外国為替相場の動向と変動要因分析

2017年6月 1日 (木)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年5月末現在)

【米ドル】・・・対円

5月は小動きでした。

政治リスクから、108円台前半まで円が買われた前月とは異なり、一部を除いて、それらのリスクが和らいだ、或いは意識から離れた今月は、少し円安に振れました。

Ø 米軍によるシリア空爆(4/7) → 意識から離れた

Ø トランプ大統領の円安牽制発言(4/12) → 熱が冷めた

Ø 北朝鮮の弾道ミサイル発射実験(4/16) → 緊張続いているが、少し慣れた

米金利の利上げ期待もドル買い材料となり、上旬には114円台半ばまでドルが強含みました。利上げ判断の重要な指標である雇用統計では、失業率が4.4%まで低下し、非農業部門の雇用者も21.1万人増えました。利上げには十分と言えそうです。

しかし、その後はドルが売られ、15日前後には110円台後半をつけました。トランプ大統領へのロシアを巡る疑惑から弾劾の可能性もささやかれて再びリスクOFFの動きを呼び戻したのです。後は111円を挟む小動きが続き、結局110円台後半で月を越えています。

 

【ユーロ】・・・対米ドル

5月は一段買われました。

1月を底に、米ドルに対して再評価されてきたユーロは、5月も一段買われました。昨年の英国の国民投票によるEU離脱選択以降、各国でEU離れが進むのではないかと懸念され、選挙の年となった今年は、重要な選挙の都度心配のネタが広がっていましたが、オランダ、フランス・・・とひとつひとつ潰してきました。そのたびに安堵感が広がり、ユーロが評価されてきたのです。

月間の安値は、月初に近い上旬の1.08台半ば、高値は下旬の1.12台半ばでした。

上旬の安値は、フランス大統領決選投票などの材料出尽くし感によるものです。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

短期では、まず今月の利上げ実施を確認しておきましょう。市場では9割方利上げが実施されると見込んでいます。524日に発表されたFOMC議事録でも、「経済指標が想定通りなら、間もなく追加の利上げが適切になると指摘され、6月中旬(1314日)の次回会合で利上可能性がしめされました(525日付け日経朝刊)。先に見た通り、重要な経済指標である労働統計も良好です。ただ、中には物価動向が弱いことを指摘する向きもあります(図表参照、Index 1982-1984=100, Seasonally Adjusted)。

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米国が利上げすると、日米金利差からドルが買われると見てはいけません。市場は既に織り込み済みで、これを材料にして十分買い進んでいますから、発表されればドル売りに転じます。

その後は、早速次の利上げ予想に移るのですが、それが多少やっかいなようです。引き続きFOMC議事録を注視し、指標と併せてみていく必要があります。

もうひとつ、懸念事項があります。先日公表された米国の予算案は、減税など積極的に財政を出動させる姿勢を打ち出したものの、その財源として中間層への分配を後退させるという内容でした。

昨年11月の大統領選挙の前評判ではトランプが勝てばリスクOFFから円高ドル安、クリントンが勝てば安堵感から円安とみられていた事を思い出してください。それが予想に反してトランプが買ったにも関わらずドルが大きく買われ、その後もずっと堅調に推移してきたのは、トランプの積極的な経済政策が奏功するだろうとの予想が勝ったからです。

それなのに、トランプの主な支持基盤であった中間層に苦痛を強いるのは、支持者への裏切り行為ともみられ、このままスムーズに進むとは考えにくいのです。積極策が進まなければドルを買ってきた根拠を失いますから、再びドル安円高に向かうという心配があります。

 

ユーロドル ・・・

先月29日、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は、緩和方針を変更する理由はないってなことを話、それまでのユーロ評価の動きに水をさしました。しかし、欧州経済は堅調に推移しています。ECBの金融緩和策の縮小判断の基準で重要しされているのが物価指数ですが、これも徐々に上昇しています。

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このところ、市場や分析者が緩和縮小の条件は整いつつあると言っても、その都度ドラギ相殺が打ち消す発言をしてきましたが、実際にユーロは評価されつつあると感じます。心配していた選挙もひとつひとつ潰れ、残るはドイツの総選挙ですが、これはメルケル首相への支持が安定していて、フランスやオランダのようにEU離脱派が大きく勢力を伸ばす心配はなさそうです。

しばらくはドルに対して底堅い動きを続けるものと思われます。

 

 

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. FRBの利上げ:実施は織り込み済み発表後に材料剥げ落ちのドル売り円買い

 2. 北朝鮮情勢やシリア情勢:緊張高まれば、リスク回避先として円買い

 3. トランプ大統領のロシア疑惑の行方:弾劾など不安定になればリスク回避の円高

 4. 仏議会選挙:マクロン政権の安定を占うものとして注目

 5. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 6. IMM(シカゴ投機筋)の円売り持ち高の積み上がり:巻き戻するなら円高。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. トランプ新政権の経済政策。積極策は金利引上げにも通じ、ドル高につながる。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 4. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)、その後の延長の行方:価格軟化は資源国経済に悪影響し、リスク回避の円買い

 5. 欧州各国の重要な選挙動向(10月、ドイツ総選挙のほか、仏議会選挙、英議会選挙など)

 6. 中国はじめ新興国の経済動向 :一時の不調を達して堅調、ただし米金利動向や資源価格に左右されよくぶれる

 

【長期的な材料(数年)】

 1. トランプ大統領の金融・経済政策の具体化の状況とその内容

 2. 欧州各国選挙結果の新政権のEU統合強化策の行方(財政、金融)

 3. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 6. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

以  上

 

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2017年5月 3日 (水)

:外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年4月末現在)

【米ドル】・・・対円

4月は行って来いの相場展開でした。

「始め」から一方法に動き、結局元の水準に戻ってくることを、業界では「行って来いの相場」と言います。始め、つまり月初の水準は111円台前半でした。その後、円高方向に向かい、108円台前半から反転し、また元の水準111円台半ばまで戻ってきたのです。

円高に向かった原因は、下記3つでいずれも経済的要因ではありません。

 米軍によるシリア空爆(4/7

 トランプ大統領の円安牽制発言(4/12

 北朝鮮の弾道ミサイル発射実験(4/16

①と③は所謂地政学リスクです。リスク回避先の円買いが活発になった結果108円台前半まで円高が進みました。上記3つのうち、一番円高に進めたのは③の北朝鮮です。それにしても不思議ですね。北朝鮮問題は日本も当事者です。下手すると核戦争に巻き込まれて日本経済が破綻するかもしれないのに、何故円がリスク回避先になるのでしょうか。ちょっとわかりません。

