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2017年9月 5日 (火)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年8月末現在)

【米ドル】・・・対円

8月は、箱型相場でした。

しゃにむり日本語にしましたが、所謂ボックス相場といことです。北朝鮮のICBM発射で108円台前半まで下落したほかは、概ね110円台半ばから109円台後半の間を往ったり来たりする相場でした。

ボックス相場ですから、上げ下げ両要素が絡み合ったということになりますが、上げ(ドル買い)要素は、ずっと話題にのぼっている日米金融政策スタンスの明確な違いです。日銀は緩和スタンスを変更しないと言い続けている一方、米FRBは、年内の再利上げこそ微妙になってきているものの、買い取り資産の縮小を今月にも決定すると見られていることから日米のスタンスの違いははっきりしています。中期的には引き締め通貨は買われるとの理屈から、ドル買いの要因になります。

それに対して、ドル売りの要因は、米FRBの再利上げは指標次第とされている中、このところインフレ指標が落ちていることです。また、北朝鮮問題もリスク退避先である円買い要因となっています。

結局、110円近辺で月末を越えました。なお、高値は月初の良好な雇用統計によるものでした。

 

【ユーロ】・・・対米ドル

8月はまた引き続き上昇しました。

中期的には、201612月を底に、毎月目に見えてユーロが買われています。

月初は1.18台半ばで始まりました。その後、欧州中央銀行ECB理事会議事録に、ユーロ高を懸念するむきがあったことから、月央に1.16台まで弱含む場面がありました。しかし後半は、好調なユーロ圏経済の各指標から、金融緩和を徐々に(テーパリング)脱する方針が間違いなく貫かれるだろうとの期待感にじりじりと上昇し、一時20151月以来の1.20台をつけました。

ユーロ圏経済は、GDP成長率や失業率低下はこのところずっと続いていますし、長い間金融緩和出口を危ぶむ材料となってきたインフレ率も伸びている状況です。

相場は結局1.19の前半で月末を越えました。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

当面は、以下の上げ下げ要因が相半ばするものと思われます。事態の進展や報道のタイミングによっては乱高下する可能性がありますが、相反要因が相半ばするなかではやはりボックス相場が続きそうです。

・米米金融スタンス

日銀の緩和スタンスは当面変化しないでしょうから、注目するのは米国です。特に9月19~20日はFOMCが開催されます。焦点は資産買い取り規模の縮小を決定するかどうか。市場は決定すると見ていますので、これが外れるとドル売りです。

・米予算案と債務上限引き上げ承認動向

米再利上げなどの金融スタンは基本的に、指標を見ながら判断するというのがFOMCメンバーの考えですが、その指標に影響を与えそうなのがこの要因です。トランプ氏の議会運営が混乱している中、予算が承認されないと政策が執行できずに停滞し、経済にも悪影響を及びかねません。また、例年問題となる債務上限の引き上げも認められないということがあれば、同様に行政が止まり、金融緩和から出ることが困難になる。困難になると日米スタンスの開きが縮まってドル売りとなります。

・北朝鮮リスク

いわゆる知政学リスクが高まると、リスク回避先の円に資金が逃げ込む為、円が買われるというのが影響の仕方ですが、中東のリスクと北朝鮮のリスクでは事情が異なるはず。北朝鮮は日本も巻き込まれる可能性があるため、円に逃げ込むより円から逃げるインセンティブが働くだろうという予想です。しかし、実はこれも微妙です。数年前、東日本大震災では日本が当事者であるにも関わらず、円が一時高騰しました。保険金支払い準備の為に海外投資資金を国内に還流されるだろうとの思惑が働いたためです。

以上は、短中期の要因ですが、展開の仕方によっては長期要因にもつながるかもしれません。特に政治リスクは転び方によってその後の体制を大きく変えてしまう可能性があり、その時には長期シナリオも大きく書き換えなければならなくなるでしょう。その意味ではトランプ政権の行方も気になります。

 

ユーロドル ・・・

上記のように201612月を底に毎月上昇し続け、中期的な相場動向の傾向がはっきりしています。上昇を裏付ける経済の基礎力はユーロ通貨の信用力を支えていますが、相次ぐ各国の選挙の動向が右傾化リスクをはらみ、これが上値を重たくする要因になっていました。それが1つずつ安堵する形で片が付いたおかげで上値を押さえていた重しが外れたという流れになっているような気がします。話題にのぼる選挙の最後であるドイツ(924日)も一時低迷したメルケル氏の支持率が盛り返しており、市場もこれを懸念していません。当面はユーロ強含みという方向は変わらないと思います。

もちろん、中長期的なリスクはあります。経済ではユーロドル相場はあくまでドルとの相対比較で決まることから、米政権が思いのほか安定して経済積極政策が効き、FRBのスタンスが一気に引き締めに向かうなら、それがユーロの重しになる可能性があります。長期では英国の離脱交渉の行方とその影響、移民政策の影響などです。特に移民政策は将来、移民二世の不満がユーロ社会の根幹を揺るがしかねません。そうなると、地位を脅かされそうな中間層に再び右傾化思想が広がっていく可能性があります。

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. 米予算案・債務上限引上げの議会承認可否 :円滑に承認されれば経済積極先に期待集まりドル買い

 2. 北朝鮮情勢:さらに緊張高まれば、リスク回避先として短期i円買い、もしくは日本への不安からくる中期円売り。

 3. 米経済指標(雇用統計、物価指数など):堅調なら、金利引上げ、積み上がり資産の縮小の環境が整い、ドル買い材料

 4. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 5. 20179月の米FOMC :資産買い入れ規模の縮小が予想通り決定されるか否かされなければ期待外れのドル売り

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. 米経済指標(雇用統計、物価指数など):堅調なら、金利引上げ、積み上がり資産の縮小の環境が整い、ドル買い材料

 2. トランプ政権の運営状況 :混乱続けば、経済政策進まず、利上げ機会も遠のく。円滑なら経済説教先が執行されドル買い要因に。

 3. 北朝鮮情勢:さらに緊張高まれば、リスク回避先として短期i円買い、もしくは日本への不安からくる中期円売り。

 4. 英のEU離脱交渉の行方

 5. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)、その後の延長の行方:価格軟化は資源国経済に悪影響し、リスク回避の円買い

 

【長期的な材料(数年)】

 1. トランプ大統領の金融・経済政策の具体化の状況とその内容

 2. ギリシャ問題:2018年に第3次支援終了

 3. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 6. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 7. ユーロ圏移民政策の将来の影響 :移民二世の不満などがユーロ社会を不安定にさせるならユーロ通貨の信用力に影響。

 

以  上

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