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2017年7月 5日 (水)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年6月末現在)

【米ドル】・・・対円

6月は後半に少し伸びました。

市場の事前の予想は、月央にFRBが市場予想通りの利上げ決定を発表し、ドル買い材料がそこで剥げて円の買い戻しにでるというものでしたが、実際にはそうではありませんでした。

月初110円台後半で始まり、円が買われたのは、FRBの発表後ではなく、その前。前月から引きずっていた政治リスクのうち、コミ―前FBI長官の証言あたりで108円台後半までドルが売られました。その後FRBが予想通りの利上げ(+0.25%)を発表しましたが、同じタイミングでイエレン議長が年内にも資産縮小を開始する旨示唆しました。これが市場には予想外でした。緩和解消の材料が1つはげた後ですぐに別の緩和解消材料が提供された状態となり、円買い戻しに待ったがかかったのです。

FRBは200年のリーマン・ショック後、量的金融緩和で米国債などを大量に買い、資産がそれまでの約5倍(約45千億ドル)にまで膨らんでいます。量的緩和が終了しても、国債の満期ごとに再投資を繰り返してきたため、いまでも資産規模は膨張したままです。いつかこれを止めなければなりませんが、今回、FRBは具体的にその方法まで示して記事前倒しを示唆したのです。

これに対し、日銀は16日の政策決定会合で緩和維持を決定(維持決定は連続6回目)し、日米金融政策スタンスの違いがより明確になりました。一方で円買い材料であった前月までの政治リスクが色あせたこともあり、6月後半はじりじりとドルが買われ、結局、112円台で月末を越えています。

 

【ユーロ】・・・対米ドル

6月はまた一段買われました。

ここ当面の動きでみると、201612月の1.06台を底値にその後毎月1段ずつ買われ、直近の1.14台の水準まで確実に山を登ってきたイメージです。

月初1.12台前半で始まり、その後1.11台まで弱含む場面がありましたが、全体としては買われ、結局1.14台で月を越えました。買われた要因は以下の3つです。

 ギリシャへの支援が合意されたこと

 仏議会選挙でマクロン大統領率いる勢力が議席を伸ばして安定化したこと

 ドラギECB総裁が「デフレはリフレに変わった」と発言したこと

このうち、①について少し説明しましょう。毎年この時期になるとユーロ経済の懸念事項として持ちあがってくるのがギリシャ財政問題です。

ギリシャは財政内容を偽ってユーロ入りした無理がたたり、継続的な財政不安に悩まされていました。ギリシャを受け入れたユーロは全体への影響を恐れ、過去に何度も支援を行ってきましたが、2015年、国民投票の結果が財政緊縮反対となった時点では財政不安がピークに達しました。ユーロ通貨もこのとき、それまでの1.36台から1.07台まで急落しています。あわやギリシャ離脱かという事態にまで発展したところえで、チプラス大統領が譲歩し、第3次支援が合意されました。その後、毎年夏になるときまってこの延長、再開、継続問題がもちあがるようになりました。今年も例外ではありませんでしたが、問題を先送りしつつ、最終的には再開合意したようです。

 

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

市場の注目は政治リスクから金融政策に移りつつあります。6月、利上げ決定後にイエレン議長が資産縮小時期を前倒しするようほのめかしたためです。米国は資産縮小(緩和出口)、ユーロ圏も緩和政策を収束させる動きを示す中、日銀だけが、緩和維持を言い続けているという構図が鮮明になってきました。こうなると、当面は金利に敏感に反応する相場が続く(ドル高円安)と予想せざるを得ません。

これに加えて、本邦の対外投資活発化も円売りドル買いに加勢しているように思います。国債の価格変動リスクが高まった状況を嫌気し、いままで金融機関が大量に抱えていた国債を日銀が買い取るようになると、マイナス金利の環境下でいよいよ運用先を失った金融機関の資金の行き先は、海外しか残っていません。

短・中期的には115円台を目指したドル高展開になるのではないでしょうか。

ただし、米FRBが本当に緩和トンネルを出られるかは米経済動向次第です。物価や雇用はその意味で今後も注目していかなければいけません。先月書いたように、物価はここへきて上昇圧力の息切れが目立ち、この辺りが円高に含みを持たせています。日本企業の海外からの利益送金なども円買い材料です。

 

ユーロドル ・・・

市場はやはりECBの金融政策スタンスの動向に注目しています。

先月書いたように、物価動向などユーロ圏の経済指標は堅調に推移しており、金融緩和政策を縮小(テーパリングと呼ばれている。テーパーはtaperで次第に細くなるという意味の自動詞)する環境は整いつつあるのですが、ECBは市場への悪影響を恐れてなかなか本音を言いません。市場はドラギ総裁の一挙手一党独を細大漏らさず注視しています。

そんなところへ、先月下旬に開催されたECB年次総会で、ドラギ総裁が「デフレはリフレに変わった」と述べたのです(2017628日日経朝刊)。デフレを克服するために金融緩和策を講じ、その効果現れれば適度なインフレとなります。リフレはインフレ兆候ですから、金融緩和策を縮小する環境になってきた事を金融当局が自ら認めた発言となりました。市場はすぐこれに飛びつき、先月は1.14台に乗ったのです。

いよいよ、縮小が現実になれば金利も徐々に上昇して米との金融政策スタンスの違いは薄まりますから中期的なユーロ買いの材料となります。

懸念材料は2018年の第3次ギリシャ支援の期限です。

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. 米経済指標(雇用統計、物価指数など):堅調なら、金利引上げ、積み上がり資産の縮小の環境が整い、ドル買い材料

 2. 北朝鮮情勢やシリア情勢:緊張高まれば、リスク回避先として円買い

 3. トランプ大統領のロシア疑惑の行方:弾劾など不安定になればリスク回避の円高

 4. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 5. IMM(シカゴ投機筋)の円売り持ち高の積み上がり:巻き戻するなら円高。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. 米経済指標(雇用統計、物価指数など):堅調なら、金利引上げ、積み上がり資産の縮小の環境が整い、ドル買い材料

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. トランプ新政権の経済政策。積極策は金利引上げにも通じ、ドル高につながる。

 4. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)、その後の延長の行方:価格軟化は資源国経済に悪影響し、リスク回避の円買い

 5. 第3次ギリシャ支援期限(2018年夏)の再交渉の行方

 6. 欧州各国の重要な選挙動向(10月、ドイツ総選挙)

 

【長期的な材料(数年)】

 1. トランプ大統領の金融・経済政策の具体化の状況とその内容

 2. 欧州各国選挙結果の新政権のEU統合強化策の行方(財政、金融)

 3. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 6. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 7. 北朝鮮、中東の政治リスク:リスク回避は円買い。但し、北朝鮮リスクは日本の当事者なのでいちがいには言えない。

 

以  上

 

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