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2012年11月18日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第57章(全61章)

57.   多角化の成功戦略

多角化を進めながら全体をまとめ上げる方法は、共通の市場で結束するか、共通の技術で結束するかの2つに絞られる。つまり全社に共通の言葉が行き渡るのだ。

(1)   市場を軸とした結束

どれほど多彩な技術が必要になろうとも、ひとつの市場に収まっている限り全体が複雑すぎたり、統一が損なわれることはない。但し、注意する点が2つある。

  注意点1 :市場の範囲を決めるのはメーカーではなく、顧客であることを理解すること。

a.  例:米RCAは、リビング家電からキッチン家電に多角化したが、うまくいかなかった。RCAは両方とも家電だと思ったが、顧客はリビング家電を家具としてみていた。

  注意点2 :相応の事業戦略がないと多角化しながら市場の統一性を維持することはできない。

a.  戦略では、全社の枠組みのなかで、各事業が果たすべき役割にも触れる。(事業毎にプラン、ゴール、戦略を設け、目標を掲げて測定をとおして管理する。

b.  同時に、全事業に共通の戦略、構想、使命も明確にする。全体の結束とともに多様性も求められる。

(2)   技術を軸とした結束

共通の技術を土台にして、多数の異なる市場へ多角化を図る。

  技術を軸に多角を図る以外、事業を進める方法がない業界もある。例:鉄鋼、ガラス、アルミニウム、紙、銅などの素材産業やプロセス産業。

  これらでは事業のありかたを決めるのは加工や処理の「プロセス」である。ガラス窯からガラスしか生まれない。

  テクノロジーは必ずしも「技術とサイエンス」を意味しない。銀行系クレジットカードは、学習を積み重ねて開発した技能で、科学やエンジニアリングとは無縁だ。

a.  テクノロジー:ギリシャ語の「テクネ」=有用な知識、体系的な技能の意に近い。

  技術を軸にした多角化を成功させるために、以下の基本ルールがある。

a.  軸となる技術が、机上の理論ではなく、具体性をもっていなくてはいけない。

b.  技術は異彩を放っていなくてはならない。市場リーダーにふさわしい特徴を製品に添えること。

c.   際立った独自技術は、製品やサービスの添え物ではなく、中核に据えなくてはいけない。

·  例 :ある製紙会社は、特殊紙(感熱紙、観光し、高熱伝導紙等)市場に製紙技術を核として望んだが、成果が得られなかった。核とすべきは表面化学で製紙技術ではなかったからだ。

d.  市場を土台とした多角化と同様、基本戦略が欠かせない。特にマーケティング面での戦略が求められる。

  技術の枝分かれにまかせた多角化には注意。

a.  技術には独特の力学があり、枝分かれしていく傾向が強いため、それに突き動かされるようにして、企業が多角化へ向かいがち(技術の増殖)が、これは時代遅れだ。

b.  このような「成り行き」で多角化を進めた企業は、マネジメントの限界に突き当たっている。これらや全社共通の課題でなく、共通の沿革だけで結ばれている。

(3)   その他の留意点

  市場、技術の両方の軸に沿った多角化は難しい。

a.  市場を軸とした場合と、技術を軸とした場合とでは、個となったマネジメント思想、姿勢、戦略を掲げ、個となった問いを抱く必要がある。

b.  だから、両方の軸に沿って多角化を行い、事業をマネジメントしていくのは不可能ではないが、難しい、

  景気循環に対応するための多角化は難しい。

a.  資本財事業の景気循環を循環周期の異なる消費財事業で賄おうとするなど、景気循環に対応しようとしても、両者の循環周期は実際には大きく崩れる事は稀であるため、効果を発揮しない。

  財務面での相乗効果は幻想である。

a.  多角化においては、経済の実情と価値はうまく見合って(市場、生産性、技術、マネジメントの相性)いなければならない。

b.  上記がなければ、いくら机上で財務面での効果を計算しても、そのとおり顕れない。

c.   例 :196年代の英米では、PER(株価収益率)に着目した企業買収が財務戦略の花形だったが、市場での評価がたまたま買収可能な水準にあるからとって、PERの低い株式をPERの高い株式を使って購入するのは、財務上のまやかしである。

  相性の一致が欠かせない。

a.  多彩な事業、製品ライン、市場、技術などの理念や価値観がまちまちでは、いくら多角化しても成果は期待できない。

b.  例 :ある製薬会社は化粧品や香水事業に多角化したが、「人々の健康に尽くす重要な任務」をこなす自負を持つ立場からみると、化粧品は「くだらない」ものにみえてしまい、多角化は成功しなかった。

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