「マネジメント」(ドラッカー)のサブノート

2013年6月 9日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第61章(全61章)

61. 革新的な組織

(1) イノベーションを実現できる組織の必要性

 マネジメント関連の書籍は必ず、革新性を発揮する必要性に触れているが、その為には経営陣と組織はどうあるべきかとの点にはほとんど注意を払っていない。

 19世紀に革命的な思想が起こったり、多くの発明がなされたが、その後は社会、技術ともに大きな変化はない。しかし今再びイノベーションが求められている。

 しかしその形は、19世紀と同じではない。

a. 社会で一番深刻な危機は組織の危機である。解決には組織のイノベーションが欠かせない。

b. 企業の仕組み、組織、知識などを仕事に活かす手法、仕事から成果を生み出す手法等もまたイノベーションを必要としている。

(2) 革新的な企業 :革新性に溢れる組織には以下のような共通項がある

 イノベーションの意味を心得ている

 イノベーションの力学を理解している

 イノベーション戦略を持っている

 イノベーションを実現するためには、既存のマネジメント組織とは異なる、イノベーションの力学にふさわしい目標や評価尺度が求められることを理解している

 マネジメント層、とりわけ経営層は、イノベーションを推進する組織においては通常と異なる発想をし、異なる役割を担う

 イノベーションを担う組織は、既存のマネジメント組織とは異なる体制を持つ

以下、順番に説明する。

(3) イノベーションの意味

 イノベーションは科学でも技術でもなく価値そのものである。

 その真価は、環境にどれだけ影響を及ぼすかで決まる(社内ではなく社外の変化)。

a. このため、企業によるイノベーションは市場に重点を置いて進めなくてはいけない。製品ばかりに気を取られていては、技術は生れるが業績には寄与しない。

b. 大きな変化を求める消費者や顧客のニーズから出発するのが近道である。

(4) イノベーションの力学

 イノベーション成果は確率分布する。

 そのため、以下のようにして可能性の確立の高い分野を見つけ出す必要がある。

a. プロセス、技術、流通チャネル、顧客の期待などが抱える経済面での根本的な弱さに着目すると良い。需要が増えているのにそれを収益につなげられずにいる場合は、これらを変化させるイノベーションを成し遂げれば大きな見返りが得られる。

b. 既に起きた事のうち、未だ経済上の効果が生じていないものにチャンスがある。この場合に重要でかつ予測しやすいのが人口構成変化だ。予測困難だが、(社会の)意識、ビジョン、期待などの変化も重要だ。

 確率分布ではなく、型破りなイノベーションも存在し、しかもそれは世界を変えるほど重大だが、それは予測不能でマネジメントも不可能であるから例外として扱うべきだ。

(5) イノベーションを実現するための戦略

 時代遅れな分野から計画的に撤退する

a. 撤退しない限り、新分野に投入する経営資源、なかでも希少な人材を確保できない

b. 既存事業の規模や収入の大きさから比べると新しいものは重要でないように見えてしまうからこそ、過去のしがらみを断ち切ることが重要になる

 高いイノベーション目標を掲げる

a. 現状を改善する程度のものは、成功の確率が50%ほどだと考えられる。しかしイノベーションとなると大半は失敗hし、成功確率は10%程度である。

b. だから、90%の失敗を埋め合わせる必要があり、そのためには高い目標を持たせなくてはいけないのだ。

(6) 評価尺度と予算

 イノベーション案件には、既存事業の評価尺度、会計手法を適用してはいけない。

a. イノベーションにかかる費用を既存事業の予算からはずして別枠とするほか、投資収益率(ROI)等既存事業の評価尺度の対象外とする。

b. これにより、利益や業績が圧迫されるとの反発も避けられる。

 既存事業とは異なる扱いが必要である。

a. 既存事業では、その取組みの要不要を自問し、必要だと判断すれば最低限の後押しを考える。

b. イノベーションでは、追求すべき事業機会であると判断すれば、最大限どれだけの人材と経営資源を投じる事が可能かを考えなくてはいけない。

 既存事業とは異なる評価体系を取り入れることで、下記を見極めることができる

a. 最大限どれだけの事業機会が秘められているか

b. 失敗のリスクはどの程度か

c. 必要な努力と支出はどれくらいか

 失敗のリスクより、成功の一歩手前をさまようリスクがやっかいだ

a. イノベーション案件のかなりは、革命的な期待をされながらも、既存のちょっとした付け足しにとどまる。完全な失敗ではないので、断念できない。

b. だから、何を成果として期待するかをよく考えて書き留めておくべきだ。案件の成果と比べ、期待に及ばないなら撤退とその方法を自問すべきだ。

(7) イノベーションに適した発想

 変化が例外ではなく日常の一部を成し、脅威ではなく機会と受け止められるような組織を築く必要がある。

 教科書にある、従来型の組織では、マネジメント層は、提案に対して「ノー」をつきつける、拒否権という最終判断を担うとされたが、イノベーション組織ではこれと逆だ。

a. 経営層は、実現性の低いアイディアにも耳を傾け、実現させる方法を見出すべきだ

b. また、アイディアをもとにビジョンを描き、組織全体の目を向けさせる推進役にならなければならない

c. そのため、社内各組織の若手と会い、膝を交えるべきだ

(8) イノベーションにふさわしい組織

 イノベーションには原則として、従来の組織から独立させ、高い自律性を与えたチーム組織がふさわしい。

 また、起業家とパートナーを組み、独立会社を設けて取り組む方法も良い。

 上記のような社内の組織、独立会社のいずれの場合も、イノベーションの探求は既存事業とは別立ての組織に担わせる必要がある。既存事業を動かしながら、同時に新たな分野を切り開くわけにはいかない。

 

 

 むすび マネジメントの正統性

(1) マネジメント・ブームは終わり、マネジメント成果が問われる時代になった。

 20世紀社会は組織を柱としている。また、20世紀は知識社会への移行も進んできた。

 マネジメントはこの2つの潮流の結果である。組織が機能し使命を果たすにはマネジメントが必要だ。

 マネジメントの単なるブームは終わり、成果が問われる。社会と経済、コミュニティ、個人の為に成果をあげられるよう、組織を導いていく務めを担うのがマネジメントだ。

(2) その為には、マネジメントの技能(テノククラシー)だけでは不十分だ。

 ブームとしてのマネジメントは、マネジメント技能に焦点を当て、組織、モチベーション、財務等のコントロール手段、マネジメント科学、マネジャー育成など、主として内向きのものを捉えた。それは正しくもあったが、それだけでは不十分だ。

