« 2012年6月 | トップページ | 2012年8月 »

2012年7月

2012年7月24日 (火)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第46章(全61章)

46.   成果重視の組織設計:分権制と疑似分権制

  連邦分権制は、「自律的な各事業部内では、諸活動を職能別に組織する」との考え方に基づいている。しかし、チーム制を排除するわけではない。

  職能別組織やチーム制は仕事や課題を原点とし、結果は個の努力の総和であるという前提に立っているが、分権制は「どのような結果を出すのか」が出発点となり、次に各事業部にはどのような仕事、活動などを行わせ組織に組み込むべきかを問う。

  全ての事業部に同じような職能別組織を設けるのが望ましいが、固執してはいけない。

(1)   連邦分権制

  連邦分権制の強み~これまでの組織原理の中では、連邦分権制が理想に最も近い。

a.  経営層が強大な力を得て手腕を発揮できる。

·  経営層にふさわしい任務だけに集中できる。

b.  明快かつ経済性に優れている。

·  事業部の各メンバーは自分の課題だけでなく、事業部全体の課題も容易に理解できる。

·  安定性や適応性に優れている。

·  マネジャーのビジョンや努力も事業の活動と成果にじかに向けられる。

c.   満足のいくコミュニケーションと意思決定。

·  マネジメントそう全体やその上層部が共通のビジョンや認識で結ばれているため、コミュニケーションも容易になる。

d.  マネジャー育成に適している。

·  マネジャーが事業活動や成果を身近に感じるため、自分の仕事の位置付けを理解し、全体の業績に貢献するためにまい進できる。

·  目標管理と自己管理が機能するため、マネジャーに任せる部下や部門すを管理面の制約を意識せずに決められる。

·  たとえ小さな事業部であっても、その長はまぎれもなく経営トップである。

e.  公的機関にも同じように当てはまる。

  連邦分権制の要件~連邦分権制採用には厳しい要件を満たさなくてはいけない。

a.  連邦分権制を採用する理由は、経営トップを実務の監督、調整等から解放し、経営の本来の仕事に集中させる(経営トップの力を強める)こと。

b.  経営の本来の仕事とは、「当社の事業は何か」を問うこと、全社の目標を設け、それを達成するための戦略を決めること。

c.   具体的には、下記3つの分野の権限を本社経営層に残す必要がある。

・  技術、市場、製品の選択。会社の基本的な理念、信条、原則は何か。

・  重要な経営資源である資本の配分。

・  人材(人材にまつわる方針決定、事業部幹部任命など)

d.  悪い例

・  英国の伝統的な制度では、取締役会の常任メンバーが事業部や子会社トップを兼任する傾向があるが、

・  事業部長は当然んがら全社より自事業部利益を優先して考えてしまう。

  規模の要件

a.  最上層部4~5人が、組織図、マニュアル等をみなくても事業部内のキーパーソンを把握できる程度の規模が良い。

b.  自律的事業部は独自の経営層を必要とするため、それを維持するだけの規模が必要である。その最小規模は事業によって異なる。⇒例:小売事業の店舗はかなり小粒でも経営層を支えられ、店長の他に売り場管理部門長が何人かいれば十分。

c.   ごく小さな組織を自律的事業部にするなら、その内部は(職能別でなく)チーム制にすべきである。(例:シアーズの店舗)

d.  本社のスタッフを事業部の経営層の助言役として活用するのは望ましくない。各事業部が独り立ちできず、成果をあげることよりも、スタッフ組織の歓心を買うことが重視されかねない。

