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2012年3月14日 (水)

65歳まで働ける、高齢者雇用安定法改正案を通す方法

高齢者雇用安定法の改正が検討されています。年金支給年齢が引き上げられることに伴い、会社を定年退職したけど年金がもらえない期間が発生してしまうことに対する手当として、本人が希望すれば65歳まで雇用継続することを企業に義務付けるという内容です。

【改正案は歓迎されるべき】

ならば、一刻も早く改正してほしいと思うのが労働者でしょう。社会にとっても、破たんしかけている社会保障制度を救い、セーフティネットも準備できるという利点がありますからこれは是非必要だと思います。

【経営者にとっても受け入れられるはず】

しかし、経営者としてはそう簡単には承知できません。雇用を維持するための費用が増えてしまうからです。反対する人達からは、「高齢者の雇用は確保できるかもしれないけど、若年層の雇用を奪うことになっても知らないよ。」という強迫じみたコメントも聞かれます。

でも費用が増えるというのは、考えてみるとおかしな話です。賃金は労働への対価で、労働すれば価値が生まれて、その価値から賃金を差し引いた分が企業の利益になるはずです。だから賃金がまるまる費用負担になるわけではありません。企業だって生産額に応じた適正な賃金を払えば、損する事はなく収益のタネになる。しかも、その労働者は仕事をなにも知らない新入社員ではなく、60歳まで働いた熟練労働者ですから生産性も高いはずです。

【経営者の心配~規制が問題】

じゃあ、経営者が慎重になる理由はなんでしょうか。2つあると思います。

A    ひとつは、企業活動が活発で雇用が必要なうちはいいが、必要なくなったときになかなか解雇できない。

B    もうひとつは、企業活動が活発で儲かっているうちはいいが、儲けが少なくなった時に簡単に賃金をカットできない。

この心配がなくなれば、経営者も今回の改正案を支持するようになるのではないでしょうか。ここから先は、労働者の理解も必要です。何故なら、上記の2つの経営者の心配を取り除くためには、労働者にも心配の一端を引き受けてもらわなければならないからです。

【理由Aについて】

まずAの問題ですが、これは「なかなか解雇できない」状況を解消し、簡単にとまでは言いませんが、合理的に解雇できるようにするということです。合理的と言えば、今でも、法律によって合理的な理由があれば解雇できるようになっていますが、その合理的な理由には以下の4つの条件を満たしていなければなりません。

~解雇条件~

·    人員整理の必要性があること

·    解雇を回避するための努力を尽くしたこと

·    解雇する人員の選定が合理的であること

·   労働者への説明、協議など、手続きを尽くしたこと

一見、たいしたことなさそうに見えますが、ひとたび争議になったときは労働者側に有利なように解釈されるようです。

イタリアは、労働者の権利が法律で十分以上に守られているため、経営者は解雇できなくなる時の事を心配するあまり、雇用を抑えようとするそうです。その結果失業率が高くなり、消費も落ち込んで、ユーロ圏では、ギリシャ、スペイン等に続いて問題を抱えた国のひとつとされてしまうようになりました。

【理由Bについて】

次にBの問題です。最低賃金法というのがあり、地域毎に最低でもこれだけの賃金を払いなさいということが時給単位で決められていますが、それは本当に最低ラインなのでこれをさらに引き下げる必要はないと思います。

ただ、毎年春になると正社員が団結して、経営に賃上げを要求する習慣に表れるような、一律に労働者を弱者と看做す風潮はやめた方がいいのではないかと思います。

中小企業の労働者は、無理な賃上げ要求すると経営者を追いこんで、しまいには自分達自身が職場を失ってしまうと危機感がありますから、その辺は良識の範囲で処理されます。

雇用が守られることと、賃金とを比べれば、雇用が守られることの方が大事ではないでしょうか。正社員は、正社員としの身分を法律で保障されているから、安心して要求するのだと思えて仕方ありません。

【労働側も少し妥協すれば進む】

労働者が、上記の2点について少し妥協し、心配の種を分かち合えば、改正案は通って、定年退職から年金受給までのブランクをなくすることができます。これは労働者にとっても歓迎すべきことです。

労働者は「社会的弱者である」ことをあまり強調し過ぎると、経営者との雇用関係という赤い糸が切れてしまいかねません。また、労働者同士の間でも、ただ毎朝会社に来てだらだら無駄な時間を過ごしているような、いわゆる「正社員」という権利の上に安住する人が居れば、その横で職場を守るために一途に生産に打ち込んでいる人は何と思うでしょう。

怠ける正社員が解雇されれば、正社員になりたいと願う非正規労働者にとっても、そのチャンスが増えるのでいいことだと思います。経営者にとっても、社員が一生懸命働いて価値を生み出せば、賃金への配慮もするようになるのではないでしょうか。

【結論】

今回の高齢者雇用安定法の改正は、関係者がきちんと話し合って、社会インフラの確保、非正規労働者も含めた労働問題の課題、経営からみた労働経済の問題に関する自問を出し合えば、必ず着地点が見つかると思います

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