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2012年5月

2012年5月17日 (木)

そもそも所得税より消費税の方が合理的ではないか

昔、はじめて日本に消費税を導入しようというとき、大阪大学の教授が、「所得税を消費税に切り替えていくのがよい。」と説明して消費税導入を支持しました。私はサラリーマンでしっかり税金を払っていましたから、所得税をごまかす悪い人が大勢居るので、消費税にすればそんな不公平は解消されるのではないかと思い、同調しました。
しかし、その後、所得税は減らずに消費税はとられ、さらに税率が3%から5%に上がってしまいました。徴税者に「いいとこどり」をされてしまったわけです。私はその大阪大学教授氏にだまされたと口惜しく思いました。だますつもりはなかったのでしょうけど。
で、今はどう思うかというと、今でもやっぱり所得税より消費税の方が合理的だと思っています。その理由を4つの項目に分けて話しましょう。

【お金は消費してはじめて価値が実現する】
お金は、貯めておくだけでは何の価値もありません。食品と交換して、食欲を満足させるという価値が実現し、電車代として支払って短時間で移動できるという価値を得るわけです。だから、毎晩、甕にしまった小判を数えることその事が楽しみだという変質者はともかく、お金は使ってはじめてその価値が実現し、良い思いができるのです。そして、良い思いをする時に、その幸せの中から一部を払うのが税であるべきだと思います。つまり、税と「良い思い」は直接対応しているべきだと思うのです。
この点で、所得のうち、貯蓄に回ってしまった分についても課税する所得税は変です。それに対して、消費税は消費に回されて実現した価値の分にだけ課税されるので納得がいきます。

【所得税は将来の税収の先取りになってしまう】
所得の内、貯蓄に回されたお金は、ずっとそのままかというとそうではありません。いつか必ず消費されて価値が実現します。但し、いつかと言ってもその時期は人によって、事情によって様々でしょう。ひょっとしたら、子に相続されて、その子が消費するかもしれません。所得税は、その子が享受する価値への課税分を先取りしてしまうことになりはしませんか。
もっとも、この場合は、将来利益を享受できる社会インフラを造るようなケースにおいて、利益享受と納税とのタイミングが合わないという不合理な面がでてきます。所得税でもそれは同じなのですが、消費税ではそれがより強い。

【税金で取られるなら使っちゃおうと考えてしまう】
昔、ラッファーという人が、「法人税率を100%にすると、儲けを全部取られてしまうのが嫌で、儲けを出さないようにするため税収はゼロになり、逆に法人税率を0%にすると、皆儲けを出そうとするが、税収はゼロである。だから、その中間地点のどこかに税収を極大化できる場所があるはずだ。」と説明しました。これはラッファー曲線と呼ばれて、ときのレーガン大統領が供給力に力点を置いた経済政策をとる拠り所となりました。
これとはちょっと趣旨は違いますが、税率を高くすると、「税金として採られてしまうより使った方がまし」と考える人は少なくないのではないでしょうか。だから、消費を喚起して有効需要を起こすには法人税を上げるのが効果的だなんて思ってしまいます。
税率を上げることで現金として置いておくことのコストを増加されば、相対的に設備投資から得る期待収益率が高くなる。だから投資も消費も促進されて景気が良くなるという、なんだか訳のわからないような理屈です。
しかし、これは、「訳のわからないような理屈」であるだけに、なんだか不健康ではないかという気がしてなりません。

【確実に徴収できる】
昔、「10531」と言われました。「トーゴーサンピン」と読みます。サラリーマンからは給料天引きで確実に税を徴収できるから、所得捕捉率10割。自営業者は5割、農業従事者は3割、国会議員やお寺は1割。「クロヨン」という言葉もありました。税率は同じ、或いは所得が多いほど高い累進課税率を適用して、制度上は平等や弱者救済を謳っていても、従事している仕事によって、こんなに捕捉率が違うのではあんまりだということです。
しかしこれは所得税など直接税のはなし。消費税では職業によって捕捉率が違うなどということはありません。だれでも平等に5%負担します。だから、消費税は平等。
「いや、逆進性がある」と言う人も多いようです。でも、それは、ちょっと前に書いた記事「消費税は景気の腰を折るのか、はたして逆進性があるのか。」を参照してください。