 マネジャーの第一の務めは与えられた使命に沿って組織をマネジメントすること。最優先は経済活動の推進である。同時に、高い生産性を引き出し、働き手に達成感を得さえ、世の中全体と各人の性格の質を高めるという勤めもある。これはテクノクラートの領分を越えたものだ。

(3) そして、正しいと認められる、正統性を持たなくてはいけない。

 血筋、魔術、人気投票や選挙、財産などを後ろ盾にしたものを正統性のよりどころとするのは適切ではない。

 よりどころとなるのは成果だけである。

 また、マネジャーが正統な権限を認められるには、徳の高さが欠かせない。マネジメントを存続させるには、組織の目的と特徴、ひいては本質が、道徳原則に根ざしていなくてはいけない。

 組織の道義的責任、すなわち人々の強みを引き出し、達成感をもたらすことを自分の責務として引き受ける必要があるのだ。

 

 

 

 

以   上

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2013年2月12日 (火)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第60章(全61章)

60.   成長のマネジメント

(1)   成長は痛みを伴う

  組織の成長は緊張や痛みを伴い、ある時点で自己変革が求められる。

  IBMは、そのいい例である。

a.  1950年頃のIBMは中堅企業だった。

b.  コンピューターが誕生して成長のチャンスが訪れた時、創業者CEOのワトソンは、主力のパンチカード事業の足を引っ張ることを恐れ、二の足を踏んだ。

c.   ワトソンはこれを変えようとはしなかったが、司法省反トラスト局による「パンチカード事業を独占」の告発をきっかけに、退任させられ、新たな経営体制となったことで、このチャンスを掴み、コンピューター業界のリーディング企業へ躍進した。

(2)   成長の必要性

  高成長企業は遠からず深刻な危機に直面する。

a.  1950年代、経済界は成長信仰が起こり、多くの企業が成長神話の虜になった。

b.  しかし、多くの企業が謳う10%の成長を遂げたら、たちまち経営資源を食いつくす。

c.   長期にわたって高成長を続けるのは、むしろ不健全で、適切なマネジメントが不可能になり、わずかな失敗が危機につながる。

  成長産業もyはり危ない。

a.  成長産業では新しい経済活動を大がかりに繰り広げる余地が大きいので、参入企業はおしなべて業績が良い。

b.  そこへ多くの企業が殺到し、ほどなく、競争が激化し、淘汰が進む。

  従って、成長そのものをゴールと見なすのは誤り(規模の拡大そのものには意味がない)、よりよい企業を目指すべきだ。健全な成長は、正しい行いをした結果であるはず。成長事態を目指そうというのは虚栄心の表れでしかない。

(3)   公的機関の成長

  公的機関は、予算が重視されており、大勢の人材と多額の予算を確保することが大きな成果と見なされている為(12章)、成長熱にうなされている。

  しかし、忙しくしてさえいれば成果があがっていると思い込む傾向を反省し、トップ層を組織化して、組織の複雑化に注意を払い、成長をマネジメントしなければならない(13.14章)。

(4)   生き残るための成長

  成長信仰は終わったが、これからも企業は成長を目標にせざるを得ない。経済成長が止まると、成長できない業界や企業は衰退するほかない。このようなときこそ、生き残るため、成長プランを立て、マネジメンとするための戦略が求められる。

  とはいえ、今後は成長の中身が異なってくる可能性がある。

a.  成長の軸が製造業から知識産業に移行する。

b.  環境を守る必要性も高まる。

(5)   成長目標の必要性~経営層は次のような成長目標を持たなくてはならない。

  最低限でもどの程度の成長が必要かを検討しなくてはいけない。

a.  企業が生き残り成長するためには、市場で相応の地位を占めなければならない。

ž 市場が拡大しているなら、共に成長するため、必要最低限の成長率は高い。

b.  規模ではなく、経済成果の尺度を持つ。(経済や社会への貢献度、経営資源の生産性、収益性など)

  最適な成長率を見極めなくてはいけない。

a.  経営資源の投入はリスクを伴う。

ž リスクを高めずに利益率を向上させる水準、リスク逓減させて生産性を押し下げ、市場での地位が危うくなる水準を見極める必要がある。

b.  企業の成長目標は最大値ではなく、上記の最適値を上限とすべきだ。

ž 最適値を上回るのは好ましくない。最適値を超えて成長すると、生産性を下げてまでも市場シェアを拡大させることになり、これは不健全だ。

(6)   成長に備える必要性 ~チャンスが訪れたときのために次のような備えが必要。

  たゆまぬ学習を重んじる風土を醸成しなくてはいけない。(会社の成長は人材の成長と切り離せない)

  資金計画。(緩やかに成長しただけでも、すぐ従来の財務基盤では不十分になる)

(7)   成長をコントロールするのは経営層である ~経営層は、成長に備えて次のステップを含む必要がある。

  経営チームを育成する

a.  中小企業が成長を目指す場合、いずれワンマン経営は通用しなくなるので、それに備えて経営チームを設けておく。

b.  重要活動の中には、トップが不得手とするものをあるから、適材に任せる。

  兆候を察知する

a.  変革の時期が来ても、トップは必ず理由をつけて先送りしようとするが、

b.  基本方針、組織、行動様式等を改める必要が生じているかをいち早く察知して、着手しなければならない。

  変革を望む自分の本心をたしかめる

a.  最低限の成長さえ実現できていれば、それ以上に大きくなろうともがく必要はない。

b.  会社にまちがいなく成長力が備わっているか考え抜く必要がある。

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2013年1月13日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第59章(全61章)

59.   多国籍企業

(1)   多国籍企業に関する誤った理解
多国籍企業の誕生は、第二次大戦後の特筆すべき社会革新である。また、大戦後の世界では、経済と国家主権の分離が際立っているが、多国籍企業はその象徴でもあり、原因と結果の両方を兼ねている。多国籍企業に関しては、以下のような誤った理解がある。

  多国籍企業はかつてない、革新的な組織であるとの理解

a.  しかし、実際には19世紀からあった、動きを復古的に映し出したものである。

b.  例 :シーメンス(1850年代)、ユニ・リーバやロイヤル・ダッチ・シェル(1920年代)

