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2016年9月 1日 (木)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2016年8月末現在)

【米ドル】

8月は円高の後、月末に戻りました。

月初102円台前半で始まりましたが、8/2には、政府が発表した経済政策に市場がドル売り円買いで反応、100円台後半に押されました。この日発表した経済政策とは、前月7月10日の参院選挙で大勝したことを受けた与党がアベノミクスを勢いづかせようと取りまとめた政策です。一部の期待を裏切ったというのが原因ですが、政策効果を裏切られたのに円を売るとは不思議ですね。政策効果に期待できないから、日本経済は浮上しない。浮上しないと言う事はインフレにもならないので、デフレ通貨は強いという理屈から円を買ったということでしょうか。或いは、経済が浮上しないなら全体としてリスク回避に動きだすから避難先通貨である円を買ったということでしょうか。

それはともかく、8月は市場取引が薄く、ちょっとした材料に市場が過剰に反応しがちです。例月行事の米雇用統計では、雇用量に加えて賃金などでも好結果が出たと言う事もありますが、久しぶりにしっかりした反応を見せ、102円台に乗せました。

しかし、その後はさえない米経済指標の発表に再びドル売り円買いが進み、一時99円台半ばまで円高が進むなど、薄商いならではの理不尽な推移となっています。

月末には、注目されていたイエレン議長の講演内容が米利上げを期待させるものだったため102円台まで戻し、結局月初の水準から少しドル高円安の103円台前半で月末を越えました。

 

【ユーロ】

8月は行って来いの展開でした。

月初は、前月の低迷から少し復活する兆しを見せ、1.11台半ばで始まったあとも1.12台まで強含みました。その後は、85日に発表された米雇用統に計が市場予想を上回る結果であったため、米国の利上げ環境も整いつつあるとの見方から米ドルが買われ、一旦1.10台半ばまで下落しましたが、それから下旬にかけては、強含む展開です。

8月の薄商いの中、米経済指標に振られて、じりじりと1.13台前半まで乗せ、18日のFOMC議事録が利上げ観測を後退させるような内容であったことから、さらに1.13台後半に届く水準までユーロ高ドル安が進んだのです。

しかし、これも月末の数日(注目されていたイエレン議長の講演内容が米利上げを期待させるものだった)で一気に反転して結局1.11台半ばという月初と同じ水準で月末を越えました。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

価値の保蔵という通貨の役割に注目するなら、経済の基礎力を表すGDPは大事な指標です。超長期的には物価水準の上昇が通貨を減価させますが、物価上昇と並行しがちなGDP成長率の高い水準は中期的には通貨を増加させるのです。

日本のGDPは低迷していますが、これを押し上げる経済政策以外の意外な作戦が2つあります。

一つは、1億総活躍の旗印の下に進められている配偶者控除の見直しです。もちろん総活躍は正面切った経済として底上げ効果を期待したものですが、それ以外にも計算上の効果があります。いままで家事はGDPに加算されていませんでした。お金が動かないから計算の仕様もありません。しかし、配偶者控除を見直して主婦が外へ働きに出るようになると、疎かになった家事を埋めるべく、お掃除サービスやら家政婦やら育児サービスなどのビジネスが盛んになるでしょう。それはいままでGDPに加算されなかった家事を表に出して加算することを意味します。日本人の総労働量は変わらないの統計上のGDPだけかさ上げされるのです。

二つ目はGDP算出手法の変更です。企業の研究開発効果はいままでGDPの計算対象外でした。しかし、研究すれば技術革新につながり経済を押し上げる効果があるはずだということになって、各国はこれを算入するようになっています。日本はまだ実施していませんが、最近新聞紙上では統計手法の不正確さが議論されるようになっています。僕にはこれが研究開発効果を算入するための世論形成に見えて仕方ありません。これも日本人の総労働量は変わらないのに統計上のGDPだけかさ上げすることになります。しかも数%も。

政府は、「やはりアベノミクスの効果絶大である」とその成果を強調するでしょう。そのうち暴力団の麻薬取引もGDPに加算するようになるかもしれませんね。

 

ユーロドル ・・・

英国のユーロ離脱は皆慌てましたが、「時が傷を癒してくれる」~Time heals all wounds.

All woundsとはいきませんが、それなりになるだろうと市場が思い始めたということではないでしょうか。201671日(6月末現在の記事)にも書いたように、もともとユーロ離脱はさほど不幸なことではないと思っています。一方では先月書いたように、長期的には、マンデル・フレミングの法則に蟷螂の斧を振りかざしているユーロの構造的不備が不安材料として残ります。中期では復活する場面もあるかもしれませんが、超長期では米ドルに対して弱いとみています。

下のグラフは、Euro Statから入手したユーロ円、ユーロドルの相場推移です。各年の平均値なので2016年はまだデータありませんが、ユーロが導入された当初からの長期的推移として参考になると思います。

 

160901

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 2. 石油価格下落に伴う資源国経済の先行き懸念リスク回避による円買い(短・中期)

 3. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 4. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 5. 英国のユーロ離脱投票結果の後遺症

 6. 金融当局による介入姿勢に関する発言など。介入懸念は円安、介入牽制は円高。

 

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 4. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い(2017/3まで延期を決定(20151203ECB理事会))。独など主要国債の利回り、物価景気動向、貿易収支の変化。

 5. 欧州の政治要因:テロ対策や難民対策など、リスク退避先として評価されつつあるユーロに不安。

 

【長期的な材料(数年)】

 1. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 2. 円安による輸出促進効果で貿易収支の改善、経常黒字拡大が再び円高を誘う。

 3. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 4. 英離脱後のEU各国への影響(2017年、主要国の重要選挙予定されている)

 5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 6. ギリシャ問題:2018年に第3次支援終了

 7. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

 

以  上

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