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2012年5月16日 (水)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第41章(全61章)

41.   新しいニーズと手法 ~とかるや注釈:組織構造の重要性と考え方

私たちは、適切な組織を持つ重要性を認識している。最善の組織構造を取り入れたとしても、成果や業績が保証されるわけではないが、組織のつくりが不適当では、決してまともな成果はだせない。

(1)   過去の「最終解」
第二次大戦後数十年間に生れた新しい組織構造のモデルのうち、職能別組織と連邦分権制ほど、必要な要件を十分に備えたモデルはない。しかし、最近では組織が変化し、これらの適合性が失われつつある。

  職能別組織

a.  1910年ごろ、アンリ・ファヨール(仏実業家)がメーカーの各職能を検討して導出した組織構造。

b.  当時はメーカーの組織づくりが大きな課題であった。

  連邦分権制

a.  1920年代、アルフレッド・P・スローン・ジュニアがGMの組織を検討して示した。

b.  各事業部には大きな権限を与えてファヨールの職能別組織を取り入れながら、全体のコントロールは本社が担う。

(2)   従来の前提と現在のニーズ :上記の最終解が適合性を失いつつある背景をGMの組織構造の変化でみていく。

  GMはメーカーであり、フョールもまたモノづくり企業を念頭に置いたが、今私たちが直面するのは、モノづくりを必ずしも主体としない大規模企業の組織構築の課題である。

  GMは単一技術をもとに単一市場で単一商品を販売したが、今は、たいていのい企業が複数の技術と製品を扱い、複数の市場で販売している。

  GMにとって米国以外はいまだに本国とは距離のある傍系組織であるが、近時目覚ましい成長を遂げた多国籍企業にとり、多くの国や市場が同等に近い位置付である。

  GMは概ね一国で製造販売しているため、情報はさほど深刻な問題とならないが、多国籍企業は情報の流れに合わせることに留意しながら組織を検討しなければならない。

  GMの従業員の8割までは肉体労働が事務処理だが、先進的な組織においては知識労働とその担い手への対応が重要課題となっている。

  GMは既存事業の運営を主な使命としてきたが、起業家精神やイノベーションをめぐる課題は増える傾向にある。

(3)   これまでに学んだ事柄 :上記の結果、新しいニーズが生じている。そのために組織構造・組織設計において私たちが学んだことは;

  組織のつくりは放っておいても進化するものではないということ。

a.  放っておいても進化するものは、混乱、摩擦、不手際だけ。

b.  直感だけでは組織は築けない。熟考、分析、体系的な手法が必要である。

  いきなり組織を決めるのではなく、まず組織の構成要素が何かを見極めること。

a.  ファヨールは業務内容を軸として職能分野について組織のつくりを決めようとした。

b.  しかし、今日では、貢献内容をもとに決めるべきだと考えられている。

  「組織は戦略に従う」

a.  組織のつくりは組織目標を達成するための手段である。このため組織構造についての研究は目標と戦略から出発しなくてはいけない。

(4)   三種類の業務 :業務は組織の構成要素ではないが、どんなシンプルな組織も業務をこなさなければならない。それは、第一に「日々の実務」、第二に「経営トップの仕事」、第三に「イノベーションの推進」である。これら3つの全部に当てはまる組織原理は存在しないが、それでもこれ等業務を組織化してまとめなければならない。

