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2012年9月

2012年9月30日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第54章(全61章)

54.   規模に応じたマネジメント

(1)   「大組織」の定義 ~規模をきめる基準はいくつもある

  企業規模を測るには、従業員数、売上高、付加価値、製品構成複雑さ、市場の数、技術の複雑さなど様々な要因を見る必要がある。どれか一つでは決め手にならない。

  総合的な規模はマネジメントとその体制によく表れる。

a.  小規模企業では、職能業務に携わらず経営課題に専念する1人で十分な場合で、1人がキーパーソン全員を把握している。

b.  中規模企業では、1人のトップがキーパーソン全員を深く知るのは難しい。3~4人かがりならできる。

c.   大規模企業では、組織図や資料をみたりしなければ分らない。

(2)   小規模企業 ~規模が小さいなら、体系的なマネジメントはむしろ大企業より必要。下記が求められる。

  戦略

a.  小さな企業は、取るに足らない存在になったら終わり。そうならぬ為に他にはない特別な企業になるための戦略が必要。

b.  大多数の小規模企業は、日々持ち上がる問題への対処に追われて、戦略を持たない。このためほとんどは繁栄とはほど遠い。

c.   戦略として;

·  自社に有利なすきまを見つけて、競争をしのがなくてはならない。

·  小さいが重要なサービス分野で卓越した存在を目指す戦略もある。

  経営層の課題を体系的にとりまとめることがこと。

a.  大多数は、重要活動をしきりに話題にするが、実際には対処していない。

b.  対処するには、少しの検討、簡単な体制、シンプルな管理と報告の制度(チェックリスト程度)さえあればよい。

  経営トップから高い成果を引き出すこと。

a.  他に任せられない2つの課題がある。

·  社内の人材にまつわる課題。

·  市場、顧客、技術など事業環境にかかわる課題。

b.  上得意客トップセールスや銀行交渉など社外関係より、市場、新事業機会、環境変化などを探ることに時間をかけるべきだ。

  独自の管理手段や情報システム。

a.  人材も資金も限られるので、結果につながる分野にこれらを投入する。

b.  通常の会計データに加え、キャッシュフロー把握する必要がある。将来の資金需要を把握する。

c.   数値データは少なくてよい。しかも高い正確性は不要。ただ、必要な数字は原則として通常の会計処理からは得られない。必要なのは、経営資源の配分状況を将来の動向と関連付け、事業機会を見極めたり、危険を避けるための数字である。

(3)   中規模企業

  下記の3つのタイプにそれぞれ要件がある。

a.  単一技術、限定的な数の製品、単一市場

·  組織をどのように構成するかが最大の課題。

·  自律的な複数の損益主体から成り立っている訳ではないので、連邦分権制ではなく、製造などには疑似分権制を取り入れ、タクスフォースで補完するのがよい。

·  経営層は、チームで対応する。

b.  自律性を持ったいくつもの事業部が異なる製品ラインをもとに異なる市場に参入しているが経済特性は全事業で共通

·  個々の事業に職能別組織を、全社に連邦分権制を取り入れる。

·  経営層は、各事業部に経営チームを設け、事業部の経営チームはには本社の経営メンバーも含む。

·  事業部長が率いる。

c.   異なる市場で活動するいくつもの事業から成り立ち、それらが互いに依存し合っている(事業間で相乗効果)

·  2つの軸に沿って組織する必要がある(①全体としてひとつのまとまりのある事業なので一枚岩で統一のある力ある経営層、②事業はそれぞれ自律性を保ちながら相互に依存し合う)

·  各事業部は、他の事業への貢献によって存在意義を認められる。

·  3種類の経営チームを設ける(①全社の経営チーム、②事業部にごとの経営チーム、③各事業部長が本社の経営陣とともに経営チームを形成する)

