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2012年5月 1日 (火)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2012年4月末現在)

【米ドル】

4月は、前月から続くドル高調整(円高)がさらに進む展開でした。

2月に勢いよく上昇したドル¥相場が、3月には84円台前半のピークを付けた後、調整局面に入っていましたが、4月はそれを82円台後半で引き継いで、さらに調整局面、つまり「ドル売り円買い」が進み、結局79円台に突入して月を超えています。

詳しく見てみましょう。月初の材料は、①日銀短観で製造業景況感が悪かったため一段の金融緩和策への期待がでたこと、②逆に米国ではFOMC議事録から緩和期待が後退したことです。これら両方がドル買い円売り材料となって、少しの間だけ3月後半からのドル高調整局面が一服して下り階段の踊り場に降り立った感がありました。

その後は、下記を材料に中旬にかけて3円近くもドル安円高の80円台前半まで調整が進みました。北朝鮮のロケット打上げに関わるごたごたの相場への影響は限定的だったようです。

 米国3月雇用統計が市場予想大幅下回り、労働参加率も低下したことで追加緩和策への期待が再び高まったこと。

 日銀の政策決定会合(9日)で期待されていた追加金融緩和策が見送られたこと。

 スペイン・イタリア国債利回りが上昇したのでリスクを避ける動きが広がったこと。

下旬には、再び81円台中~後半まで戻る場面がありました。FOMC声明で今年のGDP見通しを上方修正したことに加え、大きかったのが月末の日銀による追加緩和発表を先取りした円売りです。

しかし、IMM先物投機筋の円売り持ち高水準が高く、緩和策が実際に発表されて材料がげると、持ち高調整が進み、シカゴPMIが市場予想を下回ったことも手伝って、79円台に突入し、結局79円台後半で月を超えました。

【ユーロ】

4月は、月初にドンと下げたユーロが末にかけて少しずつ持ち直す展開でした。

1ユーロ=1.2ドル台半ばまで大きく下げた2月から、3月は1.33台まで戻して4月に引き継がれましたが、月初は、1.33台前半で始まったものの、あっと言う間に1.30台まで下げ戻しました。その材料は、①欧州中央銀行のドラギ総裁が欧州景気に関して下振れするリスクがあるとの見解を表明したこと、②不調なスペイン国債入札結果、③欧州銀行が苦境に陥っているとの噂、④これらを背景にした欧州債務問題懸念の再燃などです。

しかし、市場のユーロ売り持ち高は相当に積み上がったままであるとみられ(IMM先物投機筋のポジションは昨夏から相当量の売りに傾いたままで特に暦年初からの水準は高い)、少しの好材料を捉えながら、月末にかけてじりじりと戻し、結局1.32台前半で月を超えました。

少しの好材料とは、スペイン債の消化良好とか、米株価の上昇局面などですが、中でも構造的なものとしては、G20で調整されたIMF基金基盤の拠出が4,300億ドルを超えたことがあげられます。欧州債務危機への備えが強化されたと評価されました。

【今後の短期~長期予想】

短期

ドル円では、期待されて発表された日銀の追加金融緩和策が相場材料としてげたことから、米国経済指標の動向をみながら、米金融当局の金融政策姿勢の変化を読みとることがポイントとなってきます。悪い経済指標が発表されると、追加金融緩和期待が高まって金利低下し、ドル安円高へ振れ、その逆は逆・・・。但し、長期材料として見ている、①基本的な政策方針は2014年までゼロ金利政策、②2011年夏の債務上限引き上げ法案と引き換えに約束した「財政赤字削減2兆ドル以上」による景気押し下げ効果などで、短期的な金利上昇圧力も割り引いて考える(簡単にドル高にはならない)必要があるのではないでしょうか。

ユーロドルは、ユーロ売り持ち高の調整局面が続くかもしれませんが、ユーロ圏経済に関するリスクはまだまだ残っていますから、やはり売られるのではないかと思います。リスクの中でも、フランス大統領選挙やギリシャの総選挙(ダブル選挙)は、その後の政策を先取りする投機筋の材料となりやすいので特に注意する必要があるでしょう。予想は、どうやらどちらも現政権にとって不安な方向なので、せっかくまとめた緊縮財政に水をさし、市場の不安を煽る形で出てきそうです。

中長期

ドル円は、円高を調整する動き(円安)の勢いが止まっていることに注目すべきです。

2月の急激なドル買いは、日本の貿易赤字を材料としたもので、将来(数年先)の経常赤字定着を見越した、投機筋の円買いポジション形成だったわけですが、本当に経常赤字定着するまでそのポジションを維持する体力が市場にはなかったということだと思います。所詮投機は実需には勝てません。或いは、そのままポジションを維持したところで、相場で食っている人々は変動しないと商売にならないから、定着するまでの間も細々とした短中期材料に反応してメリハリを付けた売り買いをしているということでしょうか。