(5)   頭から消し去るべき議論 :組織構造をつくるに当たって、下記のようなまやかしの議論にまどわされてはいけない。

  任務と人材のどちらに重点を置くべきかという議論

a.  組織設計にあたっては、任務を重視なければいけない。仕事は人間味を取り除いて目標にそって行うべきものだ。

b.  他方、職務そのものは人間がこなすもの。だから仕事の割り振りでは、各人材に何が適しているか、状況が何を求めているかをもとに決めるべきである。

  階層制組織と自由型組織のどちら優れているかという議論

a.  部分と全体の両方に当てはめることができるのは、階層構造だけである。

b.  階層制組織批判者は、「上位者に権限が集中し過ぎる」というが、むしろ上からの身勝手な権限行使化から部下を守る利点がある。階層を超えた指示・命令は許されない。

c.   また、階層制組織のほうが各自の自由度は高い。組織の仕組みによって各人の仕事、権限、周囲との関係性が明確に定まっているからだ。

d.  一方、自由型組織は、「名は体を表さない」典型である。組織の柔軟性が高いと、各成員はその分おおきな負担を引受けなくてはいけない。

  組織論における唯一最善の解があるはずだという議論

a.  かりにあっても、私たちにはそれが何であるかは分らない。

b.  職能別組織・連邦分権制に加え、主に3つの組織原理(チーム組織、疑似分権制、システム組織)が生み出された。いずれも特定の仕事や任務に関しては最善の仕組みであるものの、普遍的な原則ではない。

c.   どんな仕組みであっても、成員が成果をあげて組織に貢献できるなら正しい答えでありえる。

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2012年5月15日 (火)

消費税は景気の腰を折るのか、はたして逆進性があるのか。

消費税率引き上げを巡って、議論が白熱していますが、いわゆる「慎重派」の反対理由が具体性を欠いていてよくわかりません。理由とされているものの中には、

A.景気回復の腰を折るから・・・とういのと、

B.逆進性が不平等だから

というのがあるようです。

【むしろ景気へは良い影響】
まず、景気への影響についてです。これは、経済理論に基いた議論が学者を交えて盛んに行われているようです。日本の場合、政府の借金は国内債だから財政破綻はありえないので、デフレを克服するまで気にしてはいけない。だから消費税は増税してはいけないと主張する学者が居れば、財政破綻が見えるようになると、金利が高騰しで大変だという学者もいます。

そんな中で、先日テレビを見ていたら、こんなことを言う若者が居ました。「消費税が上がって年金財源が確保されるなら、将来に不安を持っている若者の不安を払拭し、いろんなものに挑戦しやすくなる。その結果、むしろ投資や消費が増えて景気が良くなるのではないか。」う~ん、そうかもしれませんね。今の閉塞感は将来への不安が原因であると私も思いますから、このコメントに思わず納得してしまいます。

【財政破綻の方が深刻】
結局、税率を上げてもそれほどマインドが落ち込むことはないかもしれません。それより、高齢化によって貯蓄が減ってくれば、今は内国債でも数年のうちに外国人投資家に頼らざるを得なくなると考えられるから、やっぱり景気の腰が折れる心配より財政破綻の方が深刻であると、私は思います。

【逆進性の主張はその根拠がへん】
一方の逆進性についてはどうでしょう。
そもそも、なぜ逆進性と言われるのかについてですが、所得をベースにして税金の所得に対する比率を計算すると確かに、高所得より低所得の方が、比率が高くなります。それは、いくら所得が増えたからといって、人々の消費量は所得が増えるほどの勢いでは増えないという理屈に基づいています。
しかしその理屈は正しくありません。いま使わなくても長期的には、結局消費に回って、消費額は所得額と同じになるからです。その結果消費税は、累進性はなくても少なくとも逆進ではないと言えます。それを以下に説明しましょう。
【その説明~少なくとも逆進ではない】
今、仮に¥100の低所得者と¥1,000の高所得者が居たとして、低所得者の消費は¥100(貧乏なので所得の全額を使い果たしてしまう)、高所得者の消費はそれより多く、¥300としましょう。この場合、消費税率10%として、税金の所得に対する比率を計算すると、低所得は10%、高所得者は3%となります。消費税反対派は、これを指して低所得者ほど税率が高くなって平等ではないと主張しているわけです。

