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2015年9月

2015年9月 2日 (水)

中国人民元と中国の為替制度、中国の思惑と株価

 

先月、中国人民銀行が基準相場を切り下げたのをきっかけに、株が売られ、為替相場も乱高下しました。そもそも中国の為替制度はどうなっているのでしょうか。

 

ちょっと前まで、中国は事実上1ドル8.28人民元での固定相場を採用していました。それを、2005年に変更し、主要通貨の通貨バスケットを参考にして一定範囲の変動を容認する方法にしたとしています。一定範囲が小さくても、通貨バスケットを使っている限り、徐々に市場の需給で決まる均衡値に近づいていくはずですが、人民元は市場から乖離していました。本当に宣言通りの制度をその趣旨に沿って運用しているのでしょうか。

 

実は、国際通貨基金(IMF)は中国の為替制度を「類似クローリング制(Crawl-like arrangement)」に分類しています。IMFは各国が採用している為替制度を管理度合いからいくつかに分け、そのうちのどの制度に当てはまるかを国別に公表していますが、その際、各国が「自国はこうだ」と宣言する制度をそのまま公表するのではなく、事情をよく調べ、実態に即した内容に従って分類しています。実態に即した結果、中国の場合は「類似クローリング制だ」と言っているのです。

 

クローリング制とは、一定の方向を設定しておき、基準相場を定期的に変更する方法ですが、類似クローリングは変動を基準値から2%程度の範囲に収める方法です。基準値は統計的傾向値を以って決めるのですが、この統計的傾向値が曲者。思惑に沿った一定方向を想定している可能性もあるでしょう。だから類似クローリングなのです。その辺りが人民元基準値と市場実勢が離れていく理由なのではないでしょうか。

 

ところで、中国はIMFに対し、SDRの価値を決める標準バスケットの中に人民元を入れて欲しいと要求しています。入れば人民元が国際通貨として認知されたことになるからです。しかし当のIMFは、「ならば、もっと為替制度をきちんと運用せよ」と、これを拒否。

 

そんな中での今回の基準値切り下げ。表向きIMFの指導に従ったと、見せかけておいて、実は通貨切り下げによる輸出促進策に出たのだ。市場はこう解釈しました。通貨バスケットを使っていると言いながら、実は類似クローリング制であったのに、突然バスケットに従うと言い出したのは、いかにも不自然だというわけです。そんな中国のなりふり構わぬ対応を見て、中国経済はそんなに悪いのかと、市場はますます心配になりました。

 

中国の経済指標では、相手の統計から照合可能な貿易統計以外はほとんど信用できないと言われていますね。昔ほどではないけど、やっぱり信用できない。だから、ちょっとした政策変更でも悪い方へ悪い方へと、想像が膨らんでいくのでしょう。株式市場はその最たるものです。人より先に対処しようという思いでリスクに過敏になった結果、世界同時株安が起こりました。

 

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中国人民元の新たな為替規制、為替予約の負担を大きく?

 

今日の日経朝刊1面に、中国が新たな為替規制を導入する旨の記事が載っていました。人民元売り外貨買いの為替予約について、利用者の負担を大きくするというものです。

 

中国の中央銀行にあたる人民銀行は、先月、数回にわたって人民元基準相場を切り下げました。ところが、要らぬ副作用として、先行きを心配する人々がその後元を売り急ぎ、想定以上に人民元安が進行する兆しが見えた為、これに歯止めをかけようというのが今回の規制の目的です。そのため、元売りは規制しても、元買いは規制しません。相当露骨な管理政策ですね。

 

さて、具体的に負担はどれくらい大きくなるのでしょうか。計算してみました。

 

記事によれば、残高の20%を無利息の準備金として人民銀行に預託させるというもの。残高とは予約残高のことで、預託期間はその残高がoutstandingになっている間だと解釈しました。

 

預託期間は無利息なので、預金利息がその機会費用となります。いまの中国の預金金利は1年の定期預金で年率1.75%、期間は為替予約平均期間を6ヶ月として計算すると・・・・

 

為替レート×20%×1.75%×(6ヶ月÷12ヶ月)=為替レートの0.175

 

つまり、1通貨単位毎に、0.175%の負担がかかるということになります。

 

もう少し見えるように、ドル円に置き換え、為替相場が1ドル=100円とした場合で考えてみましょう。

 

100円×0.175%=17.5

 