  上記3つのタイプに共通する要件

a.  贅肉をつけないこと。(成功の秘訣は特定分野への集中。余計な周辺事業に手を出さない)

b.  卓越性がなければ目標を達成できない分野では、強さ、経営資源、高い要求水準、業績への執念をもってあたる。

c.   中くらいの規模はイノベーションを成功せさるのに適している。イノベーションをとして事業の結束を強めるべきだ。

(4)   大規模企業

  目標に沿って適切に組織を編成しなくてはいけない。

a.  関係性や人材についての情報を組織に反映させ、人々の熱意を引き出すため、方針、目標、職務、貢献等をめぐる抽象的定義や型にはまった手順などに頼る必要がある。そのため人間味は乏しくなり、明快さが求められる。

b.  出来る限り連邦分権制を採用し、馴染まないなら疑似分権制を試みる。チーム組織も欠かせない。

c.   マネジャー職務を、貢献や任務だけでなく、意思決定や情報の流れのなかで位置づけ、関係性ん観点から決める事が求められる。また、マネジメント開発とマネジャー育成がともに決定的に重要となる。

d.  経営層は大人数で構成するとともに、彼らに情報、活力、アイディア等を提供する組織(秘書室や事業調査室)を設ける。

  大規模企業は原則として小さなベンチャー事業を手掛けるべきではない。手掛ける場合には、そのチームを他組織とは独立した形で設け、それを許容する。そのような柔軟性や無秩序を社内に取り込み、組織としてまとめあげる仕組みが必要である。

  経営層は、全社の人材と接するよう努力し、人材どうしの交流を深める。これにより硬直的な官僚体質に染まらず柔軟性をもたらし、相互努力を根付かせる。

  表面積と体積の法則(体積が増えても表面積はそれほど増えない)により、内向き意識が強くなる。その対策として下記が必要。

a.  経営層は、組織の耳目となって社外の出来ごとを敏感に察知する責任をおう。

b.  社外に人材をもとめ、組織そのものにも社外の新鮮な発想を取り込む。経営層の一歩手前あたりのポストがよい。

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2012年9月24日 (月)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第53章(全61章)

53.   適正な規模とは何か

(1)   規模と複雑さ

  物体の表面積は、直径の二乗で増えるが、体積は三乗で増えるように、組織も常に表面積を上回るペースで体積が拡大する。企業では、規模が大きくなると、たちどころに複雑化と専門分化が進み、内部を管理するための部門が必要になる。

  複雑さは穏やかに拡大していくわけではなく、ある時点で質的な変化を誘発する。

a.  高等動物の骨格は昆虫の外皮が進化したものではなく、人類も直立で歩行する、道具を作るなど新たな段階に進化したものだ。

b.  同様に、規模や複雑さが一定以上になると単に量的な変化ではなく、「飛躍的な変化」が必要になる。

  「権限委譲」をめぐる議論もこれを忘れてはいけない。

a.  経営層は取締役会の業務の一部であるかのように、「委譲」はいつでもその職務を取り戻せるとの意味があるがそうではない。

b.  同様にマネジャーの職務も従来職務を拡大したものではなく、質的変化によって生れたものであり、各自が独立して自分の権限で職務を果たすべきである。

(2)   規模と戦略

  規模は戦略に影響を及ぼし、戦略も規模に影響を与える。このため、規模に適した戦略はなにかの問いが重要である。

a.  小さな組織には大組織にない持ち味がある。(身軽、速い対応、資源集中など)

b.  大組織にも小組織にない強みがある。(長期の研究プロジェクトに耐えるなど)

  マネジャーにせよ一般従業員にせよ、ひとりひとりに働き手には大きな影響はないが、経営層にとっては、規模を複雑さは大問題であり、判断を下すべきテーマである。

  一定規模以下の企業は生き残れず、一定規模以上の企業も長く繁栄できない。その中間領域は極めて広く、「事業目標」のひとつと見なすべきだ。このため、他の事業目標と同じく、適正な規模を実現するためには努力が必要である。特に以下の5点を考慮すべきである。

a.  規模そのもののマネジメント

·  現状規模・適正規模模索、機能不全となる上限認識、規模と戦略の意味合い。

b.  複雑さと多様性のマネジメント

·  複雑さの上限認識、複雑になると組織は何が必要になるのか。

·  同族企業の規模限界~時間(永続可能か)と規模の限界はどこか。

c.   多国籍企業

·  規模、市場、製品、技術の複雑さだけでなく、文化面、政治体制、政府との関係も考慮。

d.  変革と成長のマネジメント

·  変革や成長の過程で、マネジメントの体制・行動などを変える時点はいつか。

·  複雑さを避けながら、変革や成長への備えができるか。

e.  イノベーションのマネジメント

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2012年9月11日 (火)

