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2017年10月

2017年10月 2日 (月)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年9月末現在)

【米ドル】・・・対円

9月は円安になりました。

月初、110円台前半で始まったドル円相場は、しょっぱなに発表された米国雇用統計のぱっとしない数字に米FRBの緩和出口策への不安が市場に広がり、その後の1週間で107円台後半まで弱含みました。9月の米FOMCでは、年内での量的緩和を収束させて買入資産を圧縮するよう決定されるというのが半ば既定路線になっていますが、このところ不安定な物価動向もこの規定路線に不安をもたらしています。

ところが、21日に開催されたFOMCでは、規定路線であった量的緩和の収束を決めたばかりは、それはないだろうと思われていた年内の利上げにまで踏み込む発言があり、112円台半ばまで上昇しました。一時は113円台前半もつけました。

FOMCの内容は下記のとおりです。

 2008年危機後の量的緩和政策を完全に終結し、保有資産の段階的縮小開始を決定

 6月に続く利上見送り、FF誘導目標は年1.001.25%据置いたが、同時に公表した金融政策見通しでは、会合参加者の多くが年内1回の追加利上げを予想

市場は12月の会合で再び利上げに踏み切るとの観測が強まり、その結果、ドルが買われたのです。9月はそのまま112円台半ばで月末を越しました。

円が売られた要因はもう一つあります。それは、消費税の使途修正です。衆議院が解散され、解散によって信任を問う内容の柱に10%への引き上げが予定されている消費税の使い道を一部修正して教育に充てる方針が持ち出されました。これにより、2020年までの基礎的収支均衡の目標達成が一層困難になり、財政悪化が円への信頼を失わせたのです。さらにそれに輪をかけ、野党も引上げを当面凍結するなどの選挙公約を上げる様子。選挙で与党が政権を維持しても、仮に野党が政権を取るようなことになっても、いずれの場合も国家財政を悪化させる方向であるということなのですから。これは9月の相場変動要因としてだけでなく、長期的な円相場の方向感を修正せざるを得ません。

なお、21日に開催された日本銀行の政策決定会合では、短期金利▲0.1%、長期金利ゼロ%程度に誘導する長短金利操作の現状維持を決めています。

 

【ユーロ】・・・対米ドル

9月でピークを越えたようです。

前半は強かったユーロが後半は弱含んだというのが9月のまとめです。

前半の強かった原因は、ECB(欧州中央銀行)の理事会の動きです。7日理事会では、今の金融政策を維持したものの、10月の理事会では資産買い入れ策に言及し、具体的にテーパリング(資産買い入れによる量的緩和策を徐々に縮小すること)に触れたことで、間枠の出口がいよいよ現実のものとなり、ユーロ圏経済も安定して堅調に推移していることから、対外金利相対水準と経済ファンダメンタルズの両方からユーロ買いを誘った形です。

ところが、後半にはこれに水を指す材料が2つ出されました。

1つは、米FOMCです。【米ドル】でも述べたように、既定路線であった買入資産の年内縮小に加え、市場が予想していなかった年内利上げ観測もだされたことから、これまで円を除く主要通貨に対して弱かった米ドルが強さを取り戻しました。これまで買われてきたユーロを売るポジション調整が進んだのです。

他の一つは、独選挙結果などユーロ圏政治要因です。924日に行われた独連議会選挙では与党は第一党の地位を確保したものの、移民政策などの異を唱える勢力が存在感を示し、連立教義の難航も予想されています。ユーロ圏をまとめる筆頭である独の基盤が弱くなるとユーロそのものへの信頼も揺らぎ、売りにつながったのです。

結局、前半に1.20台前半まで買われたユーロは、後半に1.17台半ばまで弱含み、1.18台前半で月末を越えました。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

当面の主な判断材料は下記のとおりです。

a. 米、年内利上げ可能性と来年の利上げ速度

b. 本邦、財政再建をめぐる選挙、及び選挙の政策決定

c. 北朝鮮などの政治リスク

d. 経常収支と対外投資の動向

まず、米国の年内利上げの可能性は9月のFOMCから想定を超える形で浮き彫りになった議論の動向です。物価や雇用がさえないなか、買入資産の縮小は既定路線通り実行しても利上げまではないだろうとしていた市場の期待を裏切っています。所謂ハト派といわれているFRBイエレン議長の任期切れで後任は利上げに積極的になる可能性があるというのも、付随材用です。これらが当面の米ドル押し上げ要因になります。

