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2015年5月

2015年5月 1日 (金)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2015年4月末現在)

【米ドル】

4月は、ボックス相場でした。

ボックス(箱型)とは、上がったり下がったりしながら一定の幅での値動きに終止することですが、どっちへ抜けて行ったらいいか分からない方向感のないつまらない状況であるとも言えます。そうは言っても、4月の値幅は高値が120円台半ば、安値が118円台半までありましたので、順に見ていきましょう。

月初は120円近辺で始まりました。その後すぐに最大の注目指標である、米雇用統計が2日に発表され、この結果を受けて118円台半ば近くまで売られました。非農業部門雇用者数が極端に少なかったため、この先の米金利引上げ方針が揺らぐのではと疑われたのです。12ヶ月続けて20万人を越えていたのにいきなり半分近くにまで落ちたのですから無理もありません。

しかし、1回の雇用統計を悲観材料にFRBが簡単にスタンスを変更するでもないでしょう。原油価格が戻るに沿って米金利が高くなり、その後開示されたFOMC議事録もタカ派(緩和脱却、引締め方向・・・・タカ派・ハト派とは政治で使われる隠語だと思っていたら、どうやら最近は金融政策方針でも使われているようです。誰が使い始めたのやら・・・。)だったことから、たちまち値を戻し、上旬のうちに月初水準を上回って120円半ばまで買われました。

なお8日の、日銀政策決定会合の現状維持発表の影響は限定的だったようです。

中旬は、浜田内閣官房参与の発言にふらつきました。「購買力平価からみるなら、120円んは円安過ぎる」という発言です。購買力平価は僕も好きですが、2時点間の相対的物価水準で計算する相対的購買力平価はともかく、絶対的購買力平価を割り出すのは相当な苦労が伴います(詳しくは、拙著「為替リスク管理の教科書」2015/2中央経済社を読んでください)。

理論はともかく、著名な国際金融の専門家に120円円安過ぎると言われれば、ドル売りに出るのが普通でしょう。それに黒田日銀総裁の物価への楽観的発言も手伝って、再び118円台半ば近くまで値を落とします。

下旬は、ギリシャ不安や米経済指標に一喜一憂する相場展開となりましたが、4/30の日銀政策決定会合(現状維持)を受けて、再び118円台半ばまで緩んだ後、大量のユーロ円買戻しに、結局119円台後半まで買われて月末を越えました。

 

【ユーロ】

4月は反転しました。

月初、1.07台前半で始まってすぐ、米雇用統計が発表されました。既述の通り、非農業部門雇用が大きく悪化したことから、米ドルが円に対してもユーロに対しても売られ、ユーロは1.1付近まで回復しました。

しかし、これも既述の通り、この指標ひとつで米FRBの金融政策スタンスは変わらず今後の利上げ方針に変更はないと解釈され、回復力はさほどではありません。それどころが、例のギリシャ債務問題が再び不安をあおり、月央には逆に月初の水準を下回って1.0521まで下落してしいまいました。

ギリシャ債務問題に関しては、本年1月に急進左派政権が誕生してからというもの、市場に材料不足感が広がるたびに皆が飛びつく格好の煽り材料とされています。しかし、この問題がユーロ経済の脆弱さの象徴であることを思うと、やむを得ないかもしれません。実際、ギリシャ以外のユーロ圏諸国でも緊縮財政への不満が高まっていますし、そのことが選挙のたびに話題にのぼります。そういった国々の政権が揃って舵を切れば、体制などもろいものです。

しかし、こんな中で、ユーロ圏経済は、独を中心に徐々に持ち直しているようです。1年続いたユーロ安が輸出を押し上げ、原油を含む物価の下落がそろそろ個人消費の回復効果につながり始めました。経済がも落ち直すと、中期的な為替相場決定論として、運用資産選好から通貨価値が増します。それが4月末にかけて顕れました。下図は2013年からのユーロドル相場推移(日銀統計から筆者が作成)です。右端に少しだけピッと上を向いた尻尾が今後の大がかりな反転の兆しなのかどうかは難しいところです。

 