反転は、仏大統領選挙です。ユーロ離脱派の2人による決選投票が避けられたことで、安堵感が広がったことによるリスク回避の巻き戻しと、米国経済の好指標が発表されたことによる米金利利上げ期待が、再び円を111円台まで戻しました。

 

【ユーロ】・・・対米ドル

4月は安堵のユーロ買いが出ました。

ユーロは201612月の安値1.04台前半か徐々に買われてきました。ユーロ圏経済の底堅さが買い動機となっています。一方、ユーロ離脱派が台頭するのでないかとの心配が選挙のたびに頭をもたげ、それがユーロ買いの足を引っ張っています。

4月もその延長線上にありました。

月初1.06台半ばで始まり、しばらくは膠着状態が続いていましたが、4/23の仏大統領選挙の結果がユーロ買いを促しました。大統領選は、はじめルペン氏とマクロン氏の決選投票とみられていましたが、直前になって左派だがユーロ離脱を訴えるメランション氏が突如顕れて支持を伸ばしたことから、あわや離脱派同士の決戦となって将来はユーロ崩壊かというところでしたが、結果はユーロ強調派マクロン氏がルペン氏に一定の差をつけて支持を維持しました。まだ決選投票がありますが、市場は安堵したというわけです。月末は1.09の水準でした。

 

 

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

4月に発表された米雇用統計は、就業者伸び急減したものの、失業率4.5%まで改善し、完全雇用とみる水準を下回っています。FRBのイエレン議長も講演でこの点を指摘、利上げを長く待ち過ぎたくはないと述べ、公表されたFOMC議事録にも参加者が景気過熱感を懸念している内容が明らかになりました。6月には利上げをするというのが市場の見方です。利上げはドル高円安です。

一方、トランプ大統領の円安牽制圧力も強くなっています。417日日経新聞WEB版によると、実効レートで見た円はここ2週間でもっとも上昇した通貨とされる、一方米財務省報告は、歴史的平均値からまだ20%も割安だとしています。

試しに日銀の長期時系列データから相場推移をグラフにしてみました。どうやら、80円の水準は例が位置として排除するとしても、円高に進んだのは極短期で、長期的にはそうでもなさそうです。tだ、実質実効レートは超長期傾向としては右下がりに見えますね。

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4月は米FOMCが開催されません。短期的には利上げペースを占う米経済指標がドル円相場を左右すると思います。中長期的には、トランプ大統領の積極政策の進捗遅れが深刻です。大統領選挙以来の相場押し上げに積極政策が大きく作用しただけに、その期待が少しでも裏切られるようなことになれば、相場への影響はとても大きいでしょう。トランプ大統領の公約のブレは特に外交面に表れています。経済政策は国内マターですから外交のような壁は少ないかも知れません。それでも、懸念材料としては小さくありません。

どう影響するかというと、それはドル売り円買いです。

利上げは景気過熱を抑制するものですから、積極政策が遅れることになれば、景気の過熱への心配も遠のきます。利上げの必要がなくなれば、金利から米ドルが売られるわけです。3月後半の動きがそうでした。

もちろん、金利差による相場変動は短中期的なものですから、長期の方向は実需に基づいて判断しなければなりません。

 

ユーロドル ・・・

ユーロ圏のファンダメンタルズは底堅く、ECBの金融政策スタンスもそろそろ出口を探し始めています。米国の利上げと方向が同じですから、これまでのように、米国の引き締め、ユーロの緩和という違いが際立つ状況からは脱しつつあります。

先月のECB理事会では、金融政策の変更はしなかったものの、ドラギ総裁が会見で「下ぶれいリスクは後退した」と述べた他、日経新聞によれば6月の会合では緩和出口に向けた言い回しも検討されているとのこと。これらを受けて、ユーロ通貨は少しずつ買われていくというのが市場の大方の見方のようです。

ただ、以上は中期予想。ユーロの行く末は政治が握っていますので、長期~超長期的には政治材料に引き続き注意しておく必要があります。

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. 北朝鮮情勢やシリア情勢:緊張高まれば、リスク回避先として円買い

 2. 仏大統領選(決選投票):ユーロ協調派マクロン氏か離脱派ルペン氏か

 3. トランプ新政権の経済政策。積極策は金利引上げにも通じ、ドル高につながる。

 4. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 5. IMM(シカゴ投機筋)の円売り持ち高の積み上がり:巻き戻するなら円高。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. トランプ新政権の経済政策。積極策は金利引上げにも通じ、ドル高につながる。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 4. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)、その後の延長の行方:価格軟化は資源国経済に悪影響し、リスク回避の円買い

 5. 欧州各国の重要な選挙動向(5月フランス大統領決選投票、秋ドイツ総選挙):極右勢力伸ばすならユーロ売り

 6. 中国はじめ新興国の経済動向 :一時の不調を達して堅調、ただし米金利動向や資源価格に左右されよくぶれる

 

【長期的な材料(数年)】

 1. トランプ大統領の金融・経済政策の具体化の状況とその内容

 2. 欧州各国の重要な選挙動向(45月フランス大統領、秋ドイツ総選挙)

 3. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)

 4. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 6. 英離脱後のEU各国への影響(2017年、主要国の重要選挙予定されている)

 7. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 8. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

以  上

 

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2017年4月 4日 (火)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年3月末現在)

【米ドル】・・・対円

3月は円高傾向でした。

2月に引き続いて、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げに関する動向が相場を上下させ、結局月間のトレンドで見ると、115円前後の水準から111円前後の水準にドルが売られて円が強含んだという流れとなりました。115円前後の水準を支えたのは利上げ環境が整っていることを裏付ける米経済市場と、実際の利上げです。

毎月初に発表される米ISM製造業景気指数は良好でしたし、やはり恒例の米雇用統計では失業率低下や賃金上昇が確認され、いずれも米経済が順調に回復していることを示し、過熱を牽制する必要が出てきたのです。NY連銀総裁をはじめとする米FRB高官の、3月利上げを支持する発言も前月末から続いていました。そして、実際に3/1415の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、0.751.00%への利上げが決定されました。

しかし、市場では、実際に利上げが発表されるとその材料はすぐに剥げてしまいます。次の材料が気になってしょうがない。次の材料は、今後の利上げペースです。今年3回か、それとも4回か、それが問題です。

FOMCでは出席者による政策金利(Federal Fund Rate)の予想も注目されます。それが高ければ多くの利上げが必要ですし、低ければ少ない回数でもその水準に十分達することが出来るという具合にみます。で、今回はどうやら3回に分がありそうです。市場はすぐにドル売りに出ました。下旬にかけてじりじりと値(ドル)を下げ110円を切りそうな水準まで円が買われました。

