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2015年3月

2015年3月 4日 (水)

:外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2015年2月末現在)

まずお知らせです。

為替リスクに関する解説書を出版しました。

 

 「為替リスク管理の教科書」中央経済社 著者:金森亨

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昨今の為替相場乱高下に、「円安倒産」という新語も・・・。

 相場変動に振り回されずに本業に専念する為には、為替リスクを正しく管理しなければなりません。本書では、為替相場予想手法やリスクヘッジから管理体制の構築(組織機能や管理技術)までを経営の視点から丁寧に解説しました。

 企業経営者やリスク管理業務に従事する方に読んでほしいと思います。

また、為替管理をコンサルする診断士の皆さんにも指導要領として使っていただければありがたいと存じます。

 

【米ドル】

2月は少し円安になりました。

前月(1月)は、原油価格下落やギリシャ急進左派勝利を材料に119120円水準から116118円水準へ円高に振れる展開でしたが、2月は逆に、119120円水準に戻す動きとなりました。

以下、月初から順に見ていきます。

月初に117円台前半で始まった後、6日発表された米国雇用統計が良好(非農業部門雇用者数が市場の予想を上回ったほか、過去2か月分の計数も大幅に上方修正された)だったことから、119円台前半までドルが買われました。

中旬にかけては、日銀政策決定会合で現状維持が決定され、その後の黒田総裁の会見でも追加緩和は不要とのニュアンスであったほか、米国で公表された1FOMC議事録が当面の低金利維持ううかがわせる内容だったことから、118円台に緩みました。

これが下旬には、ギリシャ支援の4ヶ月延長で合意されたことや総じて良好な米指標を材料に再び119円台後半まで円安が進んだのです。

ただ、24日の米FRB議長の議会証言では近い将来の利上げ可能性を疑う内容であったことから、上値も重たく再び120円を越えて円安が進行するという雰囲気にはなりにくい状況です。

 

【ユーロ】

2月はフラフラしていました。

前月(1月)は、ギリシャ急進左派勝利を背景に、1.22台から1.12台まで一方方向にどんどん下落しました。急進左派が勝利して政権をとった時点では、それが具体的にどのような着地点を目指すのか不透明だっただけに、ユーロ圏全体の崩壊につながりかねない重大なリスクも孕んでいるとして、リスク回避ムードを増長させたのです。

それが2月にはいって、多少方向感が具体的になってきたため、一旦は下げ止まったものの、ギリシャ支援内容を巡って繰り広げられた攻防に為替相場も振り回されたという状況でした。

以下、月初から順にみていきます。

1.14台半ばから始まったユーロは、8日、ギリシャのツィプラス首相が2月末に期限到来するEU金融支援の延長求めない内容の議会演説を行ったことから、ユーロ圏結束が不安視され、1.12台に下落しました。

しかし中旬、一転して支援融資延長を申請することを決めたため、破綻に走ることはないと見えたことで、1.14台半ばまで戻しました。ユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)速報値が予想を上回ったことや、米国で公表されたFOMC議事録が当面の低金利維持をうかがわせる内容であったこともユーロ回復に貢献したようです。

2月の話題の中心となったギリシャ支援内容については、結局下旬に基本合意に達することができました。ただ、その後の支援継続に不安が残るとして市場の見方は厳しく、欧州中銀(ECB)の資産買い入れ(流動性投入による緩和措置)開始も近づいていることから、1.11台まで下落する場面も見せて1.12弱の水準で月を越したのです。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

前月(1月)に新たに加わった中期的な予想材料は、

  原油価格下落による新興国経済縮小(本邦輸出伸び悩みから円安材料)と、

  テロとの戦いに伴うリスク増大(リスク回避先通貨「円」買い)

でしたが、前者は多少剥げた感があります。

一方、前月までの長期的な予想材料は、下記2つの方向があり、これは今も修正する必要がありません。

Ÿ 円高へ ・・・アベノミクスからは、総需要が牽引する成長はおこらず、その結果、当面の円安分を吸収し終われば物量で測る輸入需要は減退し、国際収支からみた円安材料は剥げる。一方、従来のように成長戦略を輸出に訴えるなら、貿易赤字は縮小し、逆に円買いが進んで、結局110円前後に着地する。