  事業をどうするか

a.  事業は各事業部内で完結しているのが理想である。

・  独自の製品ラインと市場を持ち、独自に研究開発やマーケティングを行う。

・  各事業部は最低限、自ら利益を生みださなくてはいけない。⇒各事業部の損益を単純合計すると全社損益になるのが望ましい。

b.  どの事業部もそれぞれ市場を持っている必要がある。

・  シアーズやマークス&スペンサーは店舗の商圏を、米大手保険会社は、子会社の営業地域を指す。一つの製品ラインが同地域に異なる市場を持つこともあり得る。

・  流通チャネルで分ける方法もある。

(2)   疑似分権制

  疑似分権制とは

a.  導入背景

・  多くの大企業は、全社を事業単に分けるのには適さず、かといって規模が大きすぎるため職能別組織やチーム組織のままにしておくのも無理がある。

・  このような場合に、組織上の問題打開のために採用する動きが広まっている。

b.  仕組み

・  個々のユニットが単独事業を扱っているとの想定のもと、そこに可能な限り高い自律性を与え、独自の経営層を置く。

・  損益への責任を疑似的に負わせ、ユニット同士の取引は社内価格で行う。

c.   大手素材メーカーでは一つの解である。

・  化学メーカーの多くは、事業を三分野に分けてそれぞれに疑似分権制を取り入れている。研究開発は別会社とし、主な調査研究テーマべつに組織編成。

・  マーケティングと製造もそれぞれ独立組織として損益責任。

  問題点 :疑似分権制は明快ではないうえ、成果に焦点を合わせにくい。経済性、コミュニケーション、判断の権限で不満が残る。

a.  部門(ユニット)同士の取引価格に客観的基準がなく、恣意的になる。このため利益を上げた部門の利益が正当なものなのかどうか評価しにくい。

b.  上記の問題を解決するために行われるコミュニケーションの中身は、雑音が主になる。経営層はこの調整の為に負担を強いられる(とかるや注釈:本来の分権制の目的(経営層は経営に専念)が達せられない)。

  採用する際のルール

a.  ほかの組織形態が使えない場合、最後の手段として採用するのが望ましい。

b.  疑似分権制は問題点があるものの、大規模企業の各組織に個別責任を負わせながら全体連携を図るためには、もっとも望ましい組織形態なのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年7月10日 (火)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第45章(全61章)

45.   仕事と課題のどちらを中心に据えるか:職能別組織とチーム組織

(1)   職能別組織とチーム組織

  全ての仕事は下の3つの方法により組織化できる。

a.  業務プロセスの段階に応じて組織を分ける方法
家を建てる時に、土台を作り、骨組を築いて屋根を載せ、最後に内容を仕上げる。

b.  仕事のステップごとに必要な技能やツールのある場所で仕事をする方法
教育プロセスの素材である学生が、教室から教室へ移動しながら各講座を受ける。各教授は自分の専門分野だけを扱う。

c.   仕事の内容に応じて異なる技能やツールを持った人材を集めてチームを構成する方法
映画作りなど。

  職能別組織は、互いに関連する技能を集めた組織だが、職能だけでなく業務プロセスも切り口にしている。人材は一定の位置にとどまり、その間を仕事が移動する。

  チーム組織は、仕事や課題は一定の場所に固定され、人材が移動する。

  職能別あるいはチーム、少なくとも一方の原理を用いる必要があり、両方を併用すべき事も少なくない。

(2)   職能別組織

  長所と短所

a.  長所

·  きわめて明快で、誰もが自分の居場所を持ち、自分の課題が何かを理解できる。

·  安定性が高い。組織との相性がよければ、人材への心理的負担を少なく押さえ、人間関係も気苦労ない。

·  最上部を占める一握りが組織を動かす仕事(組織づくり、コミュニケーション、調整に時間を費やせば、他の人々は自分の仕事に専念できる。

b.  短所

·  規模が大きくなり複雑さが増すと、摩擦が生じ、調整、会議などのコスト高い。

·  他の職能からの攻撃によって荒らされないように自分達の職能を守るのが第一の仕事と看做すようになる。

c.   上記の結果;

·  意思決定には向かない。最上部でしか判断をくだせない。トップを除いては、誰も事業全体を見渡さず、トップの判断も組織に正しく伝わらない。そして何が正しいかより誰が正しいかとの発想が幅を利かせる。

