にGDP0.20.5%押し下げる影響。

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