  多国籍企業はアメリカが発祥のちであるとの理解

a.  確かに1950年代のブームは米国企業主導であった。

b.  しかし、より重要なのは、欧州諸国の経済政策だった。共同市場があったにもかかわらず各国は自国企業の多国籍化に後ろ向きだったため、米国企業がこの共同市場のチャンスを掴もうとしたのだ。

  多国籍企業は大企業の専売特許だとの理解

a.  しかし、現実には企業規模の大小はまちまちである。

b.  例 :わずか従業員50人で多国籍化して成長したスイスの精密機械メーカーがある。また、小さなニッチ分野のリーダーとして特殊だか需要の多い技術を持つ企業や、リサーチ業務に特化した小ぶりな組織などの例もある。

  多国籍化の主体はメーカーだとの誤った認識

a.  最も成長が著しいのは金融業である。

b.  コンサルティング企業、会計事務所、広告代理店なども多国籍化が進んでいる。

  多国籍化の理由は、保護主義に対抗する(輸出が妨げられている為、相手国にじかに進出)ためであるとの説明も誤りである。

(2)   世界市場
世界市場の出現が、多国籍企業増加の背景。世界市場は以下のようにして出現した。

  大戦後、欧州や日本が経済復興すれば、それぞれ異なる需要パターンを示すだろうとの見方が一般的であった。

  しかし、米国ではじめに「移動性の高まり」や「情報の増加」が起こると、世界中にそれが広がった。

a.  移動性やパワー(つまり自動車)がもたらす満足に対する大きな需要が広がった。

b.  情報の増加(映画、ラジオ、テレビなどのメディア)を土台として、医療や教育需要、ささやかな贅沢へのあこがれから起こる需要が世界に広がった。

  世界に共通するこれ等の動きで、企業は世界経済の中に身を置いているという意識のもとで経営していかなくてはならなくなった。

(3)   統合役としての世界市場

  市場は、「経営資源」を「生産要素」へと変える役割を果たす。

a.  比較生産費説では、各国は生産要素のコスト面で比較優位性を持ち、各国がそれぞれ得意な物を生産すれば、資源が最適活用されるとされた(アダム・スミスはイギリスの毛織物とポルトガルのワインで説明)。

b.  つまり、この理論では各国は生産要素を統合する市場と位置付けられる。(財は国家間を移動するが、生産要素は国外には出ない)

c.   ところが、世界経済が統合の役割を果たし、生産はもはや一国に閉じた活動ではなく、生産要素が各国間を移動し、貿易によって生産要素の取引も行われている。

  「多国籍」より「超国籍」と言った方がいい。

a.  国境を越えて生産要素が移動するということは、共通の需要、価値観で結ばれた単一市場が存在するということ。

b.  だから、多国籍企業のあり方は、生産要素から解明するのではなく、需要から解き明かすべきだ。

(4)   経済と国家主権の分離

  17世紀に、「国民経済」という概念が生れ、政治主権は政治や軍事だけでなく、経済競争も繰り広げるものだと考えられるようになった。

  第二次世界大戦後は、世界経済が国民国家を足し合わせただけの状態から脱皮して、自律性を持ち始めた。

a.  自国の経済が他国から完全に独立できず、外から影響を受け、政治主権の自由まで制限される。各国は300年もの間、外からの圧力を最小限に抑えようとしてきた。

b.  経済面で世界市場が生れても、国家間は互いに独立し両者の分離が進んでいる。

  従って、多国籍企業をマネジメントするには、政治や文化の多様性をどのようにまとめあげることが焦点となる。

(5)   戦略上の課題

  全体戦略と地域別戦略の両方がもとめられる。

a.  内部の結束を保ちながら、国籍や民族に関わらず公平に扱い、多数の政治体制と良好な関係を築かなければならない。

b.  各(地域)市場を自律的事業として個別に戦略を立てるのでは成果はおぼつかないが、個別の事情を無視して全社的判断だけの戦略も困る。

  各地域(市場)に一貫性が必須である。

a.  多国籍企業の戦略は複雑化が避けられない。それだけに一貫性が求められる。

b.  実際、好調な多国籍企業は、単一市場か単一製品がどちらかである。

(6)   経営チーム

  多国籍企業は、事業戦略と同じ数だけ経営チームを設ける必要がある。(本社経営チーの他に、地域、製品ラインごとに経営チームを設ける)

  本社経営トップは子会社の経営トップを兼ねてはいけない。

(7)   故郷の必要性

a.  機会の均等を約束しない企業には優秀な若手は入社しない。

b.  従って、事業内容が何であろうと、本社、子会社、関連会社の高いポストを自国の出身者だけで固めてはいけない。

(8)   報酬制度

  下記のような問題への正解は不明なままである(いまだに成功例を見出せない)。

a.  地位が同じなら、国に関わらず同水準の報酬をしはらうべきか

b.  本社から子会社へ派遣された場合、現地の水準に沿った報酬額にすべきか

(9)   多国籍企業と外部環境

  多国籍企業には、進出先と母国の両方から、下記のような批判にさらされる。

a.  その国の経済、社会、財政政策に無頓着で、国家主権や政府の利益を害したり、政策を左右する。

  このような批判に対しては、個別企業単位で考えても限界がある。

a.  多国籍企業は、国境にとらわれずに市場ごとに経営資源の最適化を図らなければならない。

b.  だから、いくら企業が一国の政府を脅かす力を持つはずはないといえども、その国の雇用、賃金水準、輸出入、国際収支に影響を及ぼし、経済状況や経済政策と無縁ではいられない。

  このような緊張関係に対処するためには、新しい国際法がぜひ必要である。

a.  どのような条件のもとで各国が多国籍企業を受け入れるか

b.  多国籍企業の所有権、利益の本国送金や資本金の返済、子会社間での財、人材、資本の移動の自由にどのような制限を設けるか。

c.   多国籍企業は、この国際法の範囲を超えて、本国政府の政治力を自社のために利用しようとしてはいけない。

(10) 多国籍企業と発展途上国

  多国籍企業は発展途上国に貢献しているが、同時に問題も発生させている。(両面性)

a.  貢献 :多国籍企業は発展途上国が必要としているものを提供している。 

・  資本やテクノロジー、産業・経営・企業などに関わるスキル

b.  問題 :

