« そもそも所得税より消費税の方が合理的ではないか | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第42章(全61章) »

2012年6月 3日 (日)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2012年5月末現在)

【米ドル】

5月は、下旬に(米ドルが)売られる展開でした。
昨年夏から今年1月まで76~78円で推移していたUS$/¥が本邦貿易赤字をきっかけにみるみる急騰して3月に84円台を付けた後は、一貫して売られています。5月も、上中旬は80円前後での小動きでしたが、下旬には再び下げに転じました。また元の76~78円水準に戻ろうとしているように見えます。

5月を2つに分けてみましょう。

まず上中旬の80円前後小動きです。材料はなんといっても、仏大統領選挙とギリシャ総選挙でしょう。

     前者は緊縮財政を主軸にした新条約の見直しにつながるということで、

     後者はギリシャ支援の前提となっている緊縮財政を拒絶し支援が行き詰まりそうだ

ということで、両方とも大いにユーロの先行き不安を掻きたてました。
当然ユーロが大きく売られたわけですが、買われた反対通貨はリスク回避先の円ないし米ドルです。両者ともにユーロに対して買われたため、US$/¥は80円前後で小動きのまま推移しました。もっともこの間、製造業景気指数や住宅着工件数など事前予想を上回った米国経済指標などあって、米金利が上昇したという対円米ドルを底堅くした小材料もありましたが・・・。

次に下旬の円買いはどうでしょう。
下旬には、ユーロの評価はますます下がり、この動き(後述)には変わりありません。しかし、

     日銀金融政策決定会合の結果が政策維持と出たために、緩和期待していた人が円を買い戻す動きに出たことや、

     最近の米経済指標が軒並み良くない為にリスク回避先としての米ドルの評価が下がったことから、

リスク回避先が円に集中し78円台前半まで下げて、さらに下げる含みを持たせながら月末を超えたのです。どうやら市場は、米景気指標がちょと悪いと、すぐにQE3(追加の量的金融緩和策)のことを思い出すようです。

【ユーロ】

5月は、下げ一本調子の展開でした。
ユーロ圏財政不安で昨年下がり続けた、ユーロは年明けには、ギリシャ支援策が進んで一旦小康状態となりましたが、5月には仏大統領選挙とギリシャ総選挙結果を始めとする、ユーロ圏経済への複数の懸念材料から一本調子で下げたのです。

順番に見ていきましょう。

5月6日の仏大統領選では、サルコジ前大統領とメルケル独首相がせっかくまとめた財政緊縮を軸とする新条約を見直そうと主張するオランド氏が買った為、ユーロ圏経済の不安材料となりました。
また、同日行われたギリシャの総選挙でも、ギリシャ支援の前提となっている緊縮財政に反対する左派連合が急伸したことから、これもギリシャひいてはユーロ圏経済の不安材料となりました。この結果、月初1.32台半ばで始まったユーロ/ドルは、一気に1.30を割り込んだのです。

その後も、ギリシャでは6月17日に再選挙実施が決まり、再選挙では左派連合が有利と予想されたため、結局ギリシャはユーロを離脱するのではないかとの懸念が市場の思惑に織り込まれるようになりました。このため、月央から下旬に差し掛かるところで1.27台を割り込むまで下落しました。

他にも、格付け会社がギリシャ及び、イタリアやスペインの金融機関の格下げを発表し、スペインでは比較的裕福だったカタルーニア州が資金調達困難に陥る等を材料に、下旬に入ってからもずるずると下げ続け、1.25台。
月末にかけては、ギリシャ再選挙では旧与党支持率上昇との上げ材料も出ましたが、今度は、スペイン大手銀行のバンキアが公的資金支援申請し、スペイン経済への懸念が材料となってさらに下げ、結局1.23台の半ばで、これも米ドル同様、さらに下げ余地を含んで月末を超えました。

【今後の短期~長期予想】

短期 ・・・・・
ドル円では、前月安値引けを受けて、さらに下がる方向だと思います。市場が注目している大材料はユーロ圏経済の動向ですが、これは当面良い材料がありませんので、市場のリスク回避の動きは短期的には非常に強いと思います。その結果、回避先としての円はさらに買われて、対ユーロは円高が続くでしょう。
問題はもう一方の回避先である米ドルですが、これは最近の経済指標を見ていると、あまり頼りになりません。こうなると、QE3(追加の量的金融緩和策)が実施される予想から米金利が下がってくるため、円買いが進むと見られます。ただ、IMMの先物投機筋の円売り積み上がりは徐々に解消され、ほぼスクエアに近くなっており、円買い余地がどれほど深いかは注意が必要です。