·  人材の育成や力試しにも向かない。職能分野の知識や能力を培うことが重視され、狭いビジョンしか持たなくなる。

·  育っても、マネジメントに適さない傾向がある。仕事ぶりや成果より職能に閉じた技能が重視されるからである。

  上記の短所に対して下記が試みられたが成果をあげていない。

a.  AT&T :事業全体のあり方や目標を基に、職能毎にゴールや評価尺度を設定。→電話会社のように単一市場、単一製品の公的機関でしか効果発揮しない。

b.  GE :職能別組織の成果目標を持たせようと努力した。→「優れた製造業務とは」等の類の基準を設けるにとどまった。

  適用範囲

a.  実務にしか適用できない

·  経営層としての仕事(具体的な実務を除き)には適さない。

·  適用すると、社長だけが判断し、他のメンバーは主要職能別部門長であるため、主に自分の管轄分野しか目を向けない。

b.  イノベーションに関わる仕事にはなじまない。

·  一種類の仕事を与えられた、肉体労働ばかりの、複雑でない組織に良いが、

·  ダイナミズム、進取性が増し、高い成果が求められる場合にはなじみにくい。

(3)   チーム組織

  チーム組織とは

a.  チームとは、様々な経歴、技能、知識を持った人材を多彩な組織(出身母体)から集め、力を合わせながら具体的な職務を遂行させる仕組み。

b.  私たちは最近になって、チーム組織を常設することも可能だと気付いた。

·  例えば、設計、販売、顧客サービスは組織図では職能別に分かれているが、実態は各設計者は一つまたは複数のチームに属し、チームが全体として顧客に責任を負う。

·  セールス担当者は、顧客に張り付くことなく、あくまでも特定の製品ラインに割り当てられる。

·  チームリーダーは、そのチームではリーダーを務めるが、他のチームでは1メンバーであることもあり得る。

  教訓(とかるや注釈:チーム組織を活かすポイント)

a.  チームを組織する為には、任務が変わったとしても、使命は一定でなくてはいけない。→使命が変わるようなら、常設チームは不要である。さらに、任務が一定なら、チーム組織にする必要もない。

b.  チームには明快な目標が欠かせない。全体とメンバーについて、仕事ぶりや成果が目標に沿っているかどうか絶えずフィードバックが必要。

c.   チーム全体が任務に責任を負う。各人はそれぞれの技能や知識で貢献するが、自分の仕事だけでなくチーム全体の活動ぶりと成果に席にを負う。

d.  チームメンバーが互いをh知らなくても、成果をあげるうえで支障はない。ただし互いの役割や貢献できそうな分野は心得ていなくてはいけない。

  チームの利点と制約

a.  利点

·  全員がチーム全体の仕事が何であるかを常に心得、それに責任を負う。

·  適応力に優れ、試行錯誤、新しい発想や方法も抵抗なく受け入れる。→職能の壁を打ち破り、縦割りの弊害を取り除くためには最適な組織形態である。

· 

b.  制約

·  チームリーダーが明快な指示を出さない限り目標や役割があいまい。

·  不安定で、メンバーは全体の課題を理解するが自分の仕事への注意がおろそかになりがち。←メンバー同士の関係性、職務の割り振り、説明、協議、コミュニケーションなどへの配慮が必要。

·  より大きなマネジメント責任者育成には、職能別組織よりわずかに優れているにすぎない。

·  チーム組織は往々にして満足な成果をあげられずに終わる。自由度が高い組織形態だから、強い自己規律や責任感が必須となる。

·  規模に制約がある。

  適用範囲

a.  最も相性がいいのは、経営チーム

b.  実務分野では、職能別組織の効果を最大限に引き出し、チーム組織を補完的に活用して設計者の意図どおりに機能させることが可能となる。→大量生産に特にはまる。

  チーム形態と職能別形態の相互補完関係は、知識労働分野で威力発揮する。

a.  職能別形態の威力発揮:高度な専門知識を持つ知識労働者・スペシャリストは実質的に会社だけが上司。組織上の問題をまず引き起こさない。(とかるや注釈:個別に知識を磨き、さらに高度化できる)

b.  チーム形態の威力発揮 :専門的な知識は断片的な性格を帯びるので、成果を生み出すためには、自分の知識を別の人の知識と組み合わせる必要がある。

c.   上記の2点より、知識組織では、下記2つの軸を持つ。

·  職能別組織で人材とその知識をマネジメントし、

·  方やチームにおいて仕事と課題をマネジメントする。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年7月 6日 (金)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第44章(全61章)

