外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2016年4月末現在)
【米ドル】
4月は円高でした。
一言でいうと、円高というしかありません。2月に円がドルに対して110円台まで急騰したと、一旦112~114円台まで値を戻して動意の少ない時期が少しありましたが、3月末にイエレンFRB議長が講演で、世界経済のリスクに言及し、利上げに対して慎重な姿勢を見せたことから、米ドルを売って円を買う動きの兆しを見せていました。
これが4月に入って動きだし、4月中旬までかけて107円台半ばまで進んだのです。この動きを加速させたおもな材料は2つです。
まず6日に米国FOMC議事録が公開されました。この内容は、3月の利上げ慎重姿勢を見せたイエレンFRB議長講演を裏付けるものでしたので、日米金利要因から米ドル売り円買いが進行し110円を切り、翌日には米金利が下げ幅を拡大し107円台をつけました。
材料の第2は原油価格です。中旬に開催された産油国会合で増産凍結に合意できなかったことから、資源国はじめ新興国の経済リスク懸念が再び広がり、資金がリスク回避通貨である円に逃避したため18日月曜日に再び107円台をつけたのです。
その後は、利食いのポジション調整などもあって一旦111円台まで回復しました。
しかし28日、日銀が政策を現状維持することを決定して発表すると、追加緩和策の期待が裏切られた市場は一気に円買いに走り短時間で3円も円高が進みました。日本が休みの29日には2014年10月以来の106円台に突入しています。
【ユーロ】
4月はふらふらしていました。
ドル円の乱高下に比べると、ユーロドルは動意が少なく、1.12~1.14を行き来する展開でした。順に見ていきます。
前月(3月)は、均してみると1.11前後のおとなしい展開でしたが、月末のイエレンFRB議長の利上げ慎重姿勢から値を伸ばし、1.133の高値引けで月越えしました。
4月はこれを受けて、1.13台から入ったあと、ドイツやユーロ圏の良好な経済指標発表を受けて、1.14台半ばまで値を伸ばしました。
その後中旬にかけて、中国の予想を上回る良好な貿易統計が発表されるほか、一時的な原油価格の回復が見られる場面では、リスク指向の米ドル(米ドル自身がリスク高いという意味ではない)が買われて、1.12台後半まで弱含みました。
後半に入り、21日には欧州中央銀行が政策金利を据え置いた一方で、ドラギ総裁がハト派的な発言(最近は弱い経済を心配した発言や緩和を匂わす発言をハト派的と言うようです)をしたため、再び1.12台をつけました。
月末にかけては、2016年第1Qのユーロ圏GDPが予想を上回ったことに意を強くして1.14台半ばのユーロ高水準のまま月を越えています。
【今後の短期~長期予想】
ドル円 ・・・
市場のセンチメントとしてドルを売って円を買う圧力が相当強いようです。昨年末前後に売りから買いのポジションに変わったIMM投機ポジションも円買いが次第に積み上がりまだその傾向が終わっていません。
日本の赤字化しない経常収支や人口要因によるデフレという長期的な円高材料に、日米金融政策スタンスの違いや不安定な原油価格にともなう世界経済停滞リスクからの逃避という短期中期的な円高材料が重なった状況で、円を売る材料が見当たりません。
そんな中、発表された米財務省の為替報告で、円が監視リストに入っているというニュースがありました。監視したが、過去4年間に円安誘導介入はなかったという内容ですが、これは介入への牽制です。介入がないなら安心して円が買えると判断する投機筋にとっては、さらなる円買いポジション積上げの材料になるかもしれません。
ドル買い材料としての利上げや原油価格回復に頑張ってもらわないと、105に挑戦する動きになりそうです。
ユーロドル ・・・
2014年夏から膨らみだしたIMM投機筋のユーロ売りポジションは2015年春をピークに、その後は徐々に巻き戻され、最近ではピーク時の四分の一程度のポジション量になっています。これに呼応するように、ユーロドルは2015年11月のユーロ底値から徐々に回復してきました。
しかし、それでもユーロ売りポジションはピーク時の四分の一とはいえ、売りに傾いたままですから、巻き戻し余地(ユーロ買い)は残っていると言えそうです。また、製造業PMIや貿易収支、GDP成長率といったユーロ圏経済の基礎力は確実に回復しており、ユーロ安の材料はドラギ総裁のハト派発言とそれが期待させる追加緩和策に絞られてきているように思います。他方の米金融政策スタンスは、当面、利上げがしにくい状況ですから、ユーロが買われやすい状況が当面つづくのではないでしょうか。
ただ、夏が近づくと注目されるギリシャ問題は今年も、先月から話題に上り始めました。ギリシャ問題はユーロ通貨の構造的な問題に起因するものなので、どちらかというと長期的な変動材料なのですが、アセットアオローチ面からリスク回避の動きがでると短期的にはユーロ売りとなって顕れます。
【短期的な材料(1ヶ月前後)】
1. 米FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。
2. 石油価格下落に伴う資源国経済の先行き懸念→リスク回避による円買い(短・中期)
3. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向→心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。
4. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)⇒米国の金融政策スタンスとの比較。
5. 金融当局による介入姿勢に関する発言など。介入懸念は円安、介入牽制は円高。
【中期的な材料(数ヶ月)】
1. 米FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。
2. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向→心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。
3. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/3~2016/9)の進行度合い(2017/3まで延期を決定(20151203ECB理事会))。独など主要国債の利回り、物価景気動向、貿易収支の変化。
4. 欧州の政治要因:テロ対策や難民対策など、リスク退避先として評価されつつあるユーロに不安。
5. ギリシャ問題。
【長期的な材料(数年)】
1. 中国など新興国の景気動向。改善・成長→本邦輸出促進→貿易収支改善→円高(短期的な影響と異なる)。
2. 円安による輸出促進効果で貿易収支の改善、経常黒字拡大が再び円高を誘う。
3. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)
4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。
5. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。
以 上
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