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2015年11月

2015年11月 3日 (火)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2015年10月末現在)

【米ドル】

10月は、中央くぼみの相場でした。

ちょっと分かりにくい表現ですが、月初と月末、つまり月の両端は、120121を挟む水準で、中旬に118円台前半までドルが売られる(円高)場面があったという意味です。

月初は、前月後半、米FRB議長が年内利上げをほのめかしたことや、日銀総裁が物価2%目標にコミットし続けるとの発言などドル買い円売り材料を引き継いで、120円を挟む水準で始まりました。

それが中旬にドルが118円台前半まで売られたのは、前月の米FOMCで利上げが見送られたことを再び注目させる経済指標がいくつか発表されたからです。まず、中国の9月貿易統計で輸入が大きく減少したこと。輸入減少は内需縮小を意味し、中国経済の不振につながります。そもそも先月FOMCが利上げを見送ったのも、中国経済不振を考慮したとみられていました。他にも米小売売上高や企業物価指数が予想を下回ったことなどがあり、ひとつひとつは大したことありませんが経済の停滞が米利上げ期待を減退させて米ドルが売られたのです。

しかし、それも定着しませんでした。中国経済の様子が好転したからです。まず、19日に発表された中国79月のGDPが良好で、そんなに悪くないじゃんということになりました。それに加えて、下旬には政策面でも、貸出金利や預金準備率の引き下げで景気減速に歯止めをかけるスタンスを明確にし、中国経済の悪化にともなう市場不安を払拭したのです。

そうなると、米当局も利上げによる世界経済への影響をさほど心配する必要がなくなって、利上げ環境が整います。実際月末のFOMC声明文でも、経済減速に配慮する文言が削除され、年内利上げ期待が高まりました。そのため、為替は金利が高い通貨へ流れる理屈どおり短期的には米ドル買いということになり、121円台前半まで上昇したのです。

 

【ユーロ】

10月は後半にかけて売られました。

方向感のない前月の相場を引き継いで、月初は、1.11台で始まりましたが、中旬まで続いた、米ドル売り材料に押されて、一時1.14台まで強含み、概ね1.13台で推移していました。その材料は、

Ÿ 月初に発表された米雇用統計:非農業部門の雇用者数が予想を大幅に下回り、米利上げ期待が減退した結果、米ドルがユーロに対して売られた。

Ÿ 中国経済減速を裏付ける、中国の輸入大幅減少で、米FRBが金利を上げにくくなったこと(円に対しても、米ドルが売られた)

上記は、いずれも米FRBの年内利上げ観測を後退させるものでした。ユーロの金融政策スタンスは緩和であるため、米利上げによって両者のスタンスが明確に異なっていたことがユーロ売りの材料だったわけですから、米利上げ観測後退によって、そのスタンスの違いが少しぼやけたということです。

しかし、下旬にECBのドラギ総裁発言によって、米利上げ観測が後退した分だけ、ユーロの緩和態度が強化されました。次回会合での追加緩和を示唆したのです。

そのため、相場は1.1を割り込み、一時1.08台まで弱含みました。

月末には再び1.1台を回復し、1.1台前半で月を越えています。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

先月も書いたように、米FRBが金利を引き上げるまでは、利上げ期待が続き、このおかげで円安ドル高材料を当面の間持ち続けることになりそうです。

この構図における、主なドル買い(円売り)材料とドル売り(円買い)材料を整理すると、下のようになるでしょう。

ドル買い(下記の逆がドル売り材料)

Ÿ 米経済指標(雇用統計、小売売上高など)が良好なら、利上げ環境整う。

Ÿ 中国など新興国経済の不安払拭するような指標の発表。

Ÿ 米政策当局の発言が上記を認知する内容で発表される、又は直接利上げ示唆。

なお、中国経済については、指標発表に信憑性にも気を使う必要があります。GDPは統計を調整しやすく、6%台とか7%とか言われても、本当だろうかとなります。

これに対して、貿易統計は相手が居るので、改竄しにくい。また、物流を測る指標や鉄鋼価格など特定の物価動向などの方が中国経済の実態を正確に表しているようです。

それから、円ドル相場には当然日銀政策スタンスも関わってきますが、展望レポートでも物価目標を先送りしているなどあって、どうやら最近は相当色あせてきました。

 

ユーロドル ・・・

ユーロドル相場は、1.11.5の幅で変動してきた、ここ数年の底値(ユーロ安)にあります。その中で、南欧諸国財政が問題となった時期も下回る水準ですので、値ごろ感からは、そろそろ底値を離れて、ユーロが買われるのではないかと見方もあるかもしれません。

しかし、もともとユーロは米ドルに対して11でスタートしたのです。

ユーロ経済のファンダメンタルズはさほど弱いものではありませんが、ここ当面、少なくとも米FRBが実際に利上げを実施して、この材料が剥げるまでは、米との金融政策スタンの違いに着目した相場展開が続き、ユーロが売られやすい状況でしょう。

その後は、ECBの金融政策スタンスの変化を見極めながら判断する必要がありますが、それは実体経済の動向に依存するものです。このところのユーロ圏経済は、

Ÿ 消費者物価(HICP):9月は久しぶりにマイナスとなったが、10月は食品を中心に上昇し、0%。しかしエネルギーは大きくマイナスのままであり、懸念材料となっている。

Ÿ 失業率は改善。中期スパンを年ベースで見ると、2010年、2011年は10%台だったものが、1112%に悪化して問題となった。しかし、2013年の12.0%をピークに徐々に改善。月ベースでは10月に久しぶりに10%台となった。

その他、貿易収支は、中期スパンで黒字定着。しかし、鉱工業生産や個人消費といった景気動向関係指標は停滞したままで、楽観はできません。

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. 米FRB金融政策:量的緩和縮小明言(2014/10)後の金利引上げ時期に関する発言や議事録開示内容。

 2. 中国の経済減速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 3. 米経済主要指標(雇用統計、製造業・非製造業景況指数、小売売上など)が堅調ならリスク挑戦行動が活発化し、株価上昇とともに円から他通貨にポジションシフトして円安。

 4. 新興国の株価動向や主要経済指標。悪ければ、リスク回避の動きが強まって、円高。

 5. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. 米FRB金融政策動向:量的緩和縮小明言(2014/10)と金利引上げの効果など(2016年春以降)。

 2. 中国など新興国の景気動向。減速リスク回避の円買い。改善リスク挑戦円安。

 3. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い。独など主要国債の利回り、物価景気動向、貿易収支の変化。

 4. 一連の欧州安定化策枠組み(国債買入プログラム合意2012.9.6、銀行監督一元化提言2012.9.6、ESM始動2012.10.8)の実施状況。懸念が生じればユーロ安。

 

【長期的な材料(数年)】

 1. 円安による輸出促進効果で貿易収支の改善、経常黒字拡大が再び円高を誘う。

 2. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高

 3. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 4. 極端な金融緩和と政府・日銀の協力関係強化で、日銀の国債引受け体質が問題視されて利回り高騰し、財政が破綻。

 5. 欧州議会選挙(14.5/2225)の結果(EUに懐疑的な勢力が台頭)、ユーロ圏財政統合等安定化策の進捗が阻害されればユーロの信頼失墜。

 6. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

以  上

 

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