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2012年3月 1日 (木)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2012年2月末現在)

【米ドル】

2月は一本調子でドル高に向かった展開でした。

1月に日本の貿易赤字転落報道から旦78円台まで買われた後に76円まで戻したまま月を越していましたが、2月は円売り材料、ドル買い材料、ユーロ買い材料と、いずれも円安を促す材料が揃った感じです。順番に見ていきましょう。

まず円売り材料としては、日銀の、1%のインフレ目途導入、資産買買入基金規模の10兆円増額という緩和方針の決定です。「目途」とは、達成に責任を負う英国の「インフレ目標」とは異なりますし、1%という水準もインパクト強いものではありません。それでもいままで具体的な数字での表現がなかったので、市場は素直に受け取ったようです。これが中旬の相場を78円台まで持っていきました。

ドル買い材料では、雇用統計や失業率、米ISM非製造業景況指数等の主要米国経済指標が予想より良く、米金利が上昇したことです。中旬に明らかになった、「景気悪化なければ追加緩和はない」趣旨のFOMC議事録も、「経済指標が良いのだから、緩和はないな」との判断となり、ドル買い材料となりました。

他方、ユーロ買い材料としては、一連のギリシャ支援策協議が合意に達し、当面のユーロ圏財政不安が遠のいたことでしょう。これらいずれも円売りを誘う材料が重なって、月末近くには、約9ヶ月振りに81台後半水準まで円安ドル高となりました。

【ユーロ】

2月は、小幅ながら後半に一段高となる展開でした。

1月は、最高潮に達したユーロ売り持ちの持ち高巻き戻し(ユーロ買い戻し)の動きが見られましたが、2月に入って前半は不安な材料も多かったため、その動きも一服といったところでした。不安な材料とは、まず第2次支援条件でギリシャ政府与党間の協議が難航しているとの報道です。他に、イタリア、スペイン等ユーロ圏6カ国格付けや多くの金融機関の格付けの引き下げ報道が五月雨式に出されたことも、さえない相場となった要因となり、久しぶりに1.30台を割り込みました。

しかし、後半ではギリシャ支援に関わる懸案が合意された(ギリシャ政府が支援条件の緊縮財政を受容れる、債務削減の幅についての決着など)ことで、3月20日のギリシャ国債大量償還への懸念等のユーロ圏財政不安が後退したことから、1.35水準まで回復しました。月末は1.33台前半で終わっています。

【今後の短期~長期予想】

短期予想で、注目すべき材料は、欧州問題と米国主要経済指標でしょう。

欧州問題では、ギリシャ支援の条件について合意されて当面の欧州財政不安は後退したものの、合意された条件が履行されて実際の支援が実現するかどうかはまだ分りませんし、財政政策と金融政策のねじれという構造的な問題がまだ残されているいじょう、ちょっとした材料にも敏感に反応する可能性があります。ここに市場のユーロ売り越しの巻き戻しが重なれば、短期ではユーロ買い戻しに振れる可能性の方がその逆より大きいと思います。

米国主要経済指標については、当局の金融政策姿勢とのかかわりで見る必要があります。すなわし、良い指標が発表されれば、追加の金融緩和策を打ち出しにくくなって金利が上昇、ドル買い(円売り)をもたらし、逆はドル売りをもらすということになります。

上記から短期的には、円はユーロや米ドルに対して売られるセンチメントにあります。

しかし、中期では、欧州問題も米国金利動向も、もっと長い流れがあることを忘れてはいけません。欧州では上に書いたような、金融政策と財政政策のねじれという構造的な問題、米国ではFRBが先に打ってきた緩和策や政府に課された財政緊縮策です。いずれも、短期のセンチメントとは逆の材料ですから、ユーロも米ドルも円に対しては弱いということです。円高圧力からはそう簡単には逃れられません。

ただ、注意が必要なのは、長期予測とのかかわりで、日本の貿易赤字定着化と経常収支赤転です。数年先の長期予測として、この国際収支を材料に大きく円安に向かうとの予想は変えていませんが、これを見越した投機行為が短期・中期でも円安を誘い、それがそのまま長期の円安として定着するかもしれないという可能性です。

私は、中長期経営戦略に生かせる為替相場変動予測者を標榜していて、売ったら(買ったら)買い(売り)戻さざるを得ない投機行為は眼中にありません。しかし、その投機行為が中長期の実需を正しく見越したものである場合は、投機者の買い(売り)戻しが将来実需に吸収される形で、投機によって形成された相場水準がそのまま引き継がれる可能性があります。

この場合は、中長期の変動材料が短期にも通用する可能性が出てくるでしょう。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1.   米FRBの追加緩和策に関する姿勢。主要経済指標とのバランスで見る。

2.   米ファンダメンタルズ・景気動向(経済指標)良好ならリスク回避策後退し、ユーロ買い戻し、円のつれ安。

3.   ギリシャ支援合意内容の実行状況(緊縮財政などの条件履行など)。

4.   欧州各国の国債入札状況でユーロ不安の進行・後退を占う円買いパターンか、ドル買いパターンか。緊急時誘導性不足と絡むと円安パターン。

5.   欧州財政・金融システム不安から派生する当面の流動性確保の動き(米ドル買い)

6.   主要6中銀のドル資金供給協調策(~2012/1金融システム不安による緊急時流動性確保需要を緩和し、当面のドル堅調材料減退。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1.   将来の円売り材料(日本の貿易赤字定着化、経常赤字化)を見越した投機行為横行。

2.   日銀の金融政策(2012/2月発表:インフレ目途1%、資産買入基金規模5565兆円)効果。

3.   過去最高水準に達した、市場のユーロ売り持ち高巻き戻し開始(2012/2月)の持続性。

4.   日本:円高対策パッケージ(日本企業の海外投資支援の為JBIC通して$資金融通(残額を円投させる)、主要銀行に持ち高日次報告義務付け)

5.   本年第1四半期に、PIIGS諸国の国債大型償還あり、欧州資金繰り問題から緊急時流動性不安になるとドル高円安。

6.   主要6中銀のドル資金供給協調策(~2012/1金融システム不安による緊急時流動性確保需要を緩和し、当面のドル堅調材料減退。

【長期的な材料(数年)】

1.   日本:復興需要と製造業の海外移転で輸出競争力低下貿易収支悪化経常収支悪化

2.   米国:2013年半ばまでとしていた超低金利(ゼロ金利)政策を、2014年末まで継続すると決めた。

3.   円高対策パッケージに含まれる、日本企業による海外投資支援策(ドル建て支援だが長期的にはじわり効果)。

4.   円高利用の対外投資は、将来の対外債権を増やし、経常収支維持に貢献する長期には円安遠のく。

5.   欧州連合の安定運営に向け、制度変更を伴う議論が開始されない限り、ユーロの下押し圧力が継続する。

6.   米国:「米国債務上限引上げ法案可決と引き換えに、財政赤字削減2兆ドル以上」は今後2年間にGDP0.20.5%押し下げる影響

7.   米国金融危機に続いた欧州金融・財政不安が、世界的なデフレに発展すると、円実質金利が相対的に低下し、円売り材料となる。

8.   日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻

9.   TPP参加に向けた協議開始。貿易収支悪化懸念を緩和し、長期には円売り材料が多少後退する。

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