9.11同時多発テロから11年。あの時。

9.11から11年。
あの時は帰宅(横浜)して
10時のニュースをつけたら、中継映像の中で2機目が激突しました。すぐにニューヨーク支店(このビル60Fに入居していた)に電話したが、呼び鈴は鳴っても誰も出ない。
着替えて大手町の国際部に戻り、スタッフの安否確認を始めました。東京に住む、現地採用日本人女性スタッフのお父さんから、
30分おきに悲痛な問い合わせ電話を受け、その心中を察すると胸が痛くなりました。幸いその女性も含め、当行の全員の安全が翌日昼までに確認できました。
しかし大勢の犠牲者がでたこの事件は実にいたましい。テロは決して外交手段なんかになり得ない。

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2012年9月 9日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第52章(全61章)

52.   実行ある取締役会の必要性

(1)   取締役会は、国によって法律上の規定は異なるが、実効をあげていない。その理由は;

  大規模な株式公開企業が登場し、取締役会は所有者の代表とは言えなくなってきた。

  社内常駐して仕事をしないので、統治機構としての役割をはたしようがない。

  経営層が概ね、実効ある取締役会を望んでいないという事情がある。

(2)   しかし、実効ある取締役会は以下の役割を担うために必要である。

  企業にはお目付け役が求められる。

a.  プランニング、設備投資方針、管理支出予算などについて誰かが批判的な目をむけなければならない。

b.  他方で、経営層は相談相手も必要としている。

  成果をあげないトップを更迭する。

a.  無能なCEOを更迭できる取締役会がなければ代わりに政府が乗り出すだろう。

b.  更迭する仕組みのない会社は資本力をバックにした買収者と株式公開買い付けの脅威に絶えずさらされる。

  企業には社会や地域との関係を担う組織が欠かせない。

a.  経営層の広報活動はこれまでのところ失敗に終わっているから、取締役会が本来の広報や地域社会との交流の役割を担い、経営層と一心同体で仕事をさせる必要がある。

(3)   その為には誰を取締役会のメンバーにすべきか~これまでのところお目付け役としての答えしか見つかっていない。

  能力 :企業、政府機関、その他の組織で上級エグゼクティブとして高い手腕を発揮した実績があること。

  十分な時間が費やせること :ひとりで兼任できるのあhせいぜい4~5社程度。

  経営層から独立しているべき :そのため、任期制にして再任を避ける。そうすれば経営層と良好な関係にあても、無理に相手に合わせる必要は感じないですむ。

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2012年9月 6日 (木)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第51章(全61章)