これにはトランプ大統領も一役かています。3/23の日経新聞WEB版によると、オバマケアの代替案を巡って調整が難航し(その後、実際に撤回した)、遅れることによって他の刺激策も遅れ、積極策を掲げる大統領の思惑通りに進まなくなると見た市場がリスク回避の円買いに動いているとのこと。世間でも、トランプ相場が一巡したのではないかとの見方が広がっています。

結局、111円台半ばで4月に入っています。

 

【ユーロ】・・・対米ドル

3月はユーロ高傾向でした。

ユーロも対米ドルで強含みました。3月は米国の金融政策スタンスが相場を動かしたと言えそうです。そのため、米ドル以外の通貨は概ね同じような動きを示したのでしょう。

ただ、ユーロ固有の材料もありました。ユーロ圏経済の堅調さを背景にした金融政策スタンスの変化とオランダ下院選挙です。

ユーロ圏経済は結構堅調に推移しています。3月のPMI(Purchasing Managers' Index:企業購買担当者の景気動向判断指数)は、ドイツをはじめとする主要国で判断の分かれ目となる50を大きく上回る結果となりました。特にユーロ圏全体のPMI2011年以降の好結果だったようです。これを受けて、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和措置もそろそろ出口に差し掛かっているとの見方が市場に広がっています。米国の利上げペースが落ちて、ユーロの緩和策が卒業すると金利差から、当然ユーロが買われます。

選挙も相場に影響しています。今年は欧州の選挙の年です。各国で極右を中心とする反ユーロ勢力が伸びており、これに対する懸念がユーロ通貨への不安にもなっています。右翼へ傾くとユーロ安、保守が頑張ればユーロ圏経済の好調もあってユーロ高というのがシナリオです。既に昨年末、イタリア国民投票とオーストリアが終わり、イタリアでは改憲案否決されて反ユーロ勢力が評価されましたが、オーストリアでは反ユーロ勢力が予想ほど伸びませんでした。これに続いて3月には15日にオランダ下院の投開票が行われ、極右「自由党」が事前予想ほど伸びませんでしたので、次第にユーロへの負担が払拭されつつあるというのが見方です。

相場の流れとしては月初の安値1.05台前半から下旬には1.08台半ばまでユーロが買われた後、1.06台半ばで月末を越えています。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

4月は米FOMCが開催されません。短期的には利上げペースを占う米経済指標がドル円相場を左右すると思います。中長期的には、トランプ大統領の積極政策の進捗遅れが深刻です。大統領選挙以来の相場押し上げに積極政策が大きく作用しただけに、その期待が少しでも裏切られるようなことになれば、相場への影響はとても大きいでしょう。トランプ大統領の公約のブレは特に外交面に表れています。経済政策は国内マターですから外交のような壁は少ないかも知れません。それでも、懸念材料としては小さくありません。

どう影響するかというと、それはドル売り円買いです。

利上げは景気過熱を抑制するものですから、積極政策が遅れることになれば、景気の過熱への心配も遠のきます。利上げの必要がなくなれば、金利から米ドルが売られるわけです。3月後半の動きがそうでした。

もちろん、金利差による相場変動は短中期的なものですから、長期の方向は実需に基づいて判断しなければなりません。

 

ユーロドル ・・・

引き続き2つの材料に注目しましょう。

1つは、ユーロ圏経済の動向とそれを背景に変化する欧州中央銀行(ECB)の金融政策スタンスです。金融政策はインフレとデフレのバランスで決定されます。ユーロ圏の経済が好調で、いくらPMIや工業生産が良くても通貨供給量が見合って、物価が変わらなければ金融政策スタンスを変更する理由はありませんから、物価指数も重要な指標です。

もうひとつは、選挙です。イタリア、オーストリアと済ませたところで不安定化要因は一定程度弱まりつつありますが、45月の仏大統領選挙と秋のドイツ総選挙は注意しておかなければなりません。相場による影響の形は、上に述べた通りですので繰り返しませんが、この選挙は短中期だけでなく、場合によっては超長期の変動にも影響があります。反ユーロ勢力によってはユーロ体制そのものの崩壊がないとは言い切れませんから。フランスのエマニュエル・トッド氏の指摘はいちがいに荒唐無稽とは言えません。

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. トランプ新政権の経済政策。積極策は金利引上げにも通じ、ドル高につながる。

 2. 仏大統領選(第1回投票2017/4):極右勢力が伸ばすと、ユーロ圏不安定化を懸念してユーロ売り

 3. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 4. IMM(シカゴ投機筋)の円売り持ち高の積み上がり:巻き戻するなら円高。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. トランプ新政権の経済政策。積極策は金利引上げにも通じ、ドル高につながる。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 4. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)、その後の延長の行方:価格軟化は資源国経済に悪影響し、リスク回避の円買い

 5. 欧州各国の重要な選挙動向(45月フランス大統領、秋ドイツ総選挙)):極右勢力伸ばすならユーロ売り

 6. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 

【長期的な材料(数年)】

 1. トランプ大統領の金融・経済政策の具体化の状況とその内容

 2. 欧州各国の重要な選挙動向(45月フランス大統領、秋ドイツ総選挙)

 3. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)

 4. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 6. 英離脱後のEU各国への影響(2017年、主要国の重要選挙予定されている)

 7. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 8. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

以  上

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2017年3月 4日 (土)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年2月末現在)

【米ドル】・・・対円

2月は、小幅上下しました。

グラフ(日銀長期時系列データから作成)では、上旬はドル安円高に動き、中旬はドルピークを迎えて山なり、下旬は月末にかけてドル上昇に転じる動きとなっています。上旬、中旬、下旬に分けて順にみていくと・・

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上旬

1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は利上げを見送りました。これは市場の予想通りでしたが、声明では景気の上ブレ可能性に触れたものの、明確にそれを利上げに反映していく姿勢が読み取れず、ドルの押し上げ力は強まりません。その後3日に発表された米国雇用統計はあまりぱっとせず、利上げ期待が後退するなかで、112を割る水準までドル安円高となりました。

中旬

米利上げに関しては、14日、FRBイエレン議長が議会証言で今年前半の利上げに言及、3月中旬の実施も排除しなかったため一転して市場の利上げ期待が高まりました。実際、米小売売上高などの指標も市場予想を上回る好結果だったのです。また、10の日米首脳会談も先行き不安を解消する効果があったことから、115円寸前までドルが買われて、山なりの形となりました。

下旬

利上げ観測については、22日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録によっても裏付けられ、この時の相場は113円を切るまでドル売りが進んでいた相場をふたたび113円台後半に押し上げました。その後はトランプ大統領の政策期待への熱も徐々にさめて、じりじりと下げましたが、月末イベントで変わりました。注目されていた28日のトランプ大統領の演説は結構評判がよく、同日にFRB関係者が相次ぎ利上げに言及したことから、ピョンと上向く予兆を見せて月末を越えまたのです。