いずにせよ、その時までは、つまり材料一覧に挙げた様な円安材料が実現するまでは実需に沿って円は買われやすいと思います。

ユーロドルでは、緊縮財政が徐々に実体経済に影響を及ぼしつつある点に注意が必要です。いわゆる欧州債務危機が単なる債務返済不能に陥る資金繰り上の問題を指すのであれば、財政引締めが緊急避難的措置として効果があるかもしれませんが、いつまでも続けると今度は経済全体を疲弊させて、立ち直れない状況になってしまうのではないかと。

そうなると、各国金融政策の自由度だけ奪い、財政政策の統一がなおざりにされている現状を根本的にやっつける外科的措置が必要になってくるでしょう。相場は現在の水準を大きく離れ、1.0水準も見据えるようになるかもしれません。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1.  米FRBの追加緩和策に関する姿勢。主要経済指標とのバランスで見る。

2.  日銀の追加金融緩和策が124月末に発表され、当面の追加策に期待する材料がなくなった。

3.  フランス大統領選挙、ギリシャ総選挙の結果を予測した投機行為⇒トップ変わるような予想に対してはユーロ不安を煽る相場に。

4.  米ファンダメンタルズ・景気動向(経済指標)⇒良好ならリスク回避策後退し、ユーロ買い戻し、円のつれ安。

5.  IMM先物投機筋の円ネット売り持ち高積み上がり。⇒ポジション調整による潜在円高材料。

6.  IMM先物投機筋のユーロネット売り持ち高が依然有意水準。⇒ユーロ不安払拭しきれていない。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1.  将来の円売り材料(日本の貿易赤字定着化、経常赤字化)を見越した投機行為横行。

2.  日銀の金融政策(2012/2月発表:インフレ目途1%、資産買入基金規模55⇒65⇒70兆円)効果。

3.  フランス大統領選挙(4~5月)、ギリシャ総選挙(5月)⇒UE統合や財政緊縮の動きに水を差すような結果であれば、再びユーロ安へ。

4.  欧州緊縮財政策の浸透が実体経済に悪影響を及ぼす。

5.  世界経済への影響が心配される、中国など新興国の景気動向。⇒悪ければ、リスク回避行動から円高へ。

6.  日本:円高対策パッケージ(日本企業の海外投資支援の為JBIC通して$資金融通(残額を円投させる)、主要銀行に持ち高日次報告義務付け)

【長期的な材料(数年)】

1.  日本:復興需要と製造業の海外移転で輸出競争力低下⇒貿易収支悪化⇒経常収支悪化

2.  米国:2013年半ばまでとしていた超低金利(ゼロ金利)政策を、2014年末まで継続すると決めた(122月)。

3.  円高対策パッケージに含まれる、日本企業による海外投資支援策(ドル建て支援だが長期的にはじわり効果)。

4.  円高利用の対外投資は、将来の対外債権を増やし、経常収支維持に貢献する⇒長期には円安遠のく。

5.  欧州緊縮財政策の浸透が実体経済に悪影響を及ぼす。統一通貨見直しか財政統一化への動きにつながる可能性。

6.  米国:「米国債務上限引上げ法案可決と引き換えに、財政赤字削減2兆ドル以上」(11年夏)は今後2年間にGDP0.20.5%押し下げる影響

7.  日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻

8.  TPP参加に向けた協議開始。貿易収支悪化懸念を緩和し、長期には円売り材料が多少後退する。

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コメント

すみません勝手に後輩しております。
この政治の混迷、といえばかっこよすぎ、
「だらしなさ」
小職 三重県在住ですが
都会在住者が何を考えているのかわかりませんが
これからどうなっていくと考えているのか、希望しているのか、捨てているのか。
みんな「ひとごと」、今の自分がよければいい。
それじゃいけないでしょう!!!
石原都知事の行為に対し、どう考えるのか、どちらでもいいのですが、どう考えるのか?
大阪市長にどう考えるのか?
小沢代議士に対する判決に対しどう考えるのか?
あー みんな どしちゃったの。
好きとか嫌いとかじゃなくて
真剣考えましょうよ。
それが100万単位になれば国が変わります。
絶対

投稿: 松崎浩範 | 2012年5月 5日 (土) 23時02分

経済情報を良くまとめあり、非常に分かり易い。次回5月末の情報を拝見させていただきます。^_^

投稿: wang_kouji | 2012年5月 9日 (水) 00時57分

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