« 外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年6月末現在) | トップページ | 北朝鮮のICBM開発、国連安保理制裁決議の効果に疑問 立場を逆転できないだろうか »

2017年8月 1日 (火)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年7月末現在)

【米ドル】・・・対円

7月は、6月とは逆に動き、中旬以降下降しました(円高)。

前月のドル堅調の流れを受けて、112円台半ばで始まった米ドルは好調な米雇用統計の結果(非農業部門雇用者増加数予想比大幅増加)を受けて、さらに伸び、10日には114円台前半に乗せました。しかし、その後、下がっては少し戻りを何回か繰り返し、結局110円台前半で月末を越えています。

材料は、ほぼ日米の金融政策スタンスの違いに集約されます。

米FRBは利上げの機会をうかがい、買い取り資産の縮小を視野に入れるなど緩和策から出る方向が明らかであるのに対し、日銀は6度目となる物価目標達成の延期を決めて、緩和を継続する姿勢が明らかです。

したがって、経済指標がこのスタンスを後押しするような形で現れるなら、ドル高円安です。それが7月上旬の形でした。

しかし、米国では物価上昇の兆しが弱く、買い取り資産の縮小こそ年内にも実施されるとの見通されるものの、金利については二の足を踏んでいます。対する日本では「景気」は回復基調を続けているもののやはり物価が伸びないという状況です。いずれも両国の金融政策スタンスを思惑通り進めることの難しさを象徴し、中旬以降は当局のスタンスとは逆の方向でだらだらと流れていく結果となりました。

 

【ユーロ】・・・対米ドル

7月はじりじりと上昇しました。

先月も書いたように、ここ当面は201612月の1.04台を底値に、その後毎月1段ずつ上昇してきました。7月もその続きです。

ユーロ圏の経済は、結構前から堅調に推移しています。ファンダメンタルズを考慮するなら通貨ユーロはそれなりに評価されてしかるべき。それなのに、上値を抑えつけられていたのには2つ理由があります。

1つは、政治リスクです。英国の国民投票でEU離脱が決まってしまった悪夢を欧州各国の選挙で繰り返すのではないかとの懸念が年初にはありました。これがオーストリア、オランダ、フランスとひとつずつつぶされていくに従って、安心感が広がってきたのです。

もうひとつは、ECBの金融政策スタンスです。経済が堅調に推移しているのだから、そろそろ緩和策を出てもいいのではないかと声に対して、ドラギ総裁の発言は徹頭徹尾慎重でした。それが、ここへきて少しずつ打ち出すようになってきました。20ECB理事会後の会見では、テーパリング(徐々に量的緩和策を縮小すること)を検討することを明言し、さらにユーロを押しあげました。月初1.14台前半で始まり、月末には1.18台前半で終えています。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

しばらくは日米金融当局の政策スタンスを反映した動きになるものと思われます。ただ、7月も思惑通りに進まなかったように、そのスタンス推進を許す環境にあるかどうかが相場動向に影響するでしょう。

その意味で物価動向や雇用統計などに引き続き注視すべきなのは言うまでもありませんが、米国の場合はそれを動かす、経済運営もみておく必要がありそうです。雇用が促進され物価も上昇するためには、積極的な経済運営が大事です。この点では、トランプ大統領が公約している、減税や公共投資など経済刺激策がスムーズに実行されるかどうかがポイントです。そもそも、トランプ大統領当選で、それまでの予想に反してドルが買われたのは、その積極政策に期待したからでした。また、7月に米ドルが伸び悩んだのは、政権運営がぎくしゃくしてそれがなかなか進まないからでもあります。ここへきて、就任したばかりの広報部長をわずか10日で解任するなど、混乱は収拾するどころかますます拡大しているようです。米ドルの上値は重いと言わざるを得ません。

また、北朝鮮や対露・対中の政治リスクも大きくなってきました。ちょっと前までは、制裁や軍事行動など対応策がありましたが、いまは先が見えない状況です。ただ、これが有事の円退避と出るか、それとも日本も危ないと見られて円売りと出るかは判断しにくいところです。

 

ユーロドル ・・・

ECBのスタンス舵取りが緩和縮小方向に明確に切られ、具体的にテーパリングの検討段階に入ったことで、市場ではシナリオの組立てが始まりました。

年内に量的緩和の縮小段取りを検討して固め、来年初から夏にかけて実行するというものです。この間、物価などの経済指標がしっかりしていれば、利上げも検討されるでしょう。米国が躊躇しているのに比べて、EUの足取りはしっかりしているようにも見え、リスクがなければ、米ドルに対して引き続き伸ばすのではないかと思います。

リスクは、秋に控えるドイツの選挙と来年夏のギリシャ向け第三次支援期限です。

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. 米経済指標(雇用統計、物価指数など):堅調なら、金利引上げ、積み上がり資産の縮小の環境が整い、ドル買い材料

 2. 北朝鮮情勢やシリア情勢:緊張高まれば、リスク回避先として円買い、もしくは日本への不安からくる円売り。

 3. トランプ大統領のロシア疑惑の行方:弾劾など不安定になればリスク回避の円高

 4. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 5. IMM(シカゴ投機筋)の円売り持ち高の積み上がり:巻き戻するなら円高。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. 米経済指標(雇用統計、物価指数など):堅調なら、金利引上げ、積み上がり資産の縮小の環境が整い、ドル買い材料

 2. トランプ政権の運営状況:混乱続けば、経済政策進まず、利上げ機会も遠のく。

 3. トランプ新政権の経済政策。積極策は金利引上げにも通じ、ドル高につながる。

 4. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)、その後の延長の行方:価格軟化は資源国経済に悪影響し、リスク回避の円買い

 5. 英のEU離脱交渉の行方

 6. 第3次ギリシャ支援期限(2018年夏)の再交渉の行方

 

【長期的な材料(数年)】

 1. トランプ大統領の金融・経済政策の具体化の状況とその内容

 2. ギリシャ問題:2018年に第3次支援終了

 3. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 6. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 7. 北朝鮮、中東の政治リスク:リスク回避は円買い。但し、北朝鮮リスクは日本の当事者なのでいちがいには言えない。

 

|

« 外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年6月末現在) | トップページ | 北朝鮮のICBM開発、国連安保理制裁決議の効果に疑問 立場を逆転できないだろうか »

外国為替相場の動向と変動要因分析」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/548369/65609116

この記事へのトラックバック一覧です: 外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年7月末現在):

« 外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年6月末現在) | トップページ | 北朝鮮のICBM開発、国連安保理制裁決議の効果に疑問 立場を逆転できないだろうか »