 

【ユーロ】・・・対米ドル

2月は下げました。

グラフは、なにもいいところがありません。月初は1.08程度で始まり、その後は一貫してユーロ安が進行したよ見えます。

 

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1月の中旬に2003年来の安値1.03台半ばを付けてからのこのそうば展開ですから、1月下旬に安値から脱して上昇していたものが2月に入って再び弱含んだという流れです。この推移の中には、ドル円で見たような米FRB金融政策にがらみの影響がユーロドルにも顕れている事が分かります。たとえば、月初の底堅さはFOMC結果を受けた利上げ期待減退や雇用統計の影響、中旬のかけてのユーロ安はやはり米FRBイエレン議長の議会証言による利上げ期待高揚などです。

しかし、最近ユーロを動かしているのは政治材料です。オランダ下院選は315日、フランス大統領選は45月(4/23:第1回投票、5/4:決選投票)、秋にはドイツの総選挙を控えており、いずれも右派が台頭している中で、将来へ不安が経済にも影を落としている格好です。経済は将来の見通しが効かないと投資意欲も減退します。政治がファンダメンタルズに悪い影響を与えているのです。

しかし、実体経済はどうかというと、悪いわけではありません。ユーロ圏の2月のPMI景況感指数は引き続き良好な結果を示しているほか、近時のユーロ安の効果によって貿易収支も良好だからです。特にドイツは好調です。

指標に顕れる実体経済もファンダメンタルズですから、政治の影響を受けるファンダメンタルズと実体経済が示すファンダメンタルズがせめぎ合っている感じです。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

228日のトランプ大統領演説はけんかしていたメディアも最も大統領らしい演説であったと褒める等、とても良い出来だったようです。従来のトゲを隠し、次第に周囲の意見に耳を傾けつつあるのかなといった安堵と、その中でも勢いのある、日本の通常予算規模をも大きく上回る公共投資を市場が好感して、株は活況を呈し、米ドルも買われました。

これに利上げ観測も加わって、当面ドルは強含むとの見方が大勢です。

利上げに関しては、31415日に開催される米FOMCに注意。利上げが実施されるとの見方が強く、これに向けてドルが買われていくと予想しますが、一転して裏切られると衝撃が小さくありません。

その後も、次回の利上げ見通しや利上げを占う経済指標、トランプ大統領の政策がらみ発言などに反応して短いサイクルで上下するのではないでしょうか。そんなことが一巡した後は、保護政策の長期的影響など政策の陰の部分が顕れて徐々にドルの勢いは収まると見る向きが多いようです。

為替相場は長期的には理論に従うと思います。少し前に、企業物価指数を使って試算した2013年の購買力平価は104でした。その後の物価指数はあまり変わりませんから、いまでもこの水準であろうと思います。下のグラフは、日銀の長期時系列データから独自に計算してプロットしたものですので、参考にしてください。

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ユーロドル ・・・

実体経済が示すファンダメンタルズはいいのに、政治の影響によるファンダメンタルズは不安定という状況は、話題になっている選挙が片付いていくまで続くと思われますから、当面はユーロが実体経済を反映しにくい、上値が重たい状況は変わりません。

米利上げ観測やトランプ政策の囃したてている間もユーロは売られると思います。その水準は1.051.15辺り。その後、どちらの方向に向かって抜けるかは、米大統領選挙がそうであったように、やはり選挙の結果に左右されるでしょう。長期予想はユーロ通貨そのものの行方を予想することと同義ですから、そこは政治の影響をおおいに受けるところです。

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【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. トランプ新政権の経済政策。積極策は金利引上げにも通じ、ドル高につながる。

 2. 米FOMCの金融政策決定内容:2017.3/1415、利上げ実施ではドル高。

 3. 2017/3月中旬のオランダ上院選の結果:EU離れをす進めるものなのかに注目

 4. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 5. IMM(シカゴ投機筋)の円売り持ち高の積み上がり:巻き戻するなら円高。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. トランプ新政権の経済政策。積極策は金利引上げにも通じ、ドル高につながる。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 4. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)

 5. 欧州各国の重要な選挙動向(45月フランス大統領、秋ドイツ総選挙)

 6. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 

【長期的な材料(数年)】

 1. トランプ大統領の金融・経済政策の具体化の状況とその内容

 2. 欧州各国の重要な選挙動向(45月フランス大統領、秋ドイツ総選挙)

 3. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)

 4. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 6. 英離脱後のEU各国への影響(2017年、主要国の重要選挙予定されている)

 7. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 8. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

以  上

 

 

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2017年2月 3日 (金)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2017年1月末現在)

【米ドル】・・・対円

1月は上下しましたが、ドル底堅く推移しました。

昨年11月、12月とドルが急上昇した後の1月は、引き続く上昇圧力と一部の円買い戻しの動きが交錯して上下しました。

月初117年前後で始まった後、ぱっとしない米雇用関連統計を受けて115円台まで弱含む場面もありましたが、上旬は概ね高水準で推移していました。

変化が顕れたのはやはりトランプ氏の就任前初の記者会見です。11日に行われたこの会見では、それまで積極的な経済政策に期待して円のショートポジションを膨らませていた投機筋が、保護貿易的方針が濃かった会見内容に嫌気してポジション調整(ドル売り円買い戻し)に動きました。その後も中旬には当月最安値の112円台半ばまで弱含んだのです。

しかし、相場の動きは度々のドル急落の後は再びじりじりと買われて高水準を取り戻すなど、ドルの底堅さが目立ちました。底堅い理由は、中期的な金利動向でしょう。もともとFRBは今年2~3回の利上げを目論んでいますし、それにトランプ新大統領の政策ドライブもかかって日米金融政策スタンスがさらに開くと予想する人々がドルを買っているようです。

月末も中東等7ヶ国からの入国を制限する突然の大統領令に、リスク回避の動きが広がって再び112円台に弱含みましたが、すぐにじりじりと戻しています。結局113円前後で1月末を越えました。

 

【ユーロ】・・・対米ドル

1月はじりじりと買われました。

11月のトランプ氏当選時の1.11台から12月末の1.03台まで大きく値を下げたユーロは月初1.04台半ばで始まりました。その後、前月までの動きを受けて、2003年来の安値(1.03台半ば)まで弱含む場面もありましたが、トランプ氏の大統領就任前初の記者会見での保護主義的発言などからじりじりと値を上げました。

値を上げた理由は他にもあります。たとえば、ユーロ圏経済のファンダメンタルズです。1月のユーロ圏PMI景況指数は数年ぶりの高い水準となったほか、貿易収支も改善基調が続いており、ドイツが牽引する形で経済の回復が目に見えてきました。経済が良くなると通貨も信頼を得て強くなります。通貨の保蔵機能への信頼から人々は資産をユーロで保有しようとするからユーロが買われるというわけです。

