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2016年8月 1日 (月)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2016年7月末現在)

【米ドル】

7月はヘリマネ材料に、一時円安に振れた後戻りました。

103円台前半で始まったあと、欧州委員会がスペイン等への財政赤字への制裁を始めたこと材料に再び前月の英国EU離脱にかかるEU運営不安からユーロ円が下落、円は再び100円近辺まで買われました。

その後は月末までドル堅調推移、円は一時107円台半ばまで売られました。ドル高の材料は下記の3つです。

Ÿ 米雇用統計:市場予想を大幅に上回る良い結果であったこと

Ÿ 710日の参院選与党圧勝後に、阿部首相が表明した経済政策への期待

Ÿ ヘリコプタマネー(ヘリマネ)を含む日銀の追加緩和策への期待

ヘリコプターマネーとは、米シカゴ学派のフリードマンが使った言葉です。定義はありませんが一般には、日銀が永久国債を引き受けたりして返済不要通貨を供給することです。ヘリコプターが上空から通貨をばらまけば庶民は拾って使うだろうといういかにもマネタリト的な無責任な発想です。タガを外すほどの緩和に踏み切れば、そのアナウンス効果も相まってインフレに向かうと考えたのでしょう。購買力平価説により、インフレ通貨は減価するため、円安誘導効果があります。インフレになれば・・・です。

でも、空から一万円札が降ってきたら、私ならさっそくそれ老後の蓄えとしてすぐ貯金するでしょう。これをケインズは流動性の罠と呼びました。

さて為替はその後どうなっかたというと、月末にかけて、阿部首相の経済政策が28兆円以上(直効果~真水~は6兆円)と発表されて、円安となる場面もありましたが、月末の日銀政策決定会合で発表された緩和策が、ヘリコプターマネーなど期待した内容ではなかったため、101円台まで円が買われて、結局102円台前半で月を超えました。

  

 

【ユーロ】

7月はじり安のあと月末にかけて戻しました。

月初は1.110の後半で始まりました。その後は、じりじりと月末にかけて売られ、一時1.10を割り込む水準まで弱含んでいます。とくに大きく売られる材料はありませんでしたが、例月行事も含めていくつか挙げます。

まず、ECBの関係者がQE拡大の足掛かりともなる債券買入ルール撤廃は検討しないと表明(現行では出資比率に応じた買取をしており、これを撤廃すれば緩和の余地は広がるはずだった)したたまえ、1.11台半ばまで強含みました。その後発表された米雇用統計もこれに寄与しました。

ECB理事会は、市場の予想通り金融政策は据え置かれ、市場へのインパクトは限定的でした。また、後半、注目された米国FOMCも利上げに関する明確なメッセージもなく影響はありませんでした。

月末にかけては、いくつかのユーロ関係経済指標(ユーロ圏CPI速報値が市場予想よりたかかったこと、ユーロ圏GDP速報値が市場予想より高かった)が好結果を出したことから、急反転し、1.11台の後半で月を超えました。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

節操のない相場が続いています。市場が材料として注目する材料のどれもが実体として為替の需給を決定づけるようなものには思えません。例えば、阿部首相の28兆円を超えるという経済対策。直接効果は6兆円でGDPのわずか1%です。間接効果は乗数効果が小さいのでGDP押し上げ効果は限定的です。

なのに、これで為替が3円も4円も動いてします。私には、単に市場が相場を張る為のこじつけにしか見えません。短期相場を合理的に予測するのは不可能です。

ただ、ヘリコプターマネーだけは、その先のリスクを見越すなら、相当な円安材料となるでしょう。破綻を予想させるものだからです。

先月、長期予想として、こう書きました。すなわち、

「超長期的にも見方が2つあると思います。1つは、・・・つまり90100円。他の1つは、財政破綻から円が暴落する見方です。・・・・・・。日銀による財政ファイナンスが常態化する傾向にあります。」

日銀による財政ファイナンスの部分がヘリコプターマネーに当たります。既述のようにインフレ通貨は為替需給を恒久的に動かして、減価しますが、これは購買力平価で説明できる範囲内のこと。これに対して、ヘリコプターマネは財政の返済負担から解放するファイナンスの仕掛けです。信用を失って減価(暴落)するのです。

  

 

ユーロドル ・・・

英国のEU離脱にかかわるショックは次第に落ち着いてきたようです。一方、毎年夏になると注目が集まるギリシャ問題も今年はもう片付きました。

当面の懸念材料が払拭すれば、市場は再び金融政策のスタンスに注目するようになるでしょうから、短期的にはECBの金融政策と米国FRBの利上げ期待観測を見守っていかなければなりません。

中期的には、ユーロ圏のファンダメンタルズをフォローしていく必要があります。貿易や経常収支、経済成長率や物価動向などです。このところ発表される指標は好結果が多いようですから、中期ではユーロ買い圧力がいくぶん優るのではないでしょうか。

でも長期的には、ユーロの構造的不備が不安材料として気になります。その意味で、英国のEU離脱交渉の行方は重要です。

理由は2つあります。一つは英国抜きのEUの経済力減退です。ドイツに次ぐ経済力を持った英国が離脱すれば、経済力が減退し、それに伴ってユーロの信用力も小さくなるでしょう。

もうひとつはユーロの構造的な問題です。前回も書きましたがマンデルフレミング法則への挑戦は破綻すつと思われます。英国の離脱交渉が早く進み、経済合理的な欠陥を補って無理に保持してきた政治的結束が普通に崩壊するんだとの理解が普及すれば、破綻も早まると考えます。

 

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 2. 石油価格下落に伴う資源国経済の先行き懸念リスク回避による円買い(短・中期)

 3. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 4. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 5. 英国のユーロ離脱投票結果の後遺症

 6. 金融当局による介入姿勢に関する発言など。介入懸念は円安、介入牽制は円高。

  

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 4. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い(2017/3まで延期を決定(20151203ECB理事会))。独など主要国債の利回り、物価景気動向、貿易収支の変化。

 5. 欧州の政治要因:テロ対策や難民対策など、リスク退避先として評価されつつあるユーロに不安。

 

【長期的な材料(数年)】

 1. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 2. 円安による輸出促進効果で貿易収支の改善、経常黒字拡大が再び円高を誘う。

 3. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 4. 英離脱後のEU各国への影響(2017年、主要国の重要選挙予定されている)

 5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 6. ギリシャ問題:2018年に第3次支援終了

 7. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

 

以  上

 

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