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2012年3月14日 (水)

日銀の成長支援融資の背景。銀行融資活性化の為、中小企業診断士活用の提案。

日銀が、成長支援のための融資枠を拡大するとの報道がありました。これについて、思うところがあります。

【日銀の成長支援融資とは】
この成長分野を支援するための融資枠は、昔からあったわけではなく、2010年に初めて3兆円の枠で開始されました。日銀が「これは成長しそうだな。」と思う、医療や先端技術など選んで、その分野へ市中銀行を通じて低利で貸し付けるよう資金的なバックアップを行うというものです。
当初3兆円の枠でスタートし、昨年にはさらに5千億円が上乗せされました。それだけ活発に活用されているということでもあります。そして今般さらに2兆円を上乗せするのだそうです。

【その問題点】
ちょっと見には、とても前向きで良い政策に見えますが、問題点もあります。それは当初から言われ、今回の報道でも日経新聞などは批判している点でもありますが、成長分野を選択して支援するのは、中立な金融政策を担う日銀の役割を超えているとういものです。この問題点は派生的に次の疑問を投げかけることにもなります。

A  ひとつは、成長分野云々まで口を出すほど景気浮揚策に興味と関心があるなら、もっと財務相や経済産業省と協力し合って、その政策を一本化すべきではないかとういことです。成長政策を巡って一国に2人の船頭が居るのはまずいと思います。成長しそうだなと思う分野は今回はそんなに両者かけ離れてはいないと思いますが、これが常態化すると、将来は必ずく違いが出てきて収拾つかなくなりそう。迷惑するのは国民です。
平成9年に日銀法が改正されて、日銀の独立性がより強固になりました。景気刺激に走りたい政府の圧力に屈することなく、中立な立場で通貨と金利を守る為です。強固な独立性を獲得した日銀が政府の分野でも発言力を持つようになったのでは、なんの為の日銀法改正だったのかということになりませんか。通貨と金利の番人たる中立な金融政策のために強化したのに、今度はそれを乱用して、領空侵犯しているように私は見えます。それはちょっとずるい。

B  2つめの疑問は、実はこっちの方がより重大だと思うのですが、市中銀行は一体なにをしているのかということです。
お金を貸すのは市中銀行の仕事で、市中銀行がもっとしっかりしていれば、なにも日銀の支援がなくても、きちんと成長分野と成長企業を見極めて資金を貸せるはずです。逆に、いくら日銀が低利で資金提供しても、最終的にリスクをとる市中銀行がいやがっていては、資金は流れていきません。
今回増額する成長支援融資はよく活用されているから増額が必要であるとのことですが、このようにして注入されたお金は、期末になると増える道路工事と同じで、遮二無二押し込まれたものになりがちです。そんなお金が企業の為に活きるとはとても思えません。

【市中銀行が頼りなくなくなった原因】
上のBの疑問について深堀してみましょう。
何故市中銀行は頼りなくなってしまったのでしょうか。主な原因は2つ考えられます。

1.  ひとつは、成長分野や成長企業を見極める力がなくなってしまった(或いは昔からなかった)

2.  もうひとつは、金融危機を経て、羹に懲りた。だから、リスクをとらなくなって、国債でしか運用しなくなった。

2つ目の原因は、一つ目の原因を取り除くことで、成長企業を、自信をもって見極めることができればリスクも取る気になるというふうに考えると、これも「見極め能力欠如」が原因と言えるかもしれません。

【銀行の見極め能力とは】
そこで見極め能力とはなんぞやということになります。私は、財務分析による返済能力の審査だけが見極め能力だとは思いません。
銀行の融資係りはすぐ「3期分の決算書を持ってきてください。」と言いますが、決算書で分かることはごく僅かです。教科書に書いてある財務分析の方法では、やれ安定性だとか、やれ収益性だとかと説明されますが、それは「その企業が、将来の返済能力を今持っているか、或いはそれを将来にわたって損なわないほど十分な体力があるか。」という点に集約されます。成長性は判断つきません。ちょっとまて、「財務分析には成長性という項目もあるよ。」という人もいるかもしれません。でも財務分析では前期、前々期と比較して収益等が右肩上がりになっているかどうかでそれを判断する、ごく単純なものです。だから3期分よこせと言うのです。

【見極めは将来の話をしなければならない】
だから、財務分析では、今から始める施策をすればこうなるというところのものを判断することはできないのです。何故なら財務指標は過去の話だからです。成長企業見極めには、「今から始める施策をすればこうなる。」というものを評価する必要があります。そして、実際に成長し、借りたお金が返ってくるようにするためには、評価された施策を確実に実行しなければなりません。つまり、見極めには、財務分析の他に、

  成長施策の考案と評価、

  その施策への資金の活かし方の吟味、

  施策の確実な実行管理

が必要なのです。しかし、これを全部銀行の審査や融資係りに押し付けようとしても、銀行が可哀想です。
特に中小企業に対しては、資金需要の規模が小さいため、融資の利鞘だけでは丁寧に「見極める」コストに見合わないからです。そのため、今はどの銀行も小口融資に当たっては、「スコアリング審査」という機械的つけた評点で合否を判定する仕組みが使われているのです。
また、かりに①と②はその場で見極めることができても、③は融資実行後の施策の実施状況を適切に管理することは、その企業に出向するなどして常駐しない限り不可能です。

【中小企業診断士を活用してはいかか?】
そこで、提案です。

上記の①から③までを中小企業診断に任せるのです。中小企業診断士は「診断士」とありますので、企業の健康診断をして終わりかと誤解を受けがちですが、実は、そうではなく、中小企業のこれからを見据え、経営者とともに一緒になってその成長施策を考えて、施策実施をフォローする経営の戦略的パートナーとしての役割を担っています。
国家試験に合格して登録される資格で、その知見は、税務、経済、法律、経営学、マーケティング、ITシステム、生産管理・・・と実に多岐にわたり、あらゆる相談に対応できます。また、他の専門家と違って、将来を語ることができるのは中小企業診断士だけです。
具体的な、見極めの任せ方はいろいろ考えられますが、以下の方法はいかがでしょう?

 信用保証協会の保証付き融資は、診断士の見極め判定書の添付を法律で義務付ける。

 銀行と診断士タイアップ融資制度を設け、銀行は、融資資金の使途対象となった施策の実行フォローを診断しに委託する。

他にもいろいろあるかもしれません。

【結論】
今、景気低迷の一番の原因は成長の種となる事業を起こそうとする起業家が居ない事、居ても銀行がお金を貸さない事です。とにかく、せっかく企業成長戦略の分野を担う国家資格を持った人達が居るのだから、どんどん活用すればいいと思います。



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