44.   組織の設計原理と仕様

44章~47章では、組織の「設計思想」と「設計仕様」について述べる。

(1)   異なる設計論理に基づく、5つの設計原理

  5つの設計原理とは、以前から知られる2つ(職能別組織(アンリ・ファヨール)、連邦分権性(アルフレッド・P・スローン))と最近生れた、3つ(チーム制、疑似分権制、システム組織)である。

  上記の5つは、異なる設計論理に基づいている。

a.  仕事と職務に基づくもの :職能別組織、チーム組織

職能別組織では仕事の段階分けは固定し、仕事が部門の間を動くが、チーム組織では、逆(仕事が固定)である。

両者は対照的(一般にはこう見られる)ではなく、補完的である。

b.  成果と業績に基づくもの :分権制、疑似分権制

両者は、成果重視の組織設計である。

c.   関係性に基づくもの :システム組織

関係性は仕事、課題、成果等と比べて数が多く、明快な定義に馴染みにくい。

関係性に基づく組織は複雑になる。

  上記3つの設計論理のほか、「意思決定に基づくもの」も想定できるが、現状ではこの論理に対応する設計原理が出来ていない。

(2)   形式上の要件

どの組織仕様も以下7つの要件を満たす必要がある。

  明快さ :自分の帰属先や居場所を心得、情報、協力、判断等が必要な場合にはどこからどのように入手すればよいか、容易に分るようでなければならない。

  経済性 :管理、監督、成果志向徹底などを少ない労力で実現し、自己管理を可能にし、自発性を刺激するように組織をつくるべきだ。

  ビジョンの方向性 :すべての活動は業績をあげるために行われる。組織は、あらゆる活動を業績というひとつの動力に換える伝動ベルトのようなものだ。

  各人が個と全体の務めを理解する :各成員が自分達の務めを理解させることを狙いにして、組織をつくらなくてはいけない。

  意思決定 :適切なテーマについて適切な階層が意思決定でき、それが見える組織にする。また、決定内容を実現に向け邁進しやすくなる組織を作る必要がある。

  安定性と適応性 :世の中が混乱しても、業務を続けられる安定性と、組織が硬直しないための適応性が求められる。

  永続性と自己革新 :永続するため、自己革新力が求められる。そのため、各階層の人材を昇進に備えて鍛える必要がある。

(3)   実務、イノベーション、経営層のための組織
以上の要件は、下記の3種類のマネジメントを組織化する際にも応用できる。

  既存事業を円滑に進めて成果につなげるための実務マネジメント

  会社の将来を切り開くイノベーション・マネジメント

  現在及び将来の事業のビジョンを定め、方向付けを行うトップ・マネジメント

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年7月 3日 (火)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2012年6月末現在)

【米ドル】

6月は、安値から始まって、山を2つ描きながら右肩へ登る(円安)展開でした。
5月は末にかけて、裏切られた日銀緩和策期待と悪い米経済指標から、急に下げて月を越しましたが、月初はその動きに悪い米雇用統計がさらに追い討ちをかけ、77円台半ばまで下落しました。しかしその後は、回復し、前述のように山を2つ描きながら買い材料が勝って80円前後の水準で月を越したのです。

それでは、山を登った材料と降りた材料を、第1の山、第2の山で見ていきましょう。

1.  第1の山

         (1)   登った理由 :まず77円台では日銀の市場介入警戒感が強いこと。他に、予想を下回る本邦経常収支、貿易赤字が定着しつつあるという構造的な材料。そして、市場が期待しているのに米FRBが具体的な追加緩和を出さないことなどあって、79円後半まで登りました。