結局、小幅上下を繰り返しながら、月初の1.04台より0.03だけ上昇し、1.07台の前半で月末を越えました。

 

 

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

トランプ新大統領の閣僚承認は大幅に遅れ、ティラーソン新国務長官がようやく昨日(2/1)承認されました。それでも既に承認されているマティス国防長官とジョン・ケリー国土安全保障長官を含めてわずか3人です。この間、次々と発布される物議をかもす大統領令に関与していたのは、どうやらバノン主席戦略官ら側近だというではりませんか(2/1付け日経朝刊)。まだまだトランプ政権の動向は測ることができません。

そんな中、米国経済は堅調で、今後もトランプ新政権が多くの期待どおり公共投資などの積極的な経済政策をとり、米FRBの利上げを政策面から後押しすることが予想されます。これに対して日銀は当初目標の長期化を認めつつも緩和スタンスは変わっていません。両者から当面はドル堅調地合いが続くと見るのが自然でしょう。

ただ、トランプ政権の経済政策には先月も書いたように長続きせず、中長期的にはドル売り圧力に変わる可能性があります。また、シカゴ投機筋の円売りポジションは安倍政権誕生後の円下落時と同水準まで積み上がっていますので、巻き戻すリスクがあります。さらに、先月末からしきりに強調する貿易不均衡を論拠とする円安誘導批判もドル安円高リスクとして考慮しておかなければならないでしょう(貿易赤字は米経済が好調な証拠でもあるんですけどね)。

ただ、その場合の水準はとなるとなかなか言えません。私が独自に計算した購買力平価は現在の水準より10円は円高なんですが・・・。

 

ユーロドル ・・・

トランプ政権の動きがユーロドルにも大きく影響すると考えられますが、現状では予測困難です。

他の材料を探すなら、ユーロ圏経済の回復基調が今後も続くか否か、原油価格上昇でインフレ傾向が明確になるか否か、それらを受けて欧州中央銀行(ECB)が金融緩和政策を縮小するか否かなどの数点です。

経済動向については上にも書いた通り、ドイツが牽引役となって堅調に推移しています。原油価格上昇は今後のOPEC各国の協調性にかかっていますが、対トランプで一体化する可能性もあって当面は変わらないと思います。原油価格上昇によるインフレは日本にも物価上昇効果をもたらすと考えられますが、国内経済を考慮すると日銀のデフレ脱却意思はユーロのそれよりも硬く、円に対してよりユーロに対する影響の方が大きいと考えられます。すなわち、この点だけに限って言えば円よりユーロが対米ドル高圧力強い。

したがって、ECBのスタンスはドラギ総裁が会見でしきりに否定しているのに反して緩和縮小(テーバリング)開始は早いと思います。以上から、短中期ではユーロは堅調に推移するのではないでしょうか。超長期的には従来から書いてきた通り、とかわらずユーロ不安がまだあります。

 

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. トランプ新政権の経済政策。積極策は金利引上げにも通じ、ドル高につながる。

 2. IMM(シカゴ投機筋)の円売り持ち高の積み上がり:巻き戻するなら円高。

 3. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 4. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 5. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. トランプ新政権の経済政策。積極策は金利引上げにも通じ、ドル高につながる。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)

 4. 欧州各国の重要な選挙動向(45月フランス大統領、秋ドイツ総選挙)

 5. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 6. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い(2017/3まで延期を決定(20151203ECB理事会))。独など主要国債の利回り、物価景気動向、貿易収支の変化。

 

【長期的な材料(数年)】

 1. トランプ氏の就任後の政策(現状では何とも言えない)

 2. 欧州各国の重要な選挙動向(45月フランス大統領、秋ドイツ総選挙)

 3. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)

 4. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 6. 英離脱後のEU各国への影響(2017年、主要国の重要選挙予定されている)

 7. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 8. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

以  上

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2017年1月11日 (水)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2016年12月末現在)

【米ドル】

12月はさらに一段円安になりました。

米大統領選挙の影響を受けて急落した円は、12月に入ってからもさらに一段進み、その後は年末にかけて多少反落して年を越しました。

月初は114円台半ばから後半で始まりました。月初の材料は恒例の米国の月次雇用統計発表ですが、12月は他に、12/4に予定されたイタリアの国民投票に注目が集まっていました。しかし、開票途中の混乱があったものの結果(レンツィの辞任を含む)の政治的な影響の大きさに比べて為替への影響は限定的でした。長期的にはユーロの運営にじわじわと影響が出ると予想するも短期的な当期材料とはならなかったようです。米雇用統計も概ね予想通りでした。

一段円安に進む要因となったのは、12/14の米FOMCです。予想通り利上げを決めた他に2017年の利上げ見通しが出され、それがさらに積極的な利上げ予測を支持したことから米ドル全面高となり、円も118円台まで売られました。その後のイエレン議長講演が安定した米雇用市場を強調したことも利上げを補強するものとなりました。

その後は例年通りクリスマスの薄商いの中117円台での小動きが続き、結局116円台で年を越しています。

 

【ユーロ】

12月はさらに一段ユーロ安になりました。

円同様、11月の米大統領選挙の影響を受けて急落したユーロは、12月に入っても米ドルの全面高を背景に、さらに一段安が進み、その後は年末にかけて多少反発しながら年を越しました。

月初の始まりは1.06台半ばでした。12/4のイタリア国民投票では開票途中の反対派優勢報道に1.05を切る勢いまで下げる場面がありましたが、1.05の抵抗線強く、逆に長期利回り上昇を受けて1.07台後半まで急反発しました。

12/8にはECB理事会が開催され、政策金利据え置きや資産買い入れ縮小など決められ緩和継続に消極的な姿勢が見えたことから1.08台まで強含む場面がありましたが、その後のドラギ総裁会見では必要に応じて緩和拡大するなどむしろその姿勢を否定するようなニュアンスが伝わったことで、1.05台まで急反落。12/14の米FOMCの影響がこれを加速させ、2003年以降の安値1.03台半ばを付けました。

その後はクリスマス前後1.04台の小動きが続き、結局その水準で年を越しました。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

短期的にも中長期的にもトランプ新大統領の政策次第で大きくぶれるだろうというのは大方の見方です。その意味では111日の初の記者会見、120日就任日の演説内容等見守らなければならないところですが、その時に表明したことが、その後の政策にどれほど活かされるのかという実現性そのものについても不確実なのだから、どうしようもありません。

