« ドラッカー「マネジメント」サブノート、第43章(全61章) | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第44章(全61章) »

2012年7月 3日 (火)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2012年6月末現在)

【米ドル】

6月は、安値から始まって、山を2つ描きながら右肩へ登る(円安)展開でした。
5月は末にかけて、裏切られた日銀緩和策期待と悪い米経済指標から、急に下げて月を越しましたが、月初はその動きに悪い米雇用統計がさらに追い討ちをかけ、77円台半ばまで下落しました。しかしその後は、回復し、前述のように山を2つ描きながら買い材料が勝って80円前後の水準で月を越したのです。

それでは、山を登った材料と降りた材料を、第1の山、第2の山で見ていきましょう。

1.  第1の山

         (1)   登った理由 :まず77円台では日銀の市場介入警戒感が強いこと。他に、予想を下回る本邦経常収支、貿易赤字が定着しつつあるという構造的な材料。そして、市場が期待しているのに米FRBが具体的な追加緩和を出さないことなどあって、79円後半まで登りました。

         (2)   降りた理由 :しかし、その後は日銀金融政策決定会合で金融政策据え置かれて期待された緩和策がなかったこと、スペインの銀行への支援実施方針が発表されてユーロ円が買われたことなどから、78円後半まで弱含みました。

2.  第2の山

         (1)   再び登った理由 :月半ばには、主に欧州の材料が円相場に影響しました。ギリシャ再選挙の結果、旧与党の連立政権が樹立しユーロ離脱リスクが遠のいたことや、スペイン債利回りが落ち着きを取り戻し中期国債入札が好調だったことなどです。このためユーロが買い戻されて、ドル¥は第1の山より高い、80円台半ばまで上昇しました。

         (2)   再び降りた理由 :しかし、スペインの銀行救済策が条件面で効果が限定的であるとの評価となったことなどから、79円半ばまで弱含みました。

下旬の日本の消費税関連法案衆院通過の影響は限定的でした。
また、月末のEU首脳会議では、メルケル首相が妥協してまとまりがついたと報道されたため、月末日にドル¥が80円近くまで上昇しましたが、ユーロ共同債など根本解決を促す懸案は流れたため、これは長期材料として見ておくべきです。

【ユーロ】

6月は、安値から始まって、ほぼ月中の高値圏で月超えする展開でした。
一貫して下げた5月の月末は安値(1.23台)で引け、その安値で6月が始まりました。その後徐々に上昇し、月半ばに1.27台半ばをつけた後は、また1.24台に下がってきました。月末はEU首脳会議での合意を材料に、1.27近い水準まで「ひょい」と上げてから月を超えています。
月前半の買い材料として順番に挙げると、

         (1)   まずEUファンロンパイ大統領が「ユーロ圏経済統合計画を年内にまとめる」意向を示したことや墺中銀総裁の欧州銀行同盟構想への支持表明などで、ユーロ圏存続に向けた取り組みが進んでいることが好感されました。

         (2)   また、ユーロ圏諸国がスペインの銀行救済方針を表明したこともこの時は前向きに解釈されました。

         (3)   最も大きい材料は、ギリシャ再選挙の結果、旧与党連立に成功し、同国のユーロ離脱機関がひとまず遠のいたことでしょう。

         (4)   他にメルケル首相のEFSFでの国債購入に関するコメントも歓迎されて、

20日には1.27台半ばまで買われました。
しかし、後半では、あまりいい材料がありませんでした。

         (1)   スペインの銀行支援策は、その条件からスペインの公的債務増加要因にもなること、債権回収の優先権を巡る問題などあって効果に疑問が持たれました。

         (2)   メルケル首相が改めて「ユーロ共同債」を否定するなど、ユーロ圏存続の為に検討されている諸施策のとりまとめが困難になっています。

         (3)   スペインやイタリアの国債利回りが再び上昇していること、

などを下げ材料として、1.24台半ばまで徐々に下落したのです。

これらは、月末に予定されていたEU首脳会議への楽観的な期待や悲観的な予想が入り乱れた結果です。その首脳会議は、ぎりぎりのところでいくつかの問題解決案が合意されて発表されました。決裂しそうだった会議がなんとかまとまったものですから市場がこれを評価して、1.27近くまで戻した後、1.26の半ばで月を越えています。

