« 介護福祉士国家試験、インドネシア等外国人の受験ハンディをどうするか | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第29章(全61章) »

2012年2月 5日 (日)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2012年1月末現在)

【米ドル】

1月は、下旬に78円台まで買われた後は、76円台前半まで売られて終わりました。

上旬、中旬は12月同様、欧州情勢の材料が時にはリスク回避として円買いやドル買いに、時にはリスク選好地合いとなって円売り又はドル売りに向かうという動きでした。リスク回避先として円が選好される場面と米ドルが選好される場面が市場の持ち高状況の変化とともに気まぐれに変わったのです。しかし値幅はおとなしいものでした。

下旬には、日本の貿易収支が31年ぶりに赤字に転落したニュースに78円28銭まで円が売られました。これまでにユーロの売り持ち高が過去最高までに積み上がっていたけど、ユーロ各国の国債入札が比較的堅調であることから、この持ち高を少し解消してユーロを対円で買い戻す動きも重なりました。

しかし、貿易赤字はもう何ヵ月も前から分っていたこと。発表を材料に市場が久々の円アゲンスト情報に仕掛けただけということだったのではないでしょうか。ピークを付けた後は、みるみる元の水準に戻り、月末には逆に、米金融当局FRBがゼロ金利政策を2014年末まで延長すると決めたことなどから、76円丁度水準までドル売られて、ほぼこの水準のまま月末を越しました。

【ユーロ】

1月は、前半安値、後半は戻す展開でした。

前半では、2010年8月以来の1.2624まで下落しました。その要因としては、①仏をはじめとするユーロ各国の格付けの引き下げ、②ギリシャ第二次支援に向けた民間部門との債務減免交渉中断(その後再開)、③EUがイランからの原油輸入禁止を決めたことなどが揚げられます。

ただこの段階では、市場のユーロ売り持ち高は過去最高に達していました。後半では、いくつかのプラス要因を受けて、こうした売り持ち高を巻き戻す動きが見られ、当月の高値圏で月末を超えています。プラス要因としては、①ユーロ各国の国債入札が比較的堅調だったこと、②ギリシャ債務再編交渉が再開し、成果への期待感が出たこと、③米国がゼロ金利政策を2014年終盤まで延長すると発表したことなどです。

【今後の短期~長期予想】

短期では、この春に順次欧州各国で行われる国債入札状況や、ギリシャの民間との債務削減交渉の行方が主な材料となります。当然ユーロ圏財政経済不安を助長させる場面では、リスク回避のためユーロが売られますが、問題はその買い相手通貨で、それが円になるか米ドルになるかはなかなか読めません。その判断を支援するものとして、雇用統計等いつもの米国主要経済指標には注意しておくべきでしょう。ただ、過去最高に達していた市場のユーロ売り持ちの積み上がりは先月下旬に小さな材料を頼りに巻き戻し(ユーロ買い戻し)の機会をうがかうようになっており、市場の投機的なユーロ売り余力は限定的とみられることから、短期的には大きな相場変動はないものと思います。

中期見通しにおいても、ユーロ圏の国債入札状況と流動性逼迫状況には注意しておくべきですが、他に昨年からときどき焦点があたっている、米国の量的追加金融緩和策(QE3)が先月の、FOMC発表時にも再び話題になり、当面はユーロが売られても米ドルは上値が重たい状況が続くでしょうから、短期・中期では、ドル円は76~78円、ユーロ/ドルは1.25~1.32程度で足元とさほど変わらないのではないでしょうか。

長期では、日本の貿易赤字・経常収支の状況が一番の懸念材料です。米ドル・ユーロの量通貨の長期材料も売り材料ばかり揃っている中での円の売り材料なので、「全部売りだから変動しない。」と結論づけるには、貿易収支・経常収支の問題は大きすぎる。貿易収支はともかく、経常収支は黒字の間は今後も円が買われ続け、赤字転落後は一転売られるというシナリオですが、問題はその時期です。

ある人によれば、それは2015年だと言い、また別の人によればそれは当面やってこないと言い、その時期を見極めるのは簡単ではありません。2015年なら、ドル円は75円を切り、60円台も覚悟が必要で、赤字転落によってそれが80~90円に戻す。という具合でしょうか。水準はともかく、赤転まで円高、赤転後は一気に円安というシナリオの中で経営戦略を練っておくべきでしょう。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1.   欧州各国の国債入札状況でユーロ不安の進行・後退を占う円買いパターンか、ドル買いパターンか。緊急時誘導性不足と絡むと円安パターン。

2.   ギリシャ債務の民間との削減交渉の行方(難航しており、このままでは第二次支援難しい)。

3.   米ファンダメンタルズ・景気動向(経済指標)良好ならリスク回避策後退し、ユーロ買い戻し、円のつれ安。

4.   欧州財政・金融システム不安から派生する当面の流動性確保の動き(米ドル買い)

5.   主要6中銀のドル資金供給協調策(~2012/1金融システム不安による緊急時流動性確保需要を緩和し、当面のドル堅調材料減退。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1.   本年第1四半期に、PIIGS諸国の国債大型償還あり、欧州資金繰り問題から緊急時流動性不安になるとドル高円安。

2.   過去最高水準に達している、市場のユーロ売り持ちの巻き戻しの可能性。

3.   主要6中銀のドル資金供給協調策(~2012/1金融システム不安による緊急時流動性確保需要を緩和し、当面のドル堅調材料減退。

4.   2011/10月後半から、複数高官の発言が合いついている、米国の追加量的緩和策(QE3)の実現可能性ドル売り材料。

5.   日本:円高対策パッケージ(日本企業の海外投資支援の為JBIC通して$資金融通(残額を円投させる)、主要銀行に持ち高日次報告義務付け)

【長期的な材料(数年)】

1.   日本:復興需要と製造業の海外移転で輸出競争力低下⇒貿易収支悪化⇒経常収支悪化

2.   米国:2013年半ばまでとしていた超低金利(ゼロ金利)政策を、2014年末まで継続すると決めた。

3.   円高対策パッケージに含まれる、日本企業による海外投資支援策(ドル建て支援だが長期的にはじわり効果)。

4.   円高利用の対外投資は、将来の対外債権を増やし、経常収支維持に貢献する⇒長期には円安遠のく。

5.   欧州連合の安定運営に向け、制度変更を伴う議論が開始されない限り、ユーロの下押し圧力が継続する。

6.   米国:米国債務上限引上げ法案可決と引き換えに、財政赤字削減2兆ドル以上は今後2年間にGDP0.20.5%押し下げる影響

7.   米国金融危機に続いた欧州金融・財政不安が、世界的なデフレに発展すると、円実質金利が相対的に低下し、円売り材料となる。

8.   日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻

9.   TPP参加に向けた協議開始。貿易収支悪化懸念を緩和し、長期には円売り材料が多少後退する。

|

« 介護福祉士国家試験、インドネシア等外国人の受験ハンディをどうするか | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第29章(全61章) »

外国為替相場の動向と変動要因分析」カテゴリの記事

コメント

とてもわかりやすくよかったです。これからも為替相場予想読ませていただきます。

投稿: | 2012年2月21日 (火) 08時19分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/548369/53908470

この記事へのトラックバック一覧です: 外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2012年1月末現在):

« 介護福祉士国家試験、インドネシア等外国人の受験ハンディをどうするか | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第29章(全61章) »