Ÿ 円安へ ・・・消費増税先送りで、財政再建が遠のいたことから、これを補うための日銀による国債引き受けがさらに横行し、インフレ進行して円安。さらに財政破綻圏から円に対する通貨信用後退で、円での運用を嫌気した円売りも進む。

 

ユーロドル ・・・

短期的には、ギリシャの支援策がきちんと実施されて、財政問題解決の道筋がつけられるかに注目が集まるでしょう。ここを無難に通り過ぎるなら、ユーロは下げ止まり、ユーロ圏全体の経済力の見通しに関心が移ることになります。

この場合のポイントの一つはECBの量的緩和の効果です。一般に金融政策は、引き締め効果はあっても、刺激効果は期待できないと見られ(ひもの理論)、この点で量的緩和(資産を買い取ることで、市中に流動性を供給する)の効果に期待が集まるわけですが、短中期的には通貨が減価します。米FRBが長い量的緩和トンネルを出て、金利を引き上げる方針を打ち出していることから、この減価傾向はより増幅されるものと考えられます。金利選好の考え方です。

問題は、そのあとです。量的緩和が目論見通り奏功し、インフレが進行しながら経済が動き出し、これによってギリシャを含む南欧諸国の財政も安定する兆しが見えるなら、ユーロの信用力が増し、ユーロ下落が下げ止まって反転する機会もあるでしょう。

ここまではアセット・アプローチによる予想です。そこから先、通貨の取引需要の強さから予想するなら、ユーロ圏内需旺盛による貿易収支悪化とインフレ進行により再びユーロが売られると予想できます。

他方、量的緩和の目論見がはずれ、デフレ脱却に失敗するなら中期的にはアセット・アプローチからユーロの減価は続くものの、その先はデフレ通貨として増価していくでしょう。新興国経済が活発化するなら、ユーロ経済が外需に頼るようになって、取引需要から見てもユーロ買いが進むものと見られます。

 

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 2. 米FRB金融政策:量的緩和縮小(2014/10)と金引上げ時期に関する発言や議事録開示内容。

 3. IMM投機筋の円売り越し積み上がり水準。高ければ、利食いの円買いが起こる可能性。

 4. 中国など新興国の経済指標への反応。指標悪ければ、リスク・オフ動き活発となって円高。

 5. 米経済主要指標(雇用統計、製造業・非製造業景況指数、小売売上など)が堅調ならリスク挑戦行動が活発化し、株価上昇とともに円から他通貨にポジションシフトして円安。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. 日銀の緩和策実行による効果(通貨量、物価等)とアベノミクス3本目の矢の実現

 2. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い。

 3. 一連の欧州安定化策枠組み(国債買入プログラム合意2012.9.6、銀行監督一元化提言2012.9.6、ESM始動2012.10.8)の実施状況。懸念が生じればユーロ安。

 4. ギリシャ総選挙(2015.1.25)で急伸左派の勝利緊縮財政放棄で、ユーロを中心に通貨不安。

 5. 米FRB金融政策動向:量的緩和縮小(2014/10)と金引上げの実行状況。

 6. イスラム国、ウクライナ、イスラエル・ガザ地区など政治外交上の緊張状況リスク増は円高

 

【長期的な材料(数年)】

 1. 貿易赤字の定着化で、実需の面から円売りが進む。

 2. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高。

 3. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 4. 極端な金融緩和と政府・日銀の協力関係強化で、日銀の国債引受け体質が問題視されて利回り高騰し、財政が破綻。

 5. 欧州議会選挙(14.5/2225)の結果(EUに懐疑的な勢力が台頭)、ユーロ圏財政統合等安定化策の進捗が阻害されればユーロの信頼失墜。

 6. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

 

以  上

 

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