1ドル毎に17.5銭負担がかかるということです。普通、企業が銀行とドル円の先物為替予約を締結するときは、銀行が1ドル毎に数銭の手数料をとります。中小企業では20~50銭くらいでしょうか。大企業では5~20銭くらいかな。そう思うと、17.5銭は無視できないですね。

 

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外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2015年8月末現在)

 

【米ドル】

 

8月は、一段円高になりました。

 

言うまでもなく、中国の基準相場切り下げに続く世界の同時株安です。そもそも中国の為替制度はどうなっているのでしょうか。

 

ちょっと前まで、中国は事実上1ドル8.28人民元での固定相場を採用していました。それを、2005年に変更し、主要通貨の通貨バスケットを参考にして一定範囲の変動を容認する方法にしたとしています。一定範囲が小さくても、通貨バスケットを使っている限り、徐々に市場の需給で決まる均衡値に近づいていくはずですが、人民元は市場から乖離していました。本当に宣言通りの制度をその趣旨に沿って運用しているのでしょうか。

 

実は、国際通貨基金(IMF)は中国の為替制度を「類似クローリング制(Crawl-like arrangement)」に分類しています。IMFは各国が採用している為替制度を管理度合いからいくつかに分け、そのうちのどの制度に当てはまるかを国別に公表していますが、その際、各国が「自国はこうだ」と宣言する制度をそのまま公表しているのではなく、事情をよく調べ、実態に即した内容に従って分類しているそうです。実態に即した結果、中国の場合は「類似クローリング制だ」と言っているのです。

 

クローリング制とは、一定の方向を設定しておき、基準相場を定期的に変更する方法ですが、類似クローリングは変動を基準値から2%程度の範囲に収める方法です。基準値は統計的傾向値を以って決めるのですが、この統計的傾向値が曲者。思惑に沿った一定方向を想定している可能性もあるでしょう。だから類似クローリングなのです。その辺りが人民元基準値と市場実勢が離れていく理由なのではないでしょうか。

 

ところで、中国はIMFに対し、SDRの価値を決める標準バスケットの中に人民元を入れて欲しいと要求しています。入れば人民元が国際通貨として認知されたことになるからです。しかし当のIMFは、「ならば、もっと為替制度を考慮せよ」と、これを拒否。

 

そんな中での今回の基準値切り下げ。表向きIMFの指導に従ったと、見せかけておいて、実は通貨切り下げによる輸出促進策に出たのだ。市場はこう解釈しました。通貨バスケットを使っていると言いながら、実は類似クローリング制であったのに、突然バスケットに従うと言い出したのは、いかにも不自然だというわけです。そんな中国のなりふり構わぬ対応を見て、中国経済はそんなに悪いのかと、市場はますます心配になりました。

 

中国の経済指標では、相手の統計から照合可能な貿易統計以外はほとんど信用できないと言われていますね。昔ほどではないけど、やっぱり信用できない。だから、ちょっとした政策変更でも悪い方へ悪い方へ想像が膨らんでいくのでしょう。株式市場はその最たるものです。人より先に対処しようという思いでリスクに過敏になった結果、世界同時株安が起こりました。

 

というわけで、ドル円は、リスクを嫌った資金が円買いに流れて、124円水準から、一時116.15をつけるまで一気に円高が進行しました。というよりプライスが飛んだといってもいいでしょう。NYから東京へ戻ってきたときにはすでに118円台までもどしていましたが、このインパクトは相当なものでした。

 

その後は落ち着いて121円台の前半で月末を越えています。

 

 

 

【ユーロ】

 

8月は、円と同じ動きでした。

 

円と同じように、上海ショックを受けて急騰し、その後は落ち着きを取り戻したけど、もとの水準には戻っていないという状況です。

 

月初は7月の動きを受けて1.09台で始まり、毎月注目される米雇用統計の発表にもさほど反応せず、1.081.1の比較的値動きの小さい状態で推移していました。この間、6月製造業受注が予想を大きく上回るユーロ買い材料の一方で、7ECB議事内容として、「域内の実質GDPが期待はずれのまま留まっている」とのコメントが伝わると、ユーロ売りの材料となりました。

 

そこへ824日の株暴落です。ユーロは一気に1.17台まで急騰しました。その後は戻しましたが、8月ユーロ圏景況感指数が4年ぶりの高水準となった好材料などあり、月初の水準までは戻らず、1.12前後で月末を越えています。

 

 

 

【今後の短期~長期予想】

 