【逆進ではない理由】
ところで、¥1,000の高額所得者は、消費しなかった¥700を貯蓄に回すことになりますが、その貯蓄はいつまでも貯蓄しっぱなしというわけではありません。¥700は一旦貯蓄されるが、それは将来の消費の為に待機しているだけで、いずれは物やサービスと交換され消費税を払うことになる。だから、所得¥1,000の高所得者は、長期的にみれば¥100納税することになるというわけです。貯蓄しまま死んだとしても、相続者が消費するでしょう。だから所得に対する税の比率も最終的には低所得者と同じ10%になります。

【累進にする検討案】
さらに、累進にする方法だってあります。現在検討されている方法は、税額控除による方法と軽減税率による方法の2つです。いずれも内容は新聞などで解説されているので、理解も浸透していると思いますが、念の為書いておくと;

§ 税額控除 :低所得者の税金を納税時に減らしてあげる方法。減らしてあげる金額より納税額が小さい場合は、その恩恵を受けられないので、その場合は給付することも検討されています。「給付付き税額控除」ってやつですね。

§ 軽減税率 :生活必需品の税率を軽くして、贅沢品ほど高くする方法。英国などでは一部食品は税率ゼロであるようです。

軽減税率は主として自民党が主張していました。民主党は一旦この方法を選択肢からはずしましたが、野田総理は再び選択肢に入れて検討しているようです。給付するややこしさや、消費税は消費税の枠内で対応すべきとの筋論から、当然後者を採るべきではないでしょうか。

【消費税に消極的賛同】
以上のようなわけで、私は消費税に賛同します。
税金が上がるのは、支払う立場からすれば誰だって嫌います。税を上げる前に経費を削減する方が先だという主張もわかります。しかし、ここ何年も節約を工夫してきたけど効果が出ない。もう限界じゃないでしょうか。
節約工夫は終えて節約余地はもう残っていないから、いよいよ増税を許容しようと言っているのではありません。節約工夫はその方法が間違っていたから、時間だけが無駄に過ぎてしまった。節約は時間切れになってしまったからやむなく増税を許容しようと、むしろ消極的賛同です。

【多少の感情論】
少し感情が入りますが、その節約、本気なら、国会議員の数を十分の一にできるのではないかと。それから、一般会計、特別会計合わせて200兆円以上あるのに、なぜ事業仕分けでたった1兆円しか捻出できなかったのか・・・とか。
いろいろありますが、とにかく今はもう時間切れです。

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2012年5月 7日 (月)

外貨預金は必ず損する。儲かるとすれば、それは為替投機でしかない。

日曜日にある銀行から自宅に電話がかかってきました。外貨預金のお勧めです。銀行は月曜日から金曜日の9時から3時までしかシャッターを開けていないのに(一部の銀行を除き)、日曜日にもこうやって営業の電話をかけてくることがあるようです。
昔と比べて随分と変わったものです。いや、それとも外部のコールセンターサービスに外注しているのかな。それにしたって大変なもんです。

【高い利率を強調するだけ】

しかし、だからかどうだか分かりませんが、説明には金融マンとしての専門性があまり感じられず、売り込みだけが先行しているような印象でした。米ドル建ての外貨定期預金の金利が年率12%もあるとしきりに強調していたのです。
これにはもっと説明が必要です。それを為替リスクヘッジしない場合とする場合に分けて考えてみましょう。

【損する理由説明~為替ヘッジしない場合】

まず、為替リスクヘッジをしない場合です。
例えば、US$1,000.00を1ヶ月の外貨預金にする場合で、預け入れる時の為替レート仲値をUS$1.00=¥80としましょう。金利は件の銀行の言う通り、12%とします。

預け入れ時
この場合、まずUS$1,000.00を手に入れなければなりませんから、円資金を銀行に持ち込んで米ドルに換えてもらいます。仲値が80円だから80円で交換できるかというと、そうではありません。銀行は外貨への交換手数料として、US$1.00当たり1円の手数料を取りますから、適用するレートは81円です。で、US$1,000.00を手に入れるには、¥81,000必要ということになります。