51.   経営層の構成

(1)   経営層はチームプレー

  経営層の仕事は、以下の理由で、個人プレーよりもチームプレーに適している。

a.  多彩な気質が求められるため、1人の人間の手には負えない。

b.  経営トップの座を1人が占めている場合、トップ交代は大きな賭けのようなもので必ず危機を招く。

  チームプレーの形態

a.  経営チームの各メンバーが互いに対等な関係にあり、それぞれ担当領域に最終責任を負う⇒「社長室」と呼ぶのが時流である。例:ジーメンス

b.  3~4人が経営層を形成し、それぞれ責任を分担し、だれか一人がナンバーワンの地位に就く形態。例:40年前からのGM

(2)   経営層をうまく機能させるための条件

  経営層の職務を分析しなくてはいけない。

  経営層の職務は、誰かひとりに明確に割り当て、その人に最終責任を負わせる。

  経営チームを設け、各メンバーの性格・資質に合わせて責任を割り振る。

  経営活動に責任を負う者は肩書にかかわらず経営層の一員である。

  経営トップとしての責任を負う者は、則としてそれ以外の仕事をしてはならない。

  複雑な企業は、いくつもの経営チームを設ける。

(3)   経営層のチームワーク
チームワークを保つために下記の諸点を守らなければいけない。

  各メンバーの発言は揺るぎない権限によって守る。

 あるメンバーの判断に部下が異論を持っても、別のメンバーに駆け込むことを許してはならない。

 これを許して、メンバー同士の抗議を認めると、政治的駆け引きを生み、経営チーム全体の威信を低下させてしまう。

  自分の責任外の事柄に関わらないこと。

 自分が責任を負わない事がにについて判断を下すことはもちろん、意見すら持たないのが賢明である。

 かりに管轄外案件が持ち込まれたら、本来の責任者に取り次ぐべきである。

  他のメンバーへの批判、侮辱、嫌悪等を表に出してはいけない。

 互いに好感を持っている必要はなく、尊敬する必要もないが、互いに叩き合いをしてはならない。

  リーダーとしてのキャプテンを置く。

 経営チームはあくまでもチームであるため、キャプテンが必要だが、それは上司ではなく、リーダーである。

 危機に当たっては、誰かひとりに指揮命令権を与えなくてはならない。

  案件によってはチーム全体で判断する。

 「当社の事業は何か、何を事業にすべきか」、製品ライン拡充や撤退、多額資本割り当てなど重要な案件はチーム全体で議論した後に判断を下す。

 幹部の人選に関しては、多数決に頼ることもトップダウンの判断を無条件に受け入れることも避けるべきである。

  メンバーは相互に緊密に組織だってコミュニケーションを図らなくてはいけない。

(4)   会社の頭脳にどうやって栄養を送るか

  その企業も(ごく小規模企業を除き)、経営層に意見や質問を投げかけ、情報をもたらす組織が必要である。

  経営層が必要とするデータや情報、提案などは実務マネジャーと同じものであるが、経営層は主として現在より将来を、部分より全体を見据えるため、実務マネジャーとはかかえる課題・ニーズが異なる。

  ジーメンスは、上記の役割を担うため、「秘書室」を設置した。

a.  秘書室は画期的で、これこそが同社の最大の遺産と言えるが、秘書室スタッフは、銀行、大学、政府機関等から引き抜いたため、周囲から浮き上がる傾向があった。

b.  人材は、実務分野で手腕を発揮した者を採用し、長期に置くのは避けて58年を限度とすべきである。

  英語圏などでは、「事業調査室」という呼称もよい。

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2012年9月 5日 (水)

中小企業がお金を借りられない理由。借り手はこうすべきだ。

日銀がゼロ金利政策を続け、湯水の如く流動性を市中に投入しても、銀行は国債を買うばかりでいっこうに中小企業の事業資金に回ってきません。なぜでしょう。

2012年度版の中小企業白書に、こんな事が書いてありました。中小企業庁が民間調査会社に委託して調べたところによりますと、海外に生産拠点を持っている中小企業のうち、投資回収年を設定している企業は全体の23.6%しかないということです。しかもその23.6%のうちでも、10年の長きにわたっても投資を回収できない計画が18.5%もある。

これには驚きました。中小企業が海外に拠点を作るのは大変なことです。残りの企業はこの「大変なこと」をどのように考えていたのでしょうか。いったいどういう目論見で海外に生産拠点を作ったのでしょうか。仮にこのような企業が、海外に生産拠点を作ろうと、その為の資金を銀行に借りに行っても、そんな行き当たりばったりの会社に銀行は絶対貸してくれません。いや、それはちょっと言い過ぎでした。借り手の本意ではない形でしか貸してくれないといった方がいいかもしれません。その仕組みはこうです。

銀行はまず聞くでしょう。「この資金を使って海外に工場を作ると、売上が伸びて単年度で黒字なるのはいつですか?」
「う~ん、だいたい世の中の常識として3年かな。」と社長は答えます。
「それでは、3年までの累積赤字を一掃できて、配当が開始できるのはいつですか?」
「う~ん、だいたい世の中の常識として5年くらいかな。」
「いや、世の中の常識ではなく、本件ではどのような計画になっているのですか?」
「そんなの、やってみなきゃ分からんだろう。」
「それでは、この事業から返済資金を生み出せるかどうか分からないということですね。」
「その通り。だからリスクを冒して挑戦するんだ。この世は挑戦意欲こそが大事だ。」
「分かりました。それではこの事業以外から返済資金が捻出できますか?」
「他は他で忙しい。」
「分かりました。それでは、返済できなくなった事態に備えて担保を用意してください。」

ここからシナリオは①と②に分かれます。

  のシナリオ

「担保なんてないよ。だから銀行は金を持っている先にしか貸さないと言われるんだ。」

  のシナリオ

「担保なら、僕の自宅があるよ。」
「では、その価値に応じて¥○○まで融資できます。」
「いや、海外進出事業なんだから、事業内容で見てほしいんだよ。」
「なら、実現可能で説得力のある計画を見せてくださいよ!」
「それができりゃ、苦労はないよ。」
「では、中小企業診断士に相談してください。社長の思いをしっかりと事業の仕組みに仕立てて、投資回収計画も作り、お金を借りてからも計画の実現をお手伝いしてくれますから。それなら銀行も安心して融資できます。」