         (2)   降りた理由 :しかし、その後は日銀金融政策決定会合で金融政策据え置かれて期待された緩和策がなかったこと、スペインの銀行への支援実施方針が発表されてユーロ円が買われたことなどから、78円後半まで弱含みました。

2.  第2の山

         (1)   再び登った理由 :月半ばには、主に欧州の材料が円相場に影響しました。ギリシャ再選挙の結果、旧与党の連立政権が樹立しユーロ離脱リスクが遠のいたことや、スペイン債利回りが落ち着きを取り戻し中期国債入札が好調だったことなどです。このためユーロが買い戻されて、ドル¥は第1の山より高い、80円台半ばまで上昇しました。

         (2)   再び降りた理由 :しかし、スペインの銀行救済策が条件面で効果が限定的であるとの評価となったことなどから、79円半ばまで弱含みました。

下旬の日本の消費税関連法案衆院通過の影響は限定的でした。
また、月末のEU首脳会議では、メルケル首相が妥協してまとまりがついたと報道されたため、月末日にドル¥が80円近くまで上昇しましたが、ユーロ共同債など根本解決を促す懸案は流れたため、これは長期材料として見ておくべきです。

【ユーロ】

6月は、安値から始まって、ほぼ月中の高値圏で月超えする展開でした。
一貫して下げた5月の月末は安値(1.23台)で引け、その安値で6月が始まりました。その後徐々に上昇し、月半ばに1.27台半ばをつけた後は、また1.24台に下がってきました。月末はEU首脳会議での合意を材料に、1.27近い水準まで「ひょい」と上げてから月を超えています。
月前半の買い材料として順番に挙げると、

         (1)   まずEUファンロンパイ大統領が「ユーロ圏経済統合計画を年内にまとめる」意向を示したことや墺中銀総裁の欧州銀行同盟構想への支持表明などで、ユーロ圏存続に向けた取り組みが進んでいることが好感されました。

         (2)   また、ユーロ圏諸国がスペインの銀行救済方針を表明したこともこの時は前向きに解釈されました。

         (3)   最も大きい材料は、ギリシャ再選挙の結果、旧与党連立に成功し、同国のユーロ離脱機関がひとまず遠のいたことでしょう。

         (4)   他にメルケル首相のEFSFでの国債購入に関するコメントも歓迎されて、

20日には1.27台半ばまで買われました。
しかし、後半では、あまりいい材料がありませんでした。

         (1)   スペインの銀行支援策は、その条件からスペインの公的債務増加要因にもなること、債権回収の優先権を巡る問題などあって効果に疑問が持たれました。

         (2)   メルケル首相が改めて「ユーロ共同債」を否定するなど、ユーロ圏存続の為に検討されている諸施策のとりまとめが困難になっています。

         (3)   スペインやイタリアの国債利回りが再び上昇していること、

などを下げ材料として、1.24台半ばまで徐々に下落したのです。

これらは、月末に予定されていたEU首脳会議への楽観的な期待や悲観的な予想が入り乱れた結果です。その首脳会議は、ぎりぎりのところでいくつかの問題解決案が合意されて発表されました。決裂しそうだった会議がなんとかまとまったものですから市場がこれを評価して、1.27近くまで戻した後、1.26の半ばで月を越えています。

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・・・
短期では、材料があまりないように思えます。と、言うより日米双方の金融当局が金融緩和策に対してどのようなスタンスをとるかによって、日米金利差が変化し、それによって相場が動くと思われますが、FRBのスタンスも、日銀のスタンスもはっきりしないために、材料がないように見えると言ったほうがいいかもしれません。
だから、そのスタンスに影響するものは何かという視点で市場を見ていくのがいいでしょう。その第一は、米国の景気動向です。主要な米経済指標は引き続き注意しておき、景気悪化がはっきりしてきたらQE3の実施により米ドルが売られる場面を想定しておきます。
また、先月の日銀政策決定会合では政策が据え置かれましたが、今月予定されている「展望リポート」の中間レビューの時期に何かが発表されるかもしれませんので、これは円が売られる材料として注意します。ただし、どんどん大きくなく国債買い入れ枠の多くが当座預金に寝たままという状況ではその効果は限定的です。

