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2012年3月 6日 (火)

五木寛之氏の「下山の思想」はいかがなものか

五木寛之氏の著書「下山の思想」が幻冬舎から出版されて随分売れていると、NHKの「クローズアップ現代」で聞いたので、買って読んでみました。

内容は、身近な出来事を題材にそこで感じたことを書きつづった日記のようなもので、期待したような「下山の思想」とは何かについてはあまり詳しい説明がありませんでした。ただ、ところどころに表れるそれらしい記述をまとめると、どうやら氏の言う「下山の思想」とは、

  ピークを過ぎた日本経済は下り坂に差し掛かっている、

  下りは行く先も見下ろし俯瞰できるからゆるりと行けばいい

という具合に捉えられるかなと思います。

私自身は、50歳代後半にさしかかっていますから、人生は後半に入っているなと感じています。しかし、20代や30代の若い世代がこれを読んでどう感じるでしょうか。「我々はピークなど見ていない。年寄りと一緒に山を降りろとは何たることだ!」と言うのではないでしょうか。

私は、確かに人生の後半に入りましたが、眼下に降りる先が見えると感じたことはありません。そりゃ、57年生きている中で、「目からウロコ」もたくさんありましたが、ウロコの先にまた別のウロコがどんどん重なって、以前より厚みを増しているようにさえかんじています。

また、それらを俯瞰できる余裕ができて、あまり頑張らずにゆるりと行けそうだとも感じたこともありません。

私は、日本という社会に「下山の思想」をもって方向性を見出せというのは間違っていると思います。国家は登り続けるものであり、下山することはないと信じているからです。かつてローマ帝国は滅び、インカ帝国は滅ぼされ、国が興って滅ぶ歴史を繰り返してきましたが、いずれも意図して滅んだわけでもありません。

下山して巡航速度に落ち着けばいいわけで、なにも滅びるまで降りよとは言っていないとの反論があるでしょう。しかし、国は下山して、ちょうどうまい具合に巡航速度に落ち着かせられるような簡単なものではないと思うのです。表面的には人々がゆとりある生活をおくって、あくせくしなくても皆幸せそうに見える、北欧の国々も国内に様々な問題を抱え、為政者はいつもその時できる最大限の努力をはらっています。彼らも、下山する先が俯瞰できてゆるりと生きているわけではありません。それどころかむしろ猛スピードで走っているのです。

国家は常に「造ろう」という力を養っておかないと、いずれ滅びます。海外に住んだ経験のある日本人なら、「日本という国が、当然のようにそこにあると思ってはいけない。」と感じているのではないでしょうか。年寄りがここらで暇をもらおうかと考えるのはその人の自由です。しかし、自分がそうだからといって日本人全員にそれを勧めてはいけないと思うのです。

ただ、著者が下山の必要を説く文章の中に、ひとつ共感できる個所がありました。それは「経済価値の追求はもうやめよ。」という点です。私も、世の中の価値観が多様化しているといわれながら、実は経済価値という単一価値観にどんどん収斂しているのではなかろうかと感じています。そしてそれはあまりいい事ではないと思っているのです。

日本という国は過去の歴史のなかで様々な経験を通していろんなことを学んで極めてきた。その直近のものが経済成長である。それは一応極めたのでそろそろ卒業し、別なもっと気高い価値の創造を目指してもいいのではないか・・・・と、こんな具合です。

その意味では「経済成長」という山は下りていい。しかし、それはあくまで国家の存続のため、新たな価値観の醸成と価値創造の山に登るという意味です。別な山に登るためには今の山を降りなければならない・・・。そういう意味です。ですから私は「日本は別な山に登れ」と書きたい。

別な山はいくらでもあります。品格、芸術、哲学、政治、道、絆、循環社会、戦争のない社会・・・・・。儲けを価値とする経済が興ったのは、たかだか2~3百年前で、それまで人類が追求してきた価値はもっと別なものであったわけですから。

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