銀行は、まず計画を評価してその事業が生み出す新たなキャッシュフローで返済される形を作りたいと考えます。できれば担保も保証もなしで。でもその計画が行き当たりばったりでは評価できません。そうなると担保に頼らざるを得ないし、担保がなければ潤沢な流動性が今この場で確保されていなければ安心できないということになるわけです。

ですから、銀行がお金を貸してくれないのには、借り手である中小企業側にも反省すべき点があると言わざるをえません。

ではどうすればよいか。お金の使い道や、使って回収できる実現可能な計画をしっかりたてることが肝心です。確かに「やってみなきゃ分からん。」というところもあるでしょう。でも、そういった不確実性への対処の仕方さえ計画する必要があります。

それから、計画は、単に売上目標や利益計画だけではなんの説得力もありません。目標だけなら鉛筆を舐めていくらでもできるからです。そうではなく、環境の変化を踏まえ、自社内の力をどのように活かして利益を生む仕掛けに仕立てましょう。その辺が、計画を信頼してくれるかくれないかの分かれ目となります。

俺は江戸っ子だい。宵越しの金は持たねえ。出たとこ勝負だ。そんな社長は豪快でかっこいいかもしれませんが、そんなんでよければ役者でも連れてくればいいでしょう。役者を社長に立てて神輿にかついでいる会社はまだまだ余裕のある会社です。

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2012年9月 3日 (月)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2012年8月末現在)

【米ドル】

8月は、78年台前半から始まり、月央にドルが急に買われる場面がありましたが、また78円台に戻る展開でした。

7月に一本調子でじりじりと下げ続けたのを引き継いで始まり、一瞬78円を割る場面もありました。背景にあるのは、7月の材料にもあった、「米FRBの追加金融緩和策への期待」です。対する日銀の政策は、上旬の金融政策決定会合で緩和を見送り、現状の金融政策を維持するとしましたので、緩和する米ドルと緩和しない円では米ドルが弱い78円台で他に材料も見つけられないまま月央まで続きました。

ところが、月央に発表された、米国の経済指標(7月の小売売上高、鉱工業生産)が市場予想を上回る好結果だったため、一気に79円台半ばを超えるドル高となりました。経済が回復すれば、金融緩和は要らなくなって金利が上昇するので、高金利を好む為替は米ドルに向かうということになるのですが、実際に10年物米国債利回りも1.8%台まで回復しました。

しかし、この動きは米国FOMCの議事録内容で一気に冷め、再び78円台まで売られました。その内容とは、FOMCメンバーの多くが早期追加緩和を支持したというものです。このため8/2079.66をつけたものが、8/22には78.23をつけるまで下げました。その後は、月末まで動意なく78円台前半のままで月をこえています。

【ユーロ】

8月は、月初の安値水準から値を戻しました。

前月の7月に、1.20水準まで下げた後、欧州中央銀行のドラギ総裁が「ECBはユーロのためにあらゆる行動をとる」との決意が表明され、1.23あたりまで戻して、8月に入りました。

先月の買い材料としては、

1.  ECBの南欧国債購入への期待(ユーロ破綻を防ぐ効果として評価される)

2.  スペインやイタリアの国債利回りが下がり危険水域を脱する

売り材料としては、

1.  ECBの南欧国債購入への反対発言(独連銀や欧州北部)

2.  46月のユーロ圏17ヶ国が再びマイナス成長に陥った(8/14発表)~牽引役の独や仏の経済減速も鮮明になった

中でも、ECBによる国債購入については、独などの慎重意見あるものの、市場の期待が強く、上旬に一旦1.22水準まで弱含んだユーロを1.24近くまで押し上げました。ギリシャの第2四半期GDPが前月からマイナス幅を縮小させたこともプラスに働いたようです。

その後はユーロ自身の材料より、米国発の材料に反応して動きました。つまり、月央には、米国の強い経済指標と米金利上昇で、ドルがユーロに対しても買われてた為、再び月初水準まで下落し、下旬には「FOMC議事録内容(多くのメンバーが追加緩和を支持する)」を材料に、一気に1.25台まで回復したのです。月末にかけては、一時1.26台をつけて結局1.25台後半で月を超えました。