・  資本が流入すればするほど、それに対応して多くの外貨を使い、国際収支問題をを抱えるようになる。

・  国の独自性が損なわれるリスクにさらされる。(強大な経済力に圧倒され、それに依存したり無力感に襲われたりする)

・  優秀な人材が多国籍企業で働くことで、その本国の上司に仕え、愛国心が問われるとともに、一種の「頭脳の流出」にもつながる。

  この両面性は、アンデス条約に対する対応の違いにも見る事が出来る。

a.  アンデス条約とは、多国籍企業に対し制約をかけるもの。(参入分野の制限や親会社の出資比率制限)

b.  チリやペルーがさらに厳しい規定を求め事実上多国籍企業を締め出そうとしたのに対し、ベネズエラは署名を拒否し、コロンビアは遵守意思ないことを宣言した。

c.   チリやペルーへ進出した多国籍企業は、経営層を外国人で占めたが、コロンビアでは現地人に経営を任せ、ベネズエラでは国内の閉鎖性を打破するために多国籍企業を利用したいとの積極的理由があった。

  これを解決するため、経営層が自分の責任で発展途上国と良好な関係を築くべきだ。

a.  外貨資産を圧迫するような事業や保護を必要としている事業には参入を控える。

・  輸入代替だけを目的に進出すると、原材料や機械等の輸入を促し、逆効果

・  政府からの保護を頼りに進出し、高い関税障壁のおかげで利益を出したが、本国への利益送金が認められないケースがある

b.  資本や所有権はいずれ現地に解放したり、資本は現地の自力で出させ、多国籍企業は技術やマネジメント力、親企業の市場を提供するなどの方法で行う。

(11) 多国籍企業のこれから
多国籍企業は現在過渡期にある。政治環境とのこれからの関係については;

  進出先としては、多国籍企業に頼ったり、市は理されたりせずに、経済面で緊密な関係を築くべきだ。最終判断権を維持したままで合弁事業や技術提携を進める等新しい協力関係を切り開くべきだ。

  インフラ事業が外国企業に押さえられるという状況は長くは続かないだろう。インフラ事業は資本集約なのでインフレ脅威に弱い。また料金水準が政府に統制されているため、政治の影響を受けやすい。

  IBMのように強大な多国籍企業が市場に君臨することもこれからは許されない。

  多国籍企業の力によって現地経済が発展したら、自社と現地の双方に有益な関係が崩れた場合に備えなくてはならない。

(12) 将来のマネジメント組織
多国籍企業のマネジメント組織も今後は変容が予想される。

  多国籍企業は、現地志向と前者戦略の両方を必要とするため、これらをうまく調和させなければならない。

  子会社や関連会社を対応な位置付けにし、厳しい規律を守り、中央からの指揮命令を行いつつも、柔軟性を保って政治環境との関係に関わる問題に臨まなければならない。

  世界市場に製品やサービスを供給するためには、全社共通の経営資源をマネジメントするのに適した組織を必要とする。それは資本や知識だが、最も難しいのはマネジャーとプロフェッショナルである。これらを尊重し、現地の重要な役割を与えるべきだ。

  さまざまなマネジメントの流儀を取込み、これらをうまく活かさなければならない。日本では伝統的な昇進制度、ドイツでは技術部門を登竜門とするなどである。

  その反面、全体としてのまとまりも求められる。

  複数の経営チームを持ち、本社経営メンバーは傘下各社の経営チームにも属する。また、本社経営層をいっさいの実務責任から解放すべきだ。

  個人同士のつながりやコミュニケーションを絶やさないよう、トップによる努力、市制などが求められる。

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2012年12月10日 (月)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第58章(全61章)

58.   多角化のマネジメント

(1)   多角化のマネジメントの必要性

  新規市場が、既存事業との相性がよいかどうかは事前予測がつかない。そのため、新規事業が実際には検討違いだった場合どうすべきかの答を持っていなければならない。

  既存の事業や技術から自然発生的に生じた動き(技術の枝分かれ等)が全体の統一性を乱すような場合についても、対処の仕方を押さえておく必要がある。

(2)   多角化のツール

  多角化をマネジメントするうえでは4つのツールが使える。

  はじめの2つは、多角化そのもの。新規事業育成と買収。

  3つ目は、多角化の成り行きがおもわしくない場合に全社との相性が十分でない事業を切り離すツール。

  4つ目は、多角化推進と解消の両方に役立つ、合弁事業。

(3)   新規事業育成と買収

  自社で事業を育てるのと他社を買収するのとでは、異なるアプローチや気質が求められる(但し、土台となる多角化戦略が欠かせない点は共通している)。

a.  事業の自力育成 :その事業は当社にどう貢献するかが重要。

b.  買収 :その事業に当社はどう貢献できるかが重要。

買収側が対象企業の業績や成果をあげることができなくてはいけない。

買収側の企業が経営陣を派遣するケースが多く、しかもたいてい難題が降りかかっているため、自社本来の強みを生かした舵取りをする能力や技能が必要。

  買収に備えた事業育成の例~「その事業にどう貢献するか」とはどういうことか

a.  J・P・モルガンは、M&Aにより適正な規模実現(規模拡大)を考えた。

b.  しかし、買収先に貢献する力がないとの自覚があったため、その時に備えて、聡明な若手を大量に採用して商業銀行業務を教育した。

c.   満を持して自行の10倍もの規模のギャランティ・トラストを買収した後は、これらの育成した人材を要所要所に送り込み、事業活動を活性化させることができた。

d.  この、事前の社内での人材育成が、この例での「その事業にどう貢献するか」を考えて実施した事である。

(4)   相性の合わない事業を切り離す

  自社育成にせよ、買収にせよ、相性の不一致が明らかになった時点で迷わずその事業を切り離せるように、予め方針を立てておく必要がある。相性不一致でも事業が順調な場合は、完全に切り離さずとも、少なくとも本体とは経営を分けるべきだ。

  事業の切り離しでは、その事業と相性が一致し、それを役立てられるかどうかを基準にして買い手を探すべきだ。そのような買い手こそ高い価格で買ってくれる。

(5)   合弁事業

  合弁には3つのタイプがある。

a.  ふたつの事業をまとめ、両方の強み(とかるや:異なるが併せる事でシナジーが出せるもの)を活かそうとするもの。

·  大手航空会社(BOAC)とリース会社(リースコ)が座席予約システムの合弁事業を立ち上げた。BOACの予約ノウハウとリースコの資金調達力を併せた。

b.  単独では成り立たない事業をまとめ、事業規模を一気に適正化しようとするもの。(とかるや:単独では規模が小さいものを、複数併せて規模のメリットを実現する)