ただ、トランプの政策がその思いのまま実現したと仮定した場合の市場への相場決定理論的な市場へのプレッシャー方向ということでは中長期的にはある程度予測可能です。

トランプ氏の政策は、公共投資と減税、反グローバル的保護政策の2つにざっくりと特徴づけられています。

公共投資と減税はカンフル剤として経済を活性化させ、短中期的には金利引上げをサポートするからドル高方向でしょう。しかし長期的には財政を圧迫して長続きしないと考えられます。米に還流した資金は再び新興国に流れてドル安要因になるかもしれません。

反グローバル的保護政策は貿易の縮小につながりますが、輸入関税などにより貿易収支は改善する可能性がありますから、ドル高圧力もかからないわけではありません。しかし、マクロ経済を停滞させる影響が大きく、経済への信頼性から保蔵通貨としてのドルの信頼性を失い、ドル安圧力の方が勝ると考えられます。

以上から、短期にはドル高となる場面があっても中長期的にはドルが売られる傾向になるではないかと思います。

 

ユーロドル ・・・

短中期的には、上に書いたトランプ氏の政策によって占うしかありませんが、ユーロ独自の要因についてもみておくべきでしょう。

トランプ氏の当選によって、反グローバル的な動きがますます活発になってきました。この動きは一部のポピュリストに扇動された感情的なものだとの言い方があちこちでなされていますが、私は必ずしもそうではないと感じています。マクロ経済や国としての経済力の強さを犠牲にしてでも個人の豊かさや拠り所を大切にしたいということの表れではないでしょうか。

もちろん不幸な大衆の不満がとうとう爆発したのだとの見方もあります。しかし、その一方で冷静に自立した個人が経済合理性とは別の価値観に目覚めたのだという面もあります。経済学は一体いままで何をしてきたのでしょうか。とくにローザンヌ学派やシカゴ学派です。トマ・ピケティ氏の論文には異論も多いように見受けられますが、それは経済学の枠組み内からの批判です。世の中にはこれと似た路線を、経済学の枠外から人類史を見直そうという動きもあります。反グローバル派は単に貧困層の不満や感情論だけではないのです。

そんな動きはユーロを根本から揺るがそうとしています。個人や小集団が自立して自己アイデンティティを守りつつ、まわりと協調していこうという動きです。ユーロは、協調は強調しますが、その上に統一通貨や統一財務でこれを固定して束縛しようとしています。それが自立性や自己アイデンティティを許容せず、まっこうからクラッシュします。

超長期的には、ユーロ通貨は難しいと思います。

 

 

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. トランプ氏の就任前発の記者会見(日本時間2017/1/12未明):就任後の政策を占うものとして。

 2. トランプ氏米大統領就任時(2017/1/20)の演説内容:その後の政策の相場への影響を占う。

 3. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 4. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 5. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. トランプ氏米大統領就任時(2017/1/20)の演説内容:その後の政策の相場への影響を占う。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)

 4. 欧州各国の重要な選挙動向(45月フランス大統領、秋ドイツ総選挙)

 5. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 6. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い(2017/3まで延期を決定(20151203ECB理事会))。独など主要国債の利回り、物価景気動向、貿易収支の変化。

 

【長期的な材料(数年)】

 1. トランプ氏の就任後の政策(現状では何とも言えない)

 2. 欧州各国の重要な選挙動向(45月フランス大統領、秋ドイツ総選挙)

 3. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)

 4. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 6. 英離脱後のEU各国への影響(2017年、主要国の重要選挙予定されている)

 7. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 8. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

以  上

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2016年12月 3日 (土)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2016年11月末現在)

【米ドル】

11月は円安一辺倒でした。

月初は、104円台前半で始まりました。注目されていた米大統領選挙では、直前にFRBがクリントン候補のメール問題を手仕舞うと発表した安堵感もあって開票開始時は米ドル強含みでしたが、トランプ優勢で進むと一気に101円台前半までドルが売られました。ところが、欧米市場が開始すると解釈が変わり、一転してドルが買われ始めたのです。

そこからは月末にかけて、ドル高円安一辺倒となり、じりじりと10円以上も円安が進みました。解釈の変化は下記のとおりです。

・ドル売り円買い:トランプ新大統領政策上の不透明感からリスク回避先の円を買う。

・ドル買い円売り:トランプ新大統領の積極的な経済政策に期待するほか、公共投資活発化の一方で減税も進めると言っていることから、財政を心配するむきが長期金利上昇を予想したため、日米金利差に着目してドルを買う。

月末にかけては、9月に大筋合意していたOPECの生産調整は最終的にはもめるだろうと思われていた30日のOPEC総会で、減産合意してしまったため、新興国の経済回復に期待してリスク回避が後退し、ドル買いの材料となって、結局114円台半ばで月を越えました。

 

【ユーロ】

11月はユーロ安一辺倒でした。

月初は1.1前後の水準で始まりましたが、その後は円と同じように動きました。米大統領選挙でトランプ優勢の報道に一時は1.13台まで買われ、その後は解釈が変わって、一気にドル高ユーロ安が進みました。

さらに、トランプ候補が勝利したことが、翌年の欧州各国での重要な選挙に対しても嫌な予感が蔓延、政局不安からユーロを嫌気する空気も広がりました。そのほか、ドラギECB総裁のテーパリング(量的金融緩和措置を徐々に縮小する)に慎重な内容の発言などもあり月末にかけて、1.05ドル台までじりじりと売られていきました。結局1.06ドル前後の水準で月末を越えています。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

短期では、米FRBの金利引上げが確実なことと、トランプ新大統領の積極的な経済政策への期待から、日米金利差が広がり現状水準での円安ドル高は当面続くのではないかと思いますが、中長期的にはトランプ氏就任後の政策運営によるので、かなり不透明です。たしかに、減税をしながら公共投資も進めると資金調達が窮屈になって金利が上昇するというシナリオが成り立ちますし、米行経済はまだまだしっかりしているので金融政策面でも金利を引き上げやすい環境になると思います。

しかし、保護主義的な政策を採り続けるなら米国自身の経済を縮小させるのではないかとの逆の見方もあります。決して現状のドル高円安がそのまま定着するとは考えられません。

一部にはそのことを説得して保護主義的な方針を翻意させようとの動きがありますが、トランプ氏の頭の中は、中西部の旧体質経済に従事していた労働者の悲惨さで一杯です。米国経済全体の成長より優先するのではないでしょうか。現に、選挙戦時とはうって変わって温和になった彼が、TPPのことには一歩も引かない姿勢を見せています。彼を説得でき、世界経済は再び元の価値枠組みに戻ると考えるのはいささか視野が狭いような気がします。

原油価格の動向にも注意しておく必要があります。11/30の減産合意は来年1月から半年の期限で、その後も継続できるかは次回のOPEC総会(四半期毎に開催)によります。