ユーロドルは、当面好材料がありません。スペイン経済の動向はまだ十分な判断材料がでおらず、市場は不安をかかえたままリスク回避への動きが中心になると思います。6月17日に予定されているギリシャの差選挙は予断を許しませんが。いまや、ギリシャよりもスペイン経済への懸念の方が大きいのではないでしょうか。

中長期・・・・・
ドル円については、先月と見方は変わりません。長期的な円売り材料として、貿易赤字、経常赤字を揚げていますが、ここへ行くまでは、ユーロ圏経済への懸念が中期的にも払拭される見通しはたたず、リスク回避先としての円需要は高いと思います。それからもう一方のリスク回避先である米ドルについては、QE3が実施されるか否かの前に、QE1、QE2が中期的なドル安効果として底流していることを忘れてはなりません。
さらに、本邦の消費税と社会保障一体改革関連法案の審議の行方も考慮すべきでしょう。通るなら、財政破綻回避で円への信頼が高まって円高、その逆は逆。ただし、これも長期的な円売り材料である経常赤字の前にはかなわないと思います。

ユーロドルでは、緊縮財政を軸とするメルコジ策やギリシャの緊縮財政貫徹に黄色信号がともっているものの、これが明らかな売り材料となるのは短期の話で、中長期的は必ずしもそうとは言い切れません。長期的にはむしろユーロ圏全体の経済を疲弊させていく懸念であった緊急避難的で行き過ぎた緊縮財政が見直され、ひょっとしたら経済成長も少し期待できるからです。
5月6日の選挙結果にからむこの点を長期見通し修正材料として加えなければなりません。ただ、「財政政策の自由度を残したままの統一通貨」というユーロの根本問題はまだそこにあります。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1.  スペインの大手銀行バンキアへの支援の行方とスペイン経済への懸念。ユーロ売り・円買い材料。

2.  ギリシャの再選挙(.6.17)。急進左派連合勝利では、ユーロ不安増長。旧与党勝利では一安心。

3.  米経済指標。悪いとユーロ不安のリスク回避先として円が選好され円高。

4.  米FRBの追加緩和策に関する姿勢。主要経済指標とのバランスで見る。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1.  スペインの大手銀行バンキアへの支援の行方とスペイン経済への懸念。⇒ユーロ売り・円買い材料。

2.  本邦、消費税と社会保障の一体改革に関する関連法案の審議の行方。通れば、将来の日本財政破綻への懸念解消jから円買い材料。

3.  仏オランド新大統領とメルケル独首相のユーロ経済安定に向けた連携の行方。

4.  将来の円売り材料(日本の貿易赤字定着化、経常赤字化)を見越した投機行為横行。

5.  世界経済への影響が心配される、中国など新興国の景気動向。⇒悪ければ、リスク回避行動から円高へ。

6.  日本:円高対策パッケージ(日本企業の海外投資支援の為JBIC通して$資金融通(残額を円投させる)、主要銀行に持ち高日次報告義務付け)

【長期的な材料(数年)】

1.  日本:復興需要と製造業の海外移転で輸出競争力低下⇒貿易収支悪化⇒経常収支悪化

2.  米国:2013年半ばまでとしていた超低金利(ゼロ金利)政策を、2014年末まで継続すると決めた(122月)。

3.  円高対策パッケージに含まれる、日本企業による海外投資支援策(ドル建て支援だが長期的にはじわり効果)。

4.  円高利用の対外投資は、将来の対外債権を増やし、経常収支維持に貢献する⇒長期には円安遠のく。

5.  欧州緊縮財政策の浸透が実体経済に悪影響を及ぼす。統一通貨見直しか財政統一化への動きにつながる可能性。

6.  米国:「米国債務上限引上げ法案可決と引き換えに、財政赤字削減2兆ドル以上」(11年夏)は今後2年間にGDP0.20.5%押し下げる影響

7.  日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻

|

« そもそも所得税より消費税の方が合理的ではないか | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第42章(全61章) »

外国為替相場の動向と変動要因分析」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/548369/54862045

この記事へのトラックバック一覧です: 外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2012年5月末現在):

» FXがWeb上で学べる! [全力FX大学]
勝ち組トレーダー養成アカデミー ついに開校! 毎月100万円以上稼ぐ勝ち組トレーダーのトレーダー脳を完全インストール。今なら30日間無料です。 [続きを読む]

受信: 2012年6月 7日 (木) 08時18分

« そもそも所得税より消費税の方が合理的ではないか | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第42章(全61章) »