·  196070年代、米国巨大銀行に対抗するため、日欧の銀行がロンドンにコンソーシアム・バンクを作った。

·  また、原料調達のための合弁事業もこのタイプである。

c.   政治・規制や文化が異なる海外へ進出する際に、その国の地場企業の協力を得ようとするもの。

·  二次大戦後に、欧米の企業が日本で事業を展開する際に、日本企業と合弁事業を行った。

·  とりわけ、多国籍企業と発展途上の小国との関係において有効。

  合弁事業の鉄則

a.  合弁事業が波に乗っているときこそ、親会社同士の利害の違いが表面化する。そのため、①親会社二社と合弁会社の目標をそれぞれ定めておくことが鉄則だ。

b.  意見の対立や膠着が起きた場合にどのように判断を下すかのルールを予め決めておく。双方の尊敬を寄せる第三者を仲裁者に立てる等。

c.   合弁事業には自律性を与えること。そもそも親会社の枠組みに収まらないから合弁としたのだから、2社による共同マネジメントなどとはせず、独自の経営陣を置く。

d.  合弁事業が成功したり、大企業へ発展したりしたら、独り立ちを促すべきだ。

(6)   同族企業についての補足

  企業規模が一定以上(通常は中規模)になると、創業一族から経営者を迎えるのは不可能である。創業一族とはつながりのない専門的経営者に委ねる必要がある。

  企業規模が大きくなっても創業家が存在感を保つためには、一線級の人材を引き付け、つなぎ止めなくてはいけない。

  さらに、たとえ必要に応じて専門的経営者を引き付けることができたとしても、やはり一定以上に拡大すると、同族経営のままでは存続できない。ごく早い時期に会社と距離を置き、投資家という立場に回るべきである。

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2012年11月18日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第57章(全61章)

57.   多角化の成功戦略

多角化を進めながら全体をまとめ上げる方法は、共通の市場で結束するか、共通の技術で結束するかの2つに絞られる。つまり全社に共通の言葉が行き渡るのだ。

(1)   市場を軸とした結束

どれほど多彩な技術が必要になろうとも、ひとつの市場に収まっている限り全体が複雑すぎたり、統一が損なわれることはない。但し、注意する点が2つある。

  注意点1 :市場の範囲を決めるのはメーカーではなく、顧客であることを理解すること。

a.  例:米RCAは、リビング家電からキッチン家電に多角化したが、うまくいかなかった。RCAは両方とも家電だと思ったが、顧客はリビング家電を家具としてみていた。

  注意点2 :相応の事業戦略がないと多角化しながら市場の統一性を維持することはできない。

a.  戦略では、全社の枠組みのなかで、各事業が果たすべき役割にも触れる。(事業毎にプラン、ゴール、戦略を設け、目標を掲げて測定をとおして管理する。

b.  同時に、全事業に共通の戦略、構想、使命も明確にする。全体の結束とともに多様性も求められる。

(2)   技術を軸とした結束

共通の技術を土台にして、多数の異なる市場へ多角化を図る。

  技術を軸に多角を図る以外、事業を進める方法がない業界もある。例:鉄鋼、ガラス、アルミニウム、紙、銅などの素材産業やプロセス産業。

  これらでは事業のありかたを決めるのは加工や処理の「プロセス」である。ガラス窯からガラスしか生まれない。

  テクノロジーは必ずしも「技術とサイエンス」を意味しない。銀行系クレジットカードは、学習を積み重ねて開発した技能で、科学やエンジニアリングとは無縁だ。

a.  テクノロジー:ギリシャ語の「テクネ」=有用な知識、体系的な技能の意に近い。

  技術を軸にした多角化を成功させるために、以下の基本ルールがある。

a.  軸となる技術が、机上の理論ではなく、具体性をもっていなくてはいけない。

b.  技術は異彩を放っていなくてはならない。市場リーダーにふさわしい特徴を製品に添えること。

c.   際立った独自技術は、製品やサービスの添え物ではなく、中核に据えなくてはいけない。

·  例 :ある製紙会社は、特殊紙(感熱紙、観光し、高熱伝導紙等)市場に製紙技術を核として望んだが、成果が得られなかった。核とすべきは表面化学で製紙技術ではなかったからだ。

d.  市場を土台とした多角化と同様、基本戦略が欠かせない。特にマーケティング面での戦略が求められる。

  技術の枝分かれにまかせた多角化には注意。

a.  技術には独特の力学があり、枝分かれしていく傾向が強いため、それに突き動かされるようにして、企業が多角化へ向かいがち(技術の増殖)が、これは時代遅れだ。

b.  このような「成り行き」で多角化を進めた企業は、マネジメントの限界に突き当たっている。これらや全社共通の課題でなく、共通の沿革だけで結ばれている。

(3)   その他の留意点

  市場、技術の両方の軸に沿った多角化は難しい。

a.  市場を軸とした場合と、技術を軸とした場合とでは、個となったマネジメント思想、姿勢、戦略を掲げ、個となった問いを抱く必要がある。

b.  だから、両方の軸に沿って多角化を行い、事業をマネジメントしていくのは不可能ではないが、難しい、

  景気循環に対応するための多角化は難しい。

a.  資本財事業の景気循環を循環周期の異なる消費財事業で賄おうとするなど、景気循環に対応しようとしても、両者の循環周期は実際には大きく崩れる事は稀であるため、効果を発揮しない。

  財務面での相乗効果は幻想である。

a.  多角化においては、経済の実情と価値はうまく見合って(市場、生産性、技術、マネジメントの相性)いなければならない。

b.  上記がなければ、いくら机上で財務面での効果を計算しても、そのとおり顕れない。

c.   例 :196年代の英米では、PER(株価収益率)に着目した企業買収が財務戦略の花形だったが、市場での評価がたまたま買収可能な水準にあるからとって、PERの低い株式をPERの高い株式を使って購入するのは、財務上のまやかしである。