 

ユーロドル ・・・

トランプ氏が大統領選に勝利したことで、ユーロの体制にも黄色信号がともったような気がします。以前も書いたように、英国の選択は、結局は正解だったんだと見られるようになるかもしれません。イタリアをかわきりに続く各国の選挙の結果によっては、現在EUが進めている財政の統合などにも支障をきたすようになる可能性があります。

論点は移民の問題だけではありません。現在EUが進めている財政統合が進むと、各国の政策上の自由度が制約を受けるようになり、広がる国家間格差と貧困化していく南部へのいら立ちがますます強くなっていくのではないでしょうか。

フランスは集権的にEU統合を進めようとしたサルコジ政権に対し、もっと国民にやさしい政治をと、疲弊した中間層の支持を受けてオランド政権が誕生しましたが、そのオランド氏も台頭する孤立主義のあおりを受けて立候補を断念することになりました。この変遷がEU全体の変化を象徴しているように思います。

ユーロ圏経済はドイツが牽引する形で底堅さを維持しているものの、ドイツのおかげでEU全体の経済力が拡大しても、取り残された人々にとってはEU全体経済力などどうでもいいことです。この流れは経済学の枠組みさえ変えるような大きな流れです。トランプやルペンが居なくでも必ず他の誰かが出てくるでしょう。

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. トランプ氏の就任後の政策に関する動きや発言など。

 2. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 3. FRBの年内(2016)利上げ方針を狂わせる発言や政策スタンスに関する見解など。

 4. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 5. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. トランプ氏の就任後の政策に関する動きや発言など。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)

 4. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 5. 欧州各国の重要な選挙動向(イタリア、フランス、ドイツ)

 6. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い(2017/3まで延期を決定(20151203ECB理事会))。独など主要国債の利回り、物価景気動向、貿易収支の変化。

 

【長期的な材料(数年)】

 1. トランプ氏の就任後の政策(現状では何とも言えない)

 2. 欧州各国の重要な選挙動向(イタリア、フランス、ドイツ)

 3. 原油価格の動向とOPECの動き(2016/11/30の合意は2017/1から期間半年)

 4. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 6. 英離脱後のEU各国への影響(2017年、主要国の重要選挙予定されている)

 7. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 8. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

以  上

 

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2016年11月 1日 (火)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2016年10月末現在)

【米ドル】

10月は円安が進みました。

米ドルはユーロに対しても堅調に推移しましたから、円安というより、米ドルが買われたと言うべきかもしれません。

月中を通して市場の心理にあったのは、米利上げです。年内に利上げすることは誰も疑っていませんが、主要な経済指標が発表されるたびに、「それ利上げにプラスなのかマイナスなのか」という視点で評価され、相場にも反映しました。米指標が予想を上回れば利上げ環境を損なっていないとして、金利裁定が働き、ドル買い円売りとなるわけです。

円買い材料がなかったということもドル買いに寄与しました。このところの円買い材料は下記の2つですが、いずれも10月はなりを潜めていたのです。

Ÿ 新興国経済低迷への不安→リスク回避行動→円買い

Ÿ 原油価格下落→新興国経済後退→リスク回避行動→円買い

新興国経済については、例えば、中国のCPIが予想をやや上回ったことや鉱工業生産がそれなりだったことなどで大きな懸念にはつながりませんでした。

また、原油価格については先の増産凍結合意があって落ち着いています。

結局、相場は月初の101円台からじりじりと上昇し、下旬には一時105円台前半まで伸ばして、104円台後半で月を越えています。

尚、米雇用統計や本邦の貿易統計の影響は限定的でした。

 

【ユーロ】

10月はユーロ安が進みました。

これも米ドルが買われたという方がいいでしょう。なので、ユーロ安の材料はドル円で述べたこととほぼ重複します。

ただ、ユーロでは、以下の3点が気になるところです。

1.欧州中央銀行(ECB)の動向

ECBの金融政策スタンスに関する近時の話題は緩和措置の延長か縮小かです。ECBは2015123日の理事会で、20153月から開始した量的緩和策の期限を当初の20169月から20173月まで延長しました。しかし、緩和効果は徐々に出ており、鉱工業生産やCPIもこのところ堅調に推移しています。緩和は縮小してもいいのではないかとの議論が起こっています。「テーパリング(先を次第に細くするという意味)」と言われているようです。これをドラギ総裁や関係者が否定したり期待させたりするから、市場がいちいちこれに敏感に反応しているのです。10月では、20~21日に相場変化として顕れました。

2.経済のファンダメンタルズ

ドイツを中心として底堅く推移しており、いつも夏になると物議をかもしだすギリシャ問題も今年はすでにクリアしています(まだ先がありますが)。10月は、ドイツ銀行の経営不安も払拭するような四半期決算が発表されるなど、企業業績も悪くありません。

3.英国のEU離脱

離脱交渉の行方によっては欧州経済に大きな打撃になるか、それとも軟着陸するか現状はまだ見通しがききません。要人の発言に注目が集まります。

これら3材料は、気になるもののいずれも10月ではあまりユーロを買う方向には作用しなかったようです。結局、相場は前月を受けた1.12台半ばから月末近くの1.08後半までじりじりと値を下げました。最後にクリントン候補のメール問題再燃でちょっと買われ、1.09台後半で月を越えています。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

10月の動きで、経済的なリスク懸念が後退して回避先としての円買いがないとかきましたが、伏兵がいないとも限りません。国際決済銀行(BIS)によれば、新興20ヶ国の債務は7年前に比べて3倍に膨張したそうです。この間のGDPが1.5倍にしかなっていないことを考慮すると膨張し過ぎだとの記事が今朝の日経に載っていました。

この状況下で米国が利上げすると、新興国の金利負担が大きくなることが懸念されます。それよりも心配なのは、1997年のアジア通貨危機のような資本逃避です。リスク回避の円買いが進むかもしれません。さらに、これを心配した米国が年内の利上げを見送るような事になれば、これも円買い材料です。

原油価格の動向も注目しておかなければなりません。OPECはイランの増産をなんとか抑えていますが、本番は11月の総会ですから、これに向けた生産調整の協議が進むでしょう。合意できれば新興国経済が持ち直す材料となりますから円安、合意できなければ円高です。

 

ユーロドル ・・・

上で書いた、新興国経済と米国の年内利上げ、原油価格動向はユーロに対しても作用します。

ただし、新興国経済の悪化はユーロ買いになるのか売りになるのかは不透明です。ユーロ自身がリスク回避先としてまだ地位を固めていないからです。それでも新興国経済悪化を懸念した米が利上げを先送りするならユーロ買いが進むでしょう。原油価格も同様です。