満期時の元利金は、なんと少なくなっている
さて、無事その銀行が倒産しないで1ヶ月後の満期を迎えました。元金と利息を計算します。(倒産してしまったら、現状ではまだ外貨預金は預金保険の対象にはなっていませんから、銀行に対するクレジットリスクが顕現化することになります)

元金=US$1000.00
利息=US$1,000.00×12%×(1/12)=US$10.00

1/12)をかけるのは、利率12%が年率、つまり1年間の利息なので、1ヶ月の場合はその利息の12分の1になるからです。
元金と利息の合計、US$1,010.00をもらったのでこれを円に交換します。この時のレートは幸い相場変動がなくて、預け入れた時と同じ¥80だったとします。しかし、80円で交換できるかというと、そう言うわけにはまいりません。銀行はここでも1円ずつ手数料を取りますから、適用されるレートは79円です。だから、円価での受取金額は、

US$1010.00×79=¥79,790

はじめに使った円資金¥81,000と比べると、なんと損しているではありませんか。

その「からくり」
からくりが2つあります。
ひとつは、往復2円の手数料です。お客さんが大手企業などでしたら、99円優遇とか言って、1銭で済む場合もあるかもしれませんが、個人相手ではそんなことありません。
ふたつ目はもちろん為替リスクです。上記では相場変動がないとの前提ですが、預け入れ時よりも円高になってしまえば、もっと損することになります。
逆に、きちんと年率12%の利息を確保するためには、いくら円安になっている必要があるでしょう。手数料は往復1円取られるとした場合は、¥2円安になって、¥82になっている必要があります。
また、円価での定期預金以上の利息を得ようと思ったら、いくら円安になっている必要があるのでしょう。仮に円価定期預金の年率が1%なら、

((¥81,000+(¥81,000×1%×(1/12))÷US$1,010.00)+¥1(円転手数料)

=¥81.26

始めの¥2や後の¥1.26が高いか安いかは人によって違うと思います。

【損する理由説明~為替ヘッジする場合】
さて、次は場合分けした後者の「為替リスクヘッジをした場合」です。
この場合は、預け入れ時に、満期時に円転する時の適用レートを予約しておくことでリスクヘッジができます。このような先物予約の方法以外にもヘッジの方法は山ほどありますが、先物予約と同じような効果を得ようとするなら、基本的には全部同じです。

ヘッジレートの決まり方
問題は、先物予約はどんなレートで締結できるかです。

自分で望むレートで予約できるわけではなく、銀行から呈示されたレートでしか予約できません。提示されるレートは市場の均衡値で決まります。じゃあ市場ではどんな力が働いて均衡するかというと、円と米ドルの金利差を打ち消すようにして決まります。つまり、円で預金する場合と外貨で預金する場合の利息が同じになるようにしかレートは決まらないのです。なぜなら、どっちかが儲かるとなれば、そっちの方向へ取引がどんどん集まり、結局需要と供給の関係から、どっちも儲からないような点にまた戻るからです。これを裁定取引と言います。

手数料分だけ必ず損する
儲からないなら損しないのかというと、そうではありません。ここでも銀行の手数料が邪魔します。結局、ヘッジした場合は、必ず往復2円の銀行手数料の分だけ損する仕組みになっているわけです。

【結論】
結論として言えるのは、「外貨預金は為替投機である。投機でない外貨預金は、必ず手数料分だけ円価預金より損する。」ということです。
銀行員ならお客さんの立場に立って、あらゆるリスクを考慮し、それを自分でよく調べて評価し、自分に置き換えてみてお客さんに勧めるべきでないと判断されるなら決して勧めないという良識があってほしいものです。

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2012年5月 1日 (火)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2012年4月末現在)

【米ドル】

4月は、前月から続くドル高調整(円高)がさらに進む展開でした。

2月に勢いよく上昇したドル¥相場が、3月には84円台前半のピークを付けた後、調整局面に入っていましたが、4月はそれを82円台後半で引き継いで、さらに調整局面、つまり「ドル売り円買い」が進み、結局79円台に突入して月を超えています。