輸出持ち直し、原油安→個人消費伸び→デフレ歯止め

Photo

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

430日の日銀総裁会見では、2016には2%の物価上昇率を実現できるとのこと。2年目で実現できなかったのは、予想外の原油安があったからで、それ以外の各要素は「しっかり」にデフレ脱却に向けて歩んでいるという説明でした。基本ができているのだから、無理に追加緩和策を打ち出さなくてもいいと言っているようにも聞こえますから日銀側からさらなる円安材料は出ないかもしれません。

となると対する米FRBの金融政策スタンスの変更が材料となります。短期的には主要経済指標が発表されるたびに、それが経済回復を裏付けるなら安心して金利引上げ、資産選好から米ドル買い円売り、逆なら逆・・・という具合に予想できます。

以上は、日米金融政策スタンスギャップからの予想ですが、円安水準が続いている間に、経済活動も徐々に変化しています。やはり円安は輸出を活発化させますし、海外からの投資も増やす効果ももたらします。所得収支も順調にのびているとなれば、中長期的には実需面から円買いが進む可能性があります。

 

ユーロドル ・・・

4月末に見せた反転の兆しが大がかりなものか否かはわかりません。そう言ってしまうと、身も蓋もないのでいくつか材料をあげてみましょう。

まず、どうしても目が離せないのが、やはりギリシャ債務問題です。予想の視点は、財政と金融の統合が通貨の統合に追い付いてきちんと着地できるか、ユーロ圏全体の南北問題にうまく対処できるかの2点です。短中期的には、対処して着地する見通しがつけば運用通貨とか保蔵通貨としてユーロ買い。

次に、実体経済の動きです。個人消費が回復して、デフレから脱却することができれば、量的緩和の出口も見え、米国との金融政策スタンスのギャップが埋まりますから、この場合にはユーロ買い。

それからIMMの投機筋ポジション。昨年暮からIMM投機筋のユーロ売り持ち高が積み上がり、逆に円の売り持ち高がどんどん巻き戻されています。ユーロを売って円を買い戻している動きです。この間、円は米ドルに対しては売られて117120円水準を維持してきましたが、ユーロに対しては買われてきたのでしょう。4月末の大規模なユーロ円の買戻しはこの持ち高の調整が関係しているように思えます。ということは、ユーロ売りの余地が膨らんだという具合に見ることもできるのです。

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 2. 米FRB金融政策:量的緩和縮小(2014/10)と金引上げ時期に関する発言や議事録開示内容。

 3. 米経済主要指標(雇用統計、製造業・非製造業景況指数、小売売上など)が堅調ならリスク挑戦行動が活発化し、株価上昇とともに円から他通貨にポジションシフトして円安。

 4. 中国など新興国の経済指標への反応。指標悪ければ、リスク・オフ動き活発となって円高。

 5. IMM投機筋の円売り越し積み上がり水準。高ければ、利食いの円買いが起こる可能性。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. 日銀の緩和策実行による効果(通貨量、物価等)とアベノミクス3本目の矢の実現

 2. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い。

 3. 一連の欧州安定化策枠組み(国債買入プログラム合意2012.9.6、銀行監督一元化提言2012.9.6、ESM始動2012.10.8)の実施状況。懸念が生じればユーロ安。

 4. ギリシャ総選挙(2015.1.25)で急伸左派の勝利緊縮財政放棄で、ユーロを中心に通貨不安。

 5. 米FRB金融政策動向:量的緩和縮小(2014/10)と金引上げの実行状況。

 6. ユーロ圏経済の動向(貿易収支、個人商品の伸び、物価指数等)→良ければユーロ買い

 

【長期的な材料(数年)】

 1. 貿易赤字の定着化で、実需の面から円売りが進む。

 2. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高。

 3. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 4. 極端な金融緩和と政府・日銀の協力関係強化で、日銀の国債引受け体質が問題視されて利回り高騰し、財政が破綻。

 5. 欧州議会選挙(14.5/2225)の結果(EUに懐疑的な勢力が台頭)、ユーロ圏財政統合等安定化策の進捗が阻害されればユーロの信頼失墜。

 6. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

 

以  上

 

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