ドル円 ・・・

 

上海ショックはあくまでショック。長期的にはそうなると思っていますが、この時期に116円はちょっと行き過ぎです。相場は再び日米金融当局の政策スタンスギャップに注目するとになるでしょう。

 

米FRBの利上げは9月中旬にも決定されるとの観測が、上海ショックで少し揺らぎはしたものの、まるっきりなくなったわけではありません。今週末の米雇用統計次第で再び可能性が高まることもありえます。中国経済減速のあおりを受けた他の新興国から資本が逃げて米国内に還流するということになるなら、それも利上げを決める材料となるでしょう。

 

利上げ材料が剥げるまで、ドル買い圧力は続くと思われます。

 

 

 

ユーロドル ・・・

 

最近のユーロはギリシャ問題に揺れました。この問題は現象面では短期の相場を乱高下させますが、超長期的には、ユーロは破綻するのかしないのか、破綻しなくても財政統合で苦労が絶えないまま推移するのかというところがユーロ評価の分かれ道になるでしょう。では、中期的にはどうなのでしょうか。ニュースとして発表される経済指標は時系列は把握しにくいため、全体としてどの方向に動いているかという動向が読みにくいものです。そこで、今回は一般的な指標の中期的推移を見てみようと思います。

 

1. 実質GDP成長率

 

2010年からのユーロ圏実質GDPは、20122013年がマイナス成長ですが、2014年からは堅実にプラス成長を続けています。この間、米国は一貫してプラス、日本は20112014年がマイナス、直近で話題になった201546月がマイナス。

 

2. 失業率

 

201379月の12.0%をピークに徐々に改善し、2015年は春が11.3%、6月は11.1%まで下がってきました。

 

3. 消費者物価上昇率

 

2010年から順に、1.6%2.7%2.5%1.3%0.4%と、確かにデフレ傾向にありますが、量的緩和策の効果あって、201412月~20153月のマイナスの後、少しプラス。

 

4. 国際収支

 

経常収支は、20082012年まで赤字(データは2008年から)の後、一貫して黒字。一貫してドイツが稼いでいますが、その中身を見ると、2013年まではドイツ以外がドイツの足を引っ張っていたのに対し、以降はドイツ以外も稼ぎ始めています。

 

以上をどう評価するかは難しいところです。しかし、ECBの量的緩和策が続けられている一方、米国は利上げにさしかかっているという両者金融スタンスの違いから、ユーロを売る圧力が強いものの、ユーロ圏の実体経済は底堅いと言えます。

 

価値保蔵先としては安心できる通貨だと言っていいのではないでしょうか。

 

 

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 

 1. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 

 2. 米FRB金融政策:量的緩和縮小明言(2014/10)後の金利引上げ時期に関する発言や議事録開示内容。

 

 3. 中国の経済減速、株価動向→心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 

 4. 新興国の株価動向や主要経済指標。悪ければ、リスク回避の動きが強まって、円高。

 

 5. 米経済主要指標(雇用統計、製造業・非製造業景況指数、小売売上など)が堅調ならリスク挑戦行動が活発化し、株価上昇とともに円から他通貨にポジションシフトして円安。

 

 

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 

 1. 日銀の緩和策実行による効果(通貨量、物価等)とアベノミクス3本目の矢の実現

 

 2. 米FRB金融政策動向:量的緩和縮小明言(2014/10)と金利引上げの効果など(2016年春以降)。

 

 3. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い。独など主要国債の利回り、物価景気動向、貿易収支の変化。

 

 4. 一連の欧州安定化策枠組み(国債買入プログラム合意2012.9.6、銀行監督一元化提言2012.9.6、ESM始動2012.10.8)の実施状況。懸念が生じればユーロ安。

 

 5. 中国など新興国の景気動向。減速リスク回避の円買い。改善リスク挑戦円安。

 

 

 

【長期的な材料(数年)】

 

 1. 円安による輸出促進効果で貿易収支の改善、経常黒字拡大が再び円高を誘う。

 

 2. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高

 

 3. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 

 4. 極端な金融緩和と政府・日銀の協力関係強化で、日銀の国債引受け体質が問題視されて利回り高騰し、財政が破綻。

 

 5. 欧州議会選挙(14.5/2225)の結果(EUに懐疑的な勢力が台頭)、ユーロ圏財政統合等安定化策の進捗が阻害されればユーロの信頼失墜。

 

 6. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

 

 

以  上

 

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