中長期では、本邦の貿易収支・経常収支の状況が次第に悪化の方向感が見えてきたこと、各施策に乗った本邦企業の海外直接投資の活発化など構造的な円売り材料があり、これは変わりません。
消費税関連法案の成立についてはどうでしょう。これは解釈が分かれるところです。消費活動停滞と総需要減退から景気停滞を予測する向きは、デフレで実質金利がますます高くなって円高、しかしデフレ対策で追加緩和策が打ち出されると予想すれば円売り、財政破綻回避を評価する視点から見ると、当面はリスク回避先通貨としての評価が高くなるとの理由で円買い、将来的にも財政破綻による超インフレが回避されて底堅い円が予測できます。
これらを総合すると、長期的には経常収支材料から円安だが、その大きさは消費税引き上げられない場合に比べて、引き上げられた場合の方がゆっくり進むということではないかと思います。

ユーロドル ・・・・・
短期では、ギリシャ再選挙の結果、同国のユーロ脱落が一旦回避されたことや、先月末のEU首脳会議でいくつかのユーロ問題対策が立てられたこと等が、好材料として捉えられ、そう大きく下げることはないと思います。
しかし、先月からはギリシャより経済規模の大きいスペインの財政悪化と金融機能の劣化が問題となっており、中期的にはまだまだ不安定さをかかえたままなので、当局関係者のちょっとした発言や会議の動向など何かあれば、下げる材料が先行して意識される場面が多いでしょう。

ただ長期的には、銀行同盟構想が打ち出されるなど、ユーロ問題の根底にある、金融と財政の政策ミスマッチを解消する方向に向かって少しずつではあるが議論が進んでいます。紆余曲折を経ながらも、最終的には崩壊せずに着地していくような気がします。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1.  日銀の追加緩和策(12/7月の「展望リポート」中間レビュー)。

2.  米FRBの追加緩和策に関する姿勢。主要経済指標とのバランスで見る。

3.  米経済指標。悪いとユーロ不安のリスク回避先として円が選好され円高。

4.  スペインの銀行支援策実行状況とスペイン財政問題への対策の行方。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1.  将来の円売り材料(日本の貿易赤字定着化、経常赤字化)を見越した投機行為横行。

2.  スペインの銀行支援策実行状況とスペイン財政問題への対策の行方。

3.  世界経済への影響が心配される、中国など新興国の景気動向。悪ければ、リスク回避行動から円高へ。

4.  本邦、消費税関連法案成立の行方:中期的はデフレ長期化、実質金利上昇、円高へ。

5.  日本:円高対策パッケージ(日本企業の海外投資支援の為JBIC通して$資金融通(残額を円投させる)、主要銀行に持ち高日次報告義務付け)

【長期的な材料(数年)】

1.  円高、本邦企業海外移転で輸出競争力低下貿易収支悪化経常収支悪化

2.  米国:2013年半ばまでとしていた超低金利(ゼロ金利)政策を、2014年末まで継続すると決めた(122月)。

3.  本邦、消費税関連法案成立の行方:財政破綻回避で将来の超インフレ回避と円への信頼。

4.  ユーロ問題の根底である、金融と財政の政策ミスマッチを解消する、ユーロ共同債、財政統合の動き。

5.  円高利用の対外投資は、将来の対外債権を増やし、経常収支維持に貢献する長期には円安遠のく。

6.  米国:「米国債務上限引上げ法案可決と引き換えに、財政赤字削減2兆ドル以上」(11年夏)は今後2年間にGDP0.20.5%押し下げる影響。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年6月 | トップページ | 2012年8月 »