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・・・
短期では、材料があまりないように思えます。と、言うより日米双方の金融当局が金融緩和策に対してどのようなスタンスをとるかによって、日米金利差が変化し、それによって相場が動くと思われますが、FRBのスタンスも、日銀のスタンスもはっきりしないために、材料がないように見えると言ったほうがいいかもしれません。
だから、そのスタンスに影響するものは何かという視点で市場を見ていくのがいいでしょう。その第一は、米国の景気動向です。主要な米経済指標は引き続き注意しておき、景気悪化がはっきりしてきたらQE3の実施により米ドルが売られる場面を想定しておきます。
また、先月の日銀政策決定会合では政策が据え置かれましたが、今月予定されている「展望リポート」の中間レビューの時期に何かが発表されるかもしれませんので、これは円が売られる材料として注意します。ただし、どんどん大きくなく国債買い入れ枠の多くが当座預金に寝たままという状況ではその効果は限定的です。

中長期では、本邦の貿易収支・経常収支の状況が次第に悪化の方向感が見えてきたこと、各施策に乗った本邦企業の海外直接投資の活発化など構造的な円売り材料があり、これは変わりません。
消費税関連法案の成立についてはどうでしょう。これは解釈が分かれるところです。消費活動停滞と総需要減退から景気停滞を予測する向きは、デフレで実質金利がますます高くなって円高、しかしデフレ対策で追加緩和策が打ち出されると予想すれば円売り、財政破綻回避を評価する視点から見ると、当面はリスク回避先通貨としての評価が高くなるとの理由で円買い、将来的にも財政破綻による超インフレが回避されて底堅い円が予測できます。
これらを総合すると、長期的には経常収支材料から円安だが、その大きさは消費税引き上げられない場合に比べて、引き上げられた場合の方がゆっくり進むということではないかと思います。

ユーロドル ・・・・・
短期では、ギリシャ再選挙の結果、同国のユーロ脱落が一旦回避されたことや、先月末のEU首脳会議でいくつかのユーロ問題対策が立てられたこと等が、好材料として捉えられ、そう大きく下げることはないと思います。
しかし、先月からはギリシャより経済規模の大きいスペインの財政悪化と金融機能の劣化が問題となっており、中期的にはまだまだ不安定さをかかえたままなので、当局関係者のちょっとした発言や会議の動向など何かあれば、下げる材料が先行して意識される場面が多いでしょう。

ただ長期的には、銀行同盟構想が打ち出されるなど、ユーロ問題の根底にある、金融と財政の政策ミスマッチを解消する方向に向かって少しずつではあるが議論が進んでいます。紆余曲折を経ながらも、最終的には崩壊せずに着地していくような気がします。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1.  日銀の追加緩和策(12/7月の「展望リポート」中間レビュー)。

2.  米FRBの追加緩和策に関する姿勢。主要経済指標とのバランスで見る。

3.  米経済指標。悪いとユーロ不安のリスク回避先として円が選好され円高。

4.  スペインの銀行支援策実行状況とスペイン財政問題への対策の行方。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1.  将来の円売り材料(日本の貿易赤字定着化、経常赤字化)を見越した投機行為横行。

2.  スペインの銀行支援策実行状況とスペイン財政問題への対策の行方。

3.  世界経済への影響が心配される、中国など新興国の景気動向。悪ければ、リスク回避行動から円高へ。

4.  本邦、消費税関連法案成立の行方:中期的はデフレ長期化、実質金利上昇、円高へ。

5.  日本:円高対策パッケージ(日本企業の海外投資支援の為JBIC通して$資金融通(残額を円投させる)、主要銀行に持ち高日次報告義務付け)

【長期的な材料(数年)】

1.  円高、本邦企業海外移転で輸出競争力低下貿易収支悪化経常収支悪化

2.  米国:2013年半ばまでとしていた超低金利(ゼロ金利)政策を、2014年末まで継続すると決めた(122月)。

3.  本邦、消費税関連法案成立の行方:財政破綻回避で将来の超インフレ回避と円への信頼。

4.  ユーロ問題の根底である、金融と財政の政策ミスマッチを解消する、ユーロ共同債、財政統合の動き。

5.  円高利用の対外投資は、将来の対外債権を増やし、経常収支維持に貢献する長期には円安遠のく。

6.  米国:「米国債務上限引上げ法案可決と引き換えに、財政赤字削減2兆ドル以上」(11年夏)は今後2年間にGDP0.20.5%押し下げる影響。

|

« ドラッカー「マネジメント」サブノート、第43章(全61章) | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第44章(全61章) »

外国為替相場の動向と変動要因分析」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/548369/55107655

この記事へのトラックバック一覧です: 外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2012年6月末現在):

« ドラッカー「マネジメント」サブノート、第43章(全61章) | トップページ | ドラッカー「マネジメント」サブノート、第44章(全61章) »