  相性の一致が欠かせない。

a.  多彩な事業、製品ライン、市場、技術などの理念や価値観がまちまちでは、いくら多角化しても成果は期待できない。

b.  例 :ある製薬会社は化粧品や香水事業に多角化したが、「人々の健康に尽くす重要な任務」をこなす自負を持つ立場からみると、化粧品は「くだらない」ものにみえてしまい、多角化は成功しなかった。

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2012年11月 4日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第56章(全61章)

56.   多角化への要請

(1)   多角化は危険

  多角化は高い業績をあげられるというのは神話過ぎない。1950年代、1960年代に多角化ブームが起こったが、さしたる成果をあげられなかった。

  多角化したために複雑化し、一つの市場または技術に特化した小規模企業企業との競争にことごとく敗れた。

a.  同じことは、企業のスタッフ部もにも当てはまる。高い成果を示すのは一つの仕事だけに専念するスタッフ部門である。

b.  「なにかひとつうまくいかなくなると、すべての歯車が狂う」⇒ドラッカーの法則

  事業が複雑になりすぎると、マネジメントに支障をきたす。

a.  経営陣が事業・人材・環境・技術等を直に理解せず、現状から遊離した報告、定量的データなどに頼るようなら、その事業は複雑すぎてマネジメント出来ない状況だ。

(2)   資産管理の誤り、投資家                   vs資産管理者

  1960年代M&Aブームでは、資産管理(アセットマネジメント)が注目され、収益を上げていない分野から撤退したり、売却したりしたが、これは金融の世界に限ったものだ。

  好ましい、投資先を探し、出資を行い、取締役を派遣したりする活動は、事業として成り立つがあくまで金融事業である。(とかるや:資産管理と多角化を混同してはならない。)

a.  例:英国のカウドレイ卿は多くの事業を行ったが、各事業は各経営陣によって独立して経営され、カウドレイ自身は経営者としては振舞わず、投資家に徹した。

(3)   なぜ多角化するのか

多角化の誘惑や多角化信仰はなぜいつまでも消えないのか。それは下記2種類の圧力があるからだ。

  多角化を求める社内の圧力

a.  新しい仕事がしたくなる心理的な圧力。

·  しかしこれを「あさはかだ」と切り捨てる事はできない。

·  むしろ、柔軟な発想を忘れずに、従来と違う新しい何かに挑むことは必要である。

b.  規模の不適正を是正するために多角化を求める。

·  多角化によって新事業分野に参入し、規模の不適正に起因する弱みを克服しようというもの。条件さえ整えば望ましい。

·  後方統合(川上を統合)・前方統合(川下を統合)は規模の適正化を目的として行う場合だけである。

c.   コストセンターを収益体質に変えたい意識

·  例:英J・リヨンズ&カンパニーは、本業のティーショップ・レストランを支援するクリーニングや配送の補助サービスを社外顧客にも提供して収益をあげた。

·  ただし、うまく収益事業に転換できでも、継続するのはあくまで自社との相性がよい場合に限定し、独立させるのがよい。

  多角化を求める社外からの圧力

a.  経済の規模が小さい場合

·  小さいと、企業も成長できず、多角化をテコとした成長にならざるをえない。

·  小さな経済では、多角化企業が経済発展を牽引するのがよいとされる。

·  ただし、それは市場(経済)が拡大するについれて有効性を失っていく。

b.  (上記とは対照的な)市場拡大の波にのった多角化である、多国籍企業(⇒59章)

c.   技術

·  技術はもともと枝分かれするもの。枝分かれにまかせて多角化する場合がある。

·  この種の多角化は計画されたものではなく、研究室の試験管の中での成果からもたらされる。

·  テニクカルな分野に限らず、顧客の需要に応えるため、従来の知識を元に金融サービスを開発し続けた結果、サービスが増えた。

d.  税制の影響

·  先進国の税制はほぼ、株主への配当より、事業への再投資を遊具している。

·  このため、余剰資本が多角化の原資にまわされる。

e.  大資本市場と労働市場の拡大

·  大資本市場:投資家は株に期待通りの価値を要求する。

·  労働市場:高学歴若手は、提供される仕事やキャリアの価値に期待する。

·  これら2つの市場では多角化が重視される。

(4)   正しい多角化、誤った多角化

  上記から、正しい多角化と誤った多角化がることがわかる。正しい多角化を行うためには、経営陣の大きな仕事である。

  その出発点としては、下記を自問すべきだ。最適解は下記の間に位置する。

a.  最低限どれだけの多角化が求められるか

b.  最大限どのくらいの多角化なら(どれくらいの複雑さなら)マネジメントできるか。

  多角化と集中化(専門特化)のバランスをとらけくてはいけない。

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2012年10月14日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第55章(全61章)

55.   不適正な規模への対処

(1)   不適正な規模の原因と症状

  規模が適正でない原因はいくつもある。たとえば、

a.  かなりの規模がないと生き残れない業界での小さな規模。小さな鉄鋼会社や小粒な軍隊などは存続難しい。

b.  逆に大企業が生き残れない業界での大規模。例=アメリカの出版業界

  しかし、不適正な規模に陥った場合の症状は一定なので分析しやすい。その症状とは、ごく少数の分野、活動、職能、施策などが肥大化して完全に調和を失う状況だ。

a.  あらゆる生体や組織の労力や費用の大きさは、最大の構成要素によって決まる。ところが、売上高の方は、実際の業績や成果によって決まる。

b.  両者がバランスしない場合には、内部では肥大だが、市場ではまだ小さいということになる。このような場合、事業を支えようとするのは望ましいとは言えない。

(2)   治療法

事業規模が適正でない場合、肥大化した活動を支えられる規模まで売上高を押し上げようとする経営者が多いが、適切ではない。治療法として以下の3つがありうる。

  事業のあり方を変える。

a.  適正規模をはずれた事業は、生存と繁栄に必要なニッチを抑えていない。そこで事業のあり方を変えて市場で異彩をはなつことを目指す戦略を検討するのだ。

b. 