詳しく見てみましょう。月初の材料は、①日銀短観で製造業景況感が悪かったため一段の金融緩和策への期待がでたこと、②逆に米国ではFOMC議事録から緩和期待が後退したことです。これら両方がドル買い円売り材料となって、少しの間だけ3月後半からのドル高調整局面が一服して下り階段の踊り場に降り立った感がありました。

その後は、下記を材料に中旬にかけて3円近くもドル安円高の80円台前半まで調整が進みました。北朝鮮のロケット打上げに関わるごたごたの相場への影響は限定的だったようです。

 米国3月雇用統計が市場予想大幅下回り、労働参加率も低下したことで追加緩和策への期待が再び高まったこと。

 日銀の政策決定会合(9日)で期待されていた追加金融緩和策が見送られたこと。

 スペイン・イタリア国債利回りが上昇したのでリスクを避ける動きが広がったこと。

下旬には、再び81円台中~後半まで戻る場面がありました。FOMC声明で今年のGDP見通しを上方修正したことに加え、大きかったのが月末の日銀による追加緩和発表を先取りした円売りです。

しかし、IMM先物投機筋の円売り持ち高水準が高く、緩和策が実際に発表されて材料がげると、持ち高調整が進み、シカゴPMIが市場予想を下回ったことも手伝って、79円台に突入し、結局79円台後半で月を超えました。

【ユーロ】

4月は、月初にドンと下げたユーロが末にかけて少しずつ持ち直す展開でした。

1ユーロ=1.2ドル台半ばまで大きく下げた2月から、3月は1.33台まで戻して4月に引き継がれましたが、月初は、1.33台前半で始まったものの、あっと言う間に1.30台まで下げ戻しました。その材料は、①欧州中央銀行のドラギ総裁が欧州景気に関して下振れするリスクがあるとの見解を表明したこと、②不調なスペイン国債入札結果、③欧州銀行が苦境に陥っているとの噂、④これらを背景にした欧州債務問題懸念の再燃などです。

しかし、市場のユーロ売り持ち高は相当に積み上がったままであるとみられ(IMM先物投機筋のポジションは昨夏から相当量の売りに傾いたままで特に暦年初からの水準は高い)、少しの好材料を捉えながら、月末にかけてじりじりと戻し、結局1.32台前半で月を超えました。

少しの好材料とは、スペイン債の消化良好とか、米株価の上昇局面などですが、中でも構造的なものとしては、G20で調整されたIMF基金基盤の拠出が4,300億ドルを超えたことがあげられます。欧州債務危機への備えが強化されたと評価されました。

【今後の短期~長期予想】

短期

ドル円では、期待されて発表された日銀の追加金融緩和策が相場材料としてげたことから、米国経済指標の動向をみながら、米金融当局の金融政策姿勢の変化を読みとることがポイントとなってきます。悪い経済指標が発表されると、追加金融緩和期待が高まって金利低下し、ドル安円高へ振れ、その逆は逆・・・。但し、長期材料として見ている、①基本的な政策方針は2014年までゼロ金利政策、②2011年夏の債務上限引き上げ法案と引き換えに約束した「財政赤字削減2兆ドル以上」による景気押し下げ効果などで、短期的な金利上昇圧力も割り引いて考える(簡単にドル高にはならない)必要があるのではないでしょうか。

ユーロドルは、ユーロ売り持ち高の調整局面が続くかもしれませんが、ユーロ圏経済に関するリスクはまだまだ残っていますから、やはり売られるのではないかと思います。リスクの中でも、フランス大統領選挙やギリシャの総選挙(ダブル選挙)は、その後の政策を先取りする投機筋の材料となりやすいので特に注意する必要があるでしょう。予想は、どうやらどちらも現政権にとって不安な方向なので、せっかくまとめた緊縮財政に水をさし、市場の不安を煽る形で出てきそうです。