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・・・

直接の短期材料として、今一番大切なのは日米金融当局の金融政策スタンス変化です。9/1213日に予定されている次回の米FOMCやバーナンキFRB議長の発言、日銀の金融政策決定会合の結果には注意しておく必要があります。間接材料としてはユーロ圏の動向(内容後述~ユーロの項目)ですが、不安が拡大してリスクを嫌う向きがユーロを売って米ドルを買うのか円を買うのかは予測しにくいところです。

中期では、米大統領選挙など政治材料も見ておく必要があります。オバマ大統領が失業対策の為に思い切った金融緩和を打ち出すなら、米金利低下からドル売り円高を見込みます。逆に円安材料としては、ユーロ圏経済不振の世界への波及から、本邦輸出停滞、我国エネルギー問題を背景とする輸入増での貿易収支悪化定着や、近時継続的活発に行われている対外直接投資の円投増加が挙げられます。

中長期では、この円安材料が勝るでしょう。しかし、超長期では積み上がった対外資産からの利益が経常収支をある程度サポートすることから、極端な円安を和らげる効果があると考えます。

ユーロドル ・・・・・・

検討中のいくつかの南欧財政支援策については、関係者発言に神経質で小さな反応を見せるものの、案そのものは短期ではまとまりにくく、むしろ中期(数ヶ月~1年)の材料として管理した方が良さそうです。その代わり、短期では、ECBの金融政策スタンスや米FOMCに対する反応に注意すべきです。また、9/12のオランダ下院選挙は、ユーロ圏北部も経済的に疲弊してきた状況で優等生の地位を放棄するか否かを視点に、瞬間的な変動要因になるでしょう。

中期では、ECBによる国債購入がドラギ総裁中心にまとまるなら、通貨への信頼となってユーロの回復。他にギリシャ支援の条件緩和やスペインの地方財政支援の行方なども中期材料としてみておく必要があります。積み上がっているIMMのユーロ売りポジションが上記材料をきっかけに巻き戻されれば、それなりの勢いで回復軌道に乗るかもしれません。

長期では、共同債など財政統合への進捗がポイントですが、今のユーロ圏指導者には実務家が多く、道は遠いが結構前へ進むのではないでしょうか。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. FOMC方針。追加緩和策が打ち出されるか、期待させる内容なら、ドル売り、円買い、ユーロ買い(売ポジション調整)。

2. 日銀の追加緩和策の可能性。

3. 9/12のオランダ下院選挙。左派優勢となれば、南欧支援条件緩和にもつながりユーロへの不安が増す。

4. 日銀の円売り介入警戒感:77円台が当面の抵抗線。

5. 南欧諸国への支援を巡るEU首脳の対応・発言など。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 本邦エネルギー問題を背景とした、輸入増加による貿易収支悪化。円安。

2. ユーロ圏経済不振が新興国や世界に波及し、本邦輸出が飲み悩む結果、貿易収支の悪化が定着して円が弱含む。

3. ユーロ共同債等財政統合への検討状況。まとまる方向が見えるなら、市場の売ポジション巻き戻しからユーロ回復軌道へ。

4. 米国大統領選挙を見据え、オバマ政権が景気刺激策を打ち出す可能性。(緩和円高)

5. 世界経済への影響が心配される、中国など新興国の景気動向。悪ければ、リスク回避行動から円高へ。

【長期的な材料(数年)】

1. 円高、本邦企業海外移転で輸出競争力低下貿易収支悪化経常収支悪化円安

2. 米国:2013年半ばまでとしていた超低金利(ゼロ金利)政策を、2014年末まで継続すると決めた(122月)。

3. 円高利用の対外投資は、中長期には円投増加による円安、超長期には将来の対外債権を増やし、経常収支維持に貢献するので極端な円安を防止する。

4. ユーロ問題の根底である、金融と財政の政策ミスマッチを解消する、ユーロ共同債、財政統合の動き。

5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻

6. 米国:「米国債務上限引上げ法案可決と引き換えに、財政赤字削減2兆ドル以上」(11年夏)は今後2年間にGDP0.20.5%押し下げる影響

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