·  アメリカン・モーターズは1960年代半ばにビッグスリーと同じ顧客層に販売していたため、三社と同じような費用も負担した。

·  これに対し、フォルクスワーゲンは、ビートルと小型バスに限定し、どちらも三社と競合せず、(とかるや加筆:規模にふさわしいニッチを見出していると言える。)

  M&Aによって規模を改める。

a.  上記①よりリスク小さい。

b.  狙いはあくまで、かけている部分を探し出して穴を埋めることにある。(自社とは反対の理由で適正な規模から外れてしまった企業を見つけるのだ。)

·  例 :肥大化した研究組織を維持するのが目的なら、研究組織に比べて製品ラインが肥大化した企業を探す。

c.   このため、実行に当たっては、規模が不適正な理由を押さえておく必要がある。

  事業の売却、撤退、計画的な縮小。

a.  経営層の受け悪いが、もっとも成功可能性が高い。

b.  生体にとって「大きい」「小さい」は意味ない。種として繁栄するために適正な大きさかどうかだけが重要だ。(JBS・ホールデン1928年の論文より)

(3)   適正な規模とは

  規模に限界はあるのか :(とかるや追記:規模に限界がないと見えるほど、その到達点は遠い)

a.  ただ巨大なだけではマネジメント不能には陥らない。マネジメントの仕事を組み立ててまとめあげる力が規模の大きさを補うからだ。

b.  しかし、無限に巨大化できるという意味ではない。マネジメントできないほどの規模に達した企業がこれまでのところ存在しないだけだ。(とかるや追記:つまり規模に限界がないと見えるほど、その到達点は遠い)

c.   もっとも、公的機関では、軍部などマネジメント不能に落ちいた例がある。

  最適な規模 :上記に反して、組織には最適な規模というものがある。

a.  最適な水準は規模が限界に達するはすか手前にある。

b.  収益性が低下へ転じる分岐点に達したら、それ以上の拡大を控え、事業の一部を独立させる方法を探らなくてはいけない。

(4)   環境と規模 :企業規模が大きくなるとマネジメントが困難になるなどの社内事情よりも深刻な問題は、外部環境との調和が崩れることだ。

  規模によって行動の自由が制約され、地域社会への配慮や反発へのおそれなどから、事業にとってはこのましくないと分っていながら不適切な行動をとらざるを得ないなら、その企業は規模が大きすぎる。

a.  地域の雇用をほぼ一手に担う場合などは、地域から頼みの綱と見なされる。

  もっとも、銅や石油など天然採掘に携わる企業では選択肢が限られる。そんな場合は地域に与える影響をどう和らげるかを検討するしかない。

  経済のなかで企業が大きな存在になりすぎる場合もある。

a.  日本やフランス政府は、自国の鉄鋼メーカーや化学メーカーを育成し合併などで競争力を高めようとした。

b.  それらは国内では大きすぎる規模になったが、世界では十分ではない。(とかるや追記:かといって縮小しようとして、政府が企業の戦略の自由度を奪っているから難しい。)

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2012年9月30日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第54章(全61章)

54.   規模に応じたマネジメント

(1)   「大組織」の定義 ~規模をきめる基準はいくつもある

  企業規模を測るには、従業員数、売上高、付加価値、製品構成複雑さ、市場の数、技術の複雑さなど様々な要因を見る必要がある。どれか一つでは決め手にならない。

  総合的な規模はマネジメントとその体制によく表れる。

a.  小規模企業では、職能業務に携わらず経営課題に専念する1人で十分な場合で、1人がキーパーソン全員を把握している。

b.  中規模企業では、1人のトップがキーパーソン全員を深く知るのは難しい。3~4人かがりならできる。

c.   大規模企業では、組織図や資料をみたりしなければ分らない。

(2)   小規模企業 ~規模が小さいなら、体系的なマネジメントはむしろ大企業より必要。下記が求められる。

  戦略

a.  小さな企業は、取るに足らない存在になったら終わり。そうならぬ為に他にはない特別な企業になるための戦略が必要。

b.  大多数の小規模企業は、日々持ち上がる問題への対処に追われて、戦略を持たない。このためほとんどは繁栄とはほど遠い。

c.   戦略として;

·  自社に有利なすきまを見つけて、競争をしのがなくてはならない。

·  小さいが重要なサービス分野で卓越した存在を目指す戦略もある。

  経営層の課題を体系的にとりまとめることがこと。

a.  大多数は、重要活動をしきりに話題にするが、実際には対処していない。

b.  対処するには、少しの検討、簡単な体制、シンプルな管理と報告の制度(チェックリスト程度)さえあればよい。

  経営トップから高い成果を引き出すこと。

a.  他に任せられない2つの課題がある。

·  社内の人材にまつわる課題。

·  市場、顧客、技術など事業環境にかかわる課題。

b.  上得意客トップセールスや銀行交渉など社外関係より、市場、新事業機会、環境変化などを探ることに時間をかけるべきだ。

  独自の管理手段や情報システム。

a.  人材も資金も限られるので、結果につながる分野にこれらを投入する。

b.  通常の会計データに加え、キャッシュフロー把握する必要がある。将来の資金需要を把握する。

c.   数値データは少なくてよい。しかも高い正確性は不要。ただ、必要な数字は原則として通常の会計処理からは得られない。必要なのは、経営資源の配分状況を将来の動向と関連付け、事業機会を見極めたり、危険を避けるための数字である。

(3)   中規模企業

  下記の3つのタイプにそれぞれ要件がある。

a.  単一技術、限定的な数の製品、単一市場

·  組織をどのように構成するかが最大の課題。

·  自律的な複数の損益主体から成り立っている訳ではないので、連邦分権制ではなく、製造などには疑似分権制を取り入れ、タクスフォースで補完するのがよい。

·  経営層は、チームで対応する。

b.  自律性を持ったいくつもの事業部が異なる製品ラインをもとに異なる市場に参入しているが経済特性は全事業で共通

·  個々の事業に職能別組織を、全社に連邦分権制を取り入れる。

·  経営層は、各事業部に経営チームを設け、事業部の経営チームはには本社の経営メンバーも含む。

·  事業部長が率いる。

c.   異なる市場で活動するいくつもの事業から成り立ち、それらが互いに依存し合っている(事業間で相乗効果)

·  2つの軸に沿って組織する必要がある(①全体としてひとつのまとまりのある事業なので一枚岩で統一のある力ある経営層、②事業はそれぞれ自律性を保ちながら相互に依存し合う)

·  各事業部は、他の事業への貢献によって存在意義を認められる。

·  3種類の経営チームを設ける(①全社の経営チーム、②事業部にごとの経営チーム、③各事業部長が本社の経営陣とともに経営チームを形成する)