本邦の財政再建をめぐる議論もここ数週間で出た材料です。積極的な経済政策への期待がある一方で財政は大きな問題です。政権が思っているほど、世界の目は甘くないのではないでしょうか。現に日本国債の長期格付けは低迷したままでこれに慣れっこになってしまっています。円安要因になります。ただ、これは長期的な材料として捉えておく必要があります。

長期的材料としては、経常収支と対台投資の動向にも注意しておく必要があります。貿易は新興国経済に依存しつつあまり大きな期待はできず、対外投資は国内のカネ余り現状を反映してとても活発です。当面は短中期では円安要因となり、長期では経常収支黒字を支えて円高要因になります。

以上から、短中期では、ドル高円安、中長期では財政要因と経常収支要因のせめぎ合いの中、どちらとも言い難い状況と言えます。

 

ユーロドル ・・・

ユーロは9月の1.20台を以って、当面のピークを越えたとく見方が市場に出ています。ここまで主要通貨(円を除く)に対して弱かった米ドルが利上げ可能性を機に強みを発揮し始めていることで、ユーロを買い進めていた向きがポジションを調整しつつある、つまり溜まった買いを売り始めたという見方です。

そこには、ユーロ圏経済の基礎力は底堅く、堅調に推移しているものの、それを背景した緩和策の収束はもう市場に織り込まれているという判断があります。

長期的材料としては、政治に目を向けておく必要があります。ここ1年近く、2016年暮から2017年の独連邦議会選挙までの一連の主要国選挙に焦点が集まっていました。どの選挙においても、移民に不寛容な極右勢力が政権を握るのではないかとの不安があり、それがユーロ通貨を抑えていました。しかし、選挙結果は、いずれも現政権を維持するものとなり、不安がひとつずつつ片付いていくに従って、ユーロには不安解消の買いが入ったのです。このことが、金融管措置収束という材料に加えてユーロ高に寄与してきたことは明らかです。

しかし、直近の独連邦議会選挙では移民に不寛容な勢力が存在感を示したことに注目されました。この点は、実は他の選挙でも同じように言えることだったのではないでしょうか。仏や蘭、オーストリアでも極右が票を伸ばし、一定の勢力を確保しています。

極右とか極左とか両方の言われ方がされますが、その主張するところは移民を排除し、労働者階級を含む自分たちの生活を一番に考えようという民族主義的な一面です。極右と極左はこの点を共有していると言えます。反グローバリズムはユーロ圏の結束を不安定にするでしょう。通貨統合に続く、銀行検査の統一や財政統合など現在進めようとしている各政策は円滑にすすまなくなると考えられます。これらの政策はユーロ通貨の信頼を強める効果があるはずでしたから、結果としてユーロ売りにつながると予想できます。

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. 米経済指標(雇用統計、物価指数など):堅調なら、金利引上げ、積み上がり資産の縮小の環境が整い、ドル買い材料

 2. 北朝鮮情勢:さらに緊張高まれば、リスク回避先として短期i円買い、もしくは日本への不安からくる中期円売り。

 3. 消費税の使途修正や引上げ可否の論議など財政悪化から円通貨への信用を損なう

 4. 欧州政治の不安定化:スペインカタルーニア独立運動の動向ユーロ圏不安からユーロ売り要因

 5. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. 米経済指標(雇用統計、物価指数など):堅調なら、金利引上げ、積み上がり資産の縮小の環境が整い、ドル買い材料

 2. 北朝鮮情勢:さらに緊張高まれば、リスク回避先として短期i円買い、もしくは日本への不安からくる中期円売り。

 3. トランプ政権の運営状況 :混乱続けば、経済政策進まず、利上げ機会も遠のく。円滑なら経済説教先が執行されドル買い要因に。

 4. 英のEU離脱交渉の行方

 5. 欧州政治の不安定化:スペインカタルーニア独立運動や、一連の欧州主要国の選挙結果で極右・極左勢力が存在を示し始めていることなどユーロ圏不安からユーロ売り要

 

【長期的な材料(数年)】

 1. トランプ大統領の金融・経済政策の具体化の状況とその内容

 2. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 3. 消費税の使途修正や引上げ可否の論議など財政悪化から円通貨への信用を損なう

 4. 2016暮~2017年独選挙まで、一連の欧州主要国選挙の結果は、政権こそ維持されたものの、極右・極左勢力が存在を示す結果となった長期的にはユーロ経済運営に悪影響

 5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 6. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 7. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 8. ユーロ圏移民政策の将来の影響 :移民二世の不満などがユーロ社会を不安定にさせるならユーロ通貨の信用力に影響。

 

 

以  上

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