中長期

ドル円は、円高を調整する動き(円安)の勢いが止まっていることに注目すべきです。

2月の急激なドル買いは、日本の貿易赤字を材料としたもので、将来(数年先)の経常赤字定着を見越した、投機筋の円買いポジション形成だったわけですが、本当に経常赤字定着するまでそのポジションを維持する体力が市場にはなかったということだと思います。所詮投機は実需には勝てません。或いは、そのままポジションを維持したところで、相場で食っている人々は変動しないと商売にならないから、定着するまでの間も細々とした短中期材料に反応してメリハリを付けた売り買いをしているということでしょうか。

いずにせよ、その時までは、つまり材料一覧に挙げた様な円安材料が実現するまでは実需に沿って円は買われやすいと思います。

ユーロドルでは、緊縮財政が徐々に実体経済に影響を及ぼしつつある点に注意が必要です。いわゆる欧州債務危機が単なる債務返済不能に陥る資金繰り上の問題を指すのであれば、財政引締めが緊急避難的措置として効果があるかもしれませんが、いつまでも続けると今度は経済全体を疲弊させて、立ち直れない状況になってしまうのではないかと。

そうなると、各国金融政策の自由度だけ奪い、財政政策の統一がなおざりにされている現状を根本的にやっつける外科的措置が必要になってくるでしょう。相場は現在の水準を大きく離れ、1.0水準も見据えるようになるかもしれません。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1.  米FRBの追加緩和策に関する姿勢。主要経済指標とのバランスで見る。

2.  日銀の追加金融緩和策が124月末に発表され、当面の追加策に期待する材料がなくなった。

3.  フランス大統領選挙、ギリシャ総選挙の結果を予測した投機行為⇒トップ変わるような予想に対してはユーロ不安を煽る相場に。

4.  米ファンダメンタルズ・景気動向(経済指標)⇒良好ならリスク回避策後退し、ユーロ買い戻し、円のつれ安。

5.  IMM先物投機筋の円ネット売り持ち高積み上がり。⇒ポジション調整による潜在円高材料。

6.  IMM先物投機筋のユーロネット売り持ち高が依然有意水準。⇒ユーロ不安払拭しきれていない。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1.  将来の円売り材料(日本の貿易赤字定着化、経常赤字化)を見越した投機行為横行。

2.  日銀の金融政策(2012/2月発表:インフレ目途1%、資産買入基金規模55⇒65⇒70兆円)効果。

3.  フランス大統領選挙(4~5月)、ギリシャ総選挙(5月)⇒UE統合や財政緊縮の動きに水を差すような結果であれば、再びユーロ安へ。

4.  欧州緊縮財政策の浸透が実体経済に悪影響を及ぼす。

5.  世界経済への影響が心配される、中国など新興国の景気動向。⇒悪ければ、リスク回避行動から円高へ。

6.  日本:円高対策パッケージ(日本企業の海外投資支援の為JBIC通して$資金融通(残額を円投させる)、主要銀行に持ち高日次報告義務付け)

【長期的な材料(数年)】

1.  日本:復興需要と製造業の海外移転で輸出競争力低下⇒貿易収支悪化⇒経常収支悪化

2.  米国:2013年半ばまでとしていた超低金利(ゼロ金利)政策を、2014年末まで継続すると決めた(122月)。

3.  円高対策パッケージに含まれる、日本企業による海外投資支援策(ドル建て支援だが長期的にはじわり効果)。

4.  円高利用の対外投資は、将来の対外債権を増やし、経常収支維持に貢献する⇒長期には円安遠のく。

5.  欧州緊縮財政策の浸透が実体経済に悪影響を及ぼす。統一通貨見直しか財政統一化への動きにつながる可能性。

6.  米国:「米国債務上限引上げ法案可決と引き換えに、財政赤字削減2兆ドル以上」(11年夏)は今後2年間にGDP0.20.5%押し下げる影響

7.  日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻

8.  TPP参加に向けた協議開始。貿易収支悪化懸念を緩和し、長期には円売り材料が多少後退する。

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