  上記3つのタイプに共通する要件

a.  贅肉をつけないこと。(成功の秘訣は特定分野への集中。余計な周辺事業に手を出さない)

b.  卓越性がなければ目標を達成できない分野では、強さ、経営資源、高い要求水準、業績への執念をもってあたる。

c.   中くらいの規模はイノベーションを成功せさるのに適している。イノベーションをとして事業の結束を強めるべきだ。

(4)   大規模企業

  目標に沿って適切に組織を編成しなくてはいけない。

a.  関係性や人材についての情報を組織に反映させ、人々の熱意を引き出すため、方針、目標、職務、貢献等をめぐる抽象的定義や型にはまった手順などに頼る必要がある。そのため人間味は乏しくなり、明快さが求められる。

b.  出来る限り連邦分権制を採用し、馴染まないなら疑似分権制を試みる。チーム組織も欠かせない。

c.   マネジャー職務を、貢献や任務だけでなく、意思決定や情報の流れのなかで位置づけ、関係性ん観点から決める事が求められる。また、マネジメント開発とマネジャー育成がともに決定的に重要となる。

d.  経営層は大人数で構成するとともに、彼らに情報、活力、アイディア等を提供する組織(秘書室や事業調査室)を設ける。

  大規模企業は原則として小さなベンチャー事業を手掛けるべきではない。手掛ける場合には、そのチームを他組織とは独立した形で設け、それを許容する。そのような柔軟性や無秩序を社内に取り込み、組織としてまとめあげる仕組みが必要である。

  経営層は、全社の人材と接するよう努力し、人材どうしの交流を深める。これにより硬直的な官僚体質に染まらず柔軟性をもたらし、相互努力を根付かせる。

  表面積と体積の法則(体積が増えても表面積はそれほど増えない)により、内向き意識が強くなる。その対策として下記が必要。

a.  経営層は、組織の耳目となって社外の出来ごとを敏感に察知する責任をおう。

b.  社外に人材をもとめ、組織そのものにも社外の新鮮な発想を取り込む。経営層の一歩手前あたりのポストがよい。

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2012年9月24日 (月)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第53章(全61章)

53.   適正な規模とは何か

(1)   規模と複雑さ

  物体の表面積は、直径の二乗で増えるが、体積は三乗で増えるように、組織も常に表面積を上回るペースで体積が拡大する。企業では、規模が大きくなると、たちどころに複雑化と専門分化が進み、内部を管理するための部門が必要になる。

  複雑さは穏やかに拡大していくわけではなく、ある時点で質的な変化を誘発する。

a.  高等動物の骨格は昆虫の外皮が進化したものではなく、人類も直立で歩行する、道具を作るなど新たな段階に進化したものだ。

b.  同様に、規模や複雑さが一定以上になると単に量的な変化ではなく、「飛躍的な変化」が必要になる。

  「権限委譲」をめぐる議論もこれを忘れてはいけない。

a.  経営層は取締役会の業務の一部であるかのように、「委譲」はいつでもその職務を取り戻せるとの意味があるがそうではない。

b.  同様にマネジャーの職務も従来職務を拡大したものではなく、質的変化によって生れたものであり、各自が独立して自分の権限で職務を果たすべきである。

(2)   規模と戦略

  規模は戦略に影響を及ぼし、戦略も規模に影響を与える。このため、規模に適した戦略はなにかの問いが重要である。

a.  小さな組織には大組織にない持ち味がある。(身軽、速い対応、資源集中など)

b.  大組織にも小組織にない強みがある。(長期の研究プロジェクトに耐えるなど)

  マネジャーにせよ一般従業員にせよ、ひとりひとりに働き手には大きな影響はないが、経営層にとっては、規模を複雑さは大問題であり、判断を下すべきテーマである。

  一定規模以下の企業は生き残れず、一定規模以上の企業も長く繁栄できない。その中間領域は極めて広く、「事業目標」のひとつと見なすべきだ。このため、他の事業目標と同じく、適正な規模を実現するためには努力が必要である。特に以下の5点を考慮すべきである。

a.  規模そのもののマネジメント

·  現状規模・適正規模模索、機能不全となる上限認識、規模と戦略の意味合い。

b.  複雑さと多様性のマネジメント

·  複雑さの上限認識、複雑になると組織は何が必要になるのか。

·  同族企業の規模限界~時間(永続可能か)と規模の限界はどこか。

c.   多国籍企業

·  規模、市場、製品、技術の複雑さだけでなく、文化面、政治体制、政府との関係も考慮。

d.  変革と成長のマネジメント

·  変革や成長の過程で、マネジメントの体制・行動などを変える時点はいつか。

·  複雑さを避けながら、変革や成長への備えができるか。

e.  イノベーションのマネジメント

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2012年9月 9日 (日)

ドラッカー「マネジメント」サブノート、第52章(全61章)

52.   実行ある取締役会の必要性

(1)   取締役会は、国によって法律上の規定は異なるが、実効をあげていない。その理由は;

  大規模な株式公開企業が登場し、取締役会は所有者の代表とは言えなくなってきた。

  社内常駐して仕事をしないので、統治機構としての役割をはたしようがない。

  経営層が概ね、実効ある取締役会を望んでいないという事情がある。

(2)   しかし、実効ある取締役会は以下の役割を担うために必要である。

  企業にはお目付け役が求められる。

a.  プランニング、設備投資方針、管理支出予算などについて誰かが批判的な目をむけなければならない。

b.  他方で、経営層は相談相手も必要としている。

  成果をあげないトップを更迭する。

a.  無能なCEOを更迭できる取締役会がなければ代わりに政府が乗り出すだろう。

b.  更迭する仕組みのない会社は資本力をバックにした買収者と株式公開買い付けの脅威に絶えずさらされる。

  企業には社会や地域との関係を担う組織が欠かせない。

a.  経営層の広報活動はこれまでのところ失敗に終わっているから、取締役会が本来の広報や地域社会との交流の役割を担い、経営層と一心同体で仕事をさせる必要がある。

(3)   その為には誰を取締役会のメンバーにすべきか~これまでのところお目付け役としての答えしか見つかっていない。

  能力 :企業、政府機関、その他の組織で上級エグゼクティブとして高い手腕を発揮した実績があること。

  十分な時間が費やせること :ひとりで兼任できるのあhせいぜい4~5社程度。

  経営層から独立しているべき :そのため、任期制にして再任を避ける。そうすれば経営層と良好な関係にあても、無理に相手に合わせる必要は感じないですむ。

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