ユーロに関しては、他に英国のEU離脱ショックがあります。また、欧州中銀はテーパリング(緩和措置の縮小)をするかしないかをまだ決めておらず、それを11月の理事会まで持ち越しているというのが市場の見方のようです。11月の会合とドラギ総裁の記者会見は先月以上に注目しておくべきだと思います。

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 2. 原油価格動向(2016.11.30OPEC総会で生産調整枠組み合意できるか)、下落に伴う資源国経済の先行き懸念リスク回避による円買い(短・中期)

 3. FRBの年内(2016)利上げ方針を狂わせる発言や政策スタンスに関する見解など。

 4. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 5. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. OPEC増産凍結合意(2016/9)を受けた原油価格動向:上昇は円安要因。

 4. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 5. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い(2017/3まで延期を決定(20151203ECB理事会))。独など主要国債の利回り、物価景気動向、貿易収支の変化。

 6. 欧州の政治要因:テロ対策や難民対策など、リスク退避先として評価されつつあるユーロに不安。

 

【長期的な材料(数年)】

 1. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 2. OPEC増産凍結合意(2016/9)を受けた原油価格動向:上昇は円安要因。

 3. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 4. 英離脱後のEU各国への影響(2017年、主要国の重要選挙予定されている)

 5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 6. ギリシャ問題:2018年に第3次支援終了

 7. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

以  上

 

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2016年10月 3日 (月)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2016年9月末現在)

【米ドル】

9月は少し円高になりました。

前月(8月)末のイエレンFRB議長の講演内容が米利上げを期待させるものだったことから、103円台までドルが強含んで月末を越えましたが、月初2日の米雇用統計発表(市場予想を下回った)に一次ドル売りで反応した後、米金利上昇にすぐ反応して、104円台まで上昇(円安)しました。

その後は、黒田日銀総裁の講演で追加緩和の期待が後退したり、それを支援するような浜田内閣官房参与の発言があったりして101円台まで下落(円高)する場面がありました。しかし、一方で財務相(日本)が40年国債増発を発表したり、日銀も長期国債を買い入れるとの報道があったりして、103円まで上昇(円安)する変化も見せました。つまり、金融スタンスに関する報道や発言に左右され、101103円台で行ったり来たりしたのです。

それは結局、21日の日銀政策決定の発表と米FOMCで、両者ともドル売り円買いの方向で反応したため、100円台まで下落しました。日銀は一部で期待された緩和策がなく、FOMCは政策金利据え置きだったのです。

下旬は、原油価格が相場の材料となりました。OPECが大方の予想を裏切って増産凍結で一転合意したのです。これにより、世界経済の先行き不安の原因となっていた原油価格下落に歯止めがかかると評価され、リスク避難先通貨の円が少し売られた結果101円台まで戻し、結局101円台半ばで月末を越えました。

 

【ユーロ】

9月はあまり動きませんでした。

8月は1.11台で始まり、1.13台まで上げた後再び1.11台に戻ってくる、行って来いの相場でしたが、9月は多少の値動きがあったものの、1.12水準で方向感のない相場展開となりました。

月初は、1.12を切る水準ではじまった後、米雇用統計の結果を受けて一時的に1.25台に上昇しますが、すぐに1.12を切る水準にもどりました。その後は欧州中銀の政策スタンスは据え置きと発表され、ドラギ総裁も追加緩和には消極的な発言をしたことから若干強含む場面がありました。しかし、大きく方向を変えることなく、日銀の政策決定会合や米FOMCの結果への動意も限定的でした

ただ、下旬にかけてドイツ銀行の資本毀損が市場の不安材料となり、ユーロ下落につなる場面があったことはいつもと違う話題として少しだけ目をひきました。もっとも、後に資本毀損の原因となっていた制裁措置に配慮するような動きがあってこれも今のところ大きな問題にはなっていません。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

米FRBは年内に一度利上げすると言っています。それを評価した結果現在の101円台半ばでの推移がありますので、これを持ち越すようなことがあると円が買われる方向となるでしょう。

一方の日銀はマイナス金利政策の総括を9月に行ったものの大きな方向転換はなく、市場の反応は限定的でした。ただし、この中で一部国債の利回りの低下に歯止めをかける操作方針が発表されたため、今後の長期金利の変化が気になります。民間の運用利回りに配慮した結果ですが、現状ではあまり効いていないようです。

それより、原油価格動向がにわかに材料として浮かび上がってきました。いままでは経済制裁から解放されるイランが増産に固執してきたことなどから下落を続け、これに世界経済の停滞が加わって将来も上昇することはないだろうとの予測でした。その結果、新興国の経済がますます停滞してリスク回避通貨の円が買われて円高の要因になっていました。しかし、OPECが一転増産凍結合意したことから潮目が変わった可能性があります。原油価格が上昇すると新興国経済が回復してリスク回避ムードが和らぐほか、日本の経常収支黒字が減少し、国際収支説にしたがうなら円安に向かうと予想されます。

この影響はただちには顕れませんが、中長期的には考慮しておかなければなりません。

 

ユーロドル ・・・

エマニュエル・トッド氏は、EUを離脱しようとしている英国に問題があるのではなく、問題はEUが抱えているのだと書いています。ユーロはドイツに支配されるだろうなど少し過激な発言が目立ちますが、EU制度自身に問題があるという見方はあながち間違ってはいないのではないでしょうか。先月書いたように、EUはマンデル・フレミングの法則に対して蟷螂の斧を振りかざしています。ユーロ通貨が始まってからの対米ドル相場は2008年頃をピークに、現在は歴史的に低い水準で推移していますが、だからといってそろそろ反転して再び1.41.5まで伸びるだろうとの予想が成り立つとは思えません。

もちろん、欧州中銀に追加緩和策の余地なく、一方の米FRBが年内利上げを断念するような事態が発生するなら短期的には上昇する場面もあるでしょう。しかし、それはあくまで短期の話。長期では弱い方向だと思います。

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 2. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 3. FRBの年内(2016)利上げ方針を狂わせる発言や政策スタンスに関する見解など。

 4. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 5. 英国のユーロ離脱投票結果の後遺症

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. OPEC増産凍結合意(2016/9)を受けた原油価格動向:上昇は円安要因。

 4. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 5. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い(2017/3まで延期を決定(20151203ECB理事会))。独など主要国債の利回り、物価景気動向、貿易収支の変化。

 6. 欧州の政治要因:テロ対策や難民対策など、リスク退避先として評価されつつあるユーロに不安。

 

【長期的な材料(数年)】

 1. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 2. OPEC増産凍結合意(2016/9)を受けた原油価格動向:上昇は円安要因。

 3. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 4. 英離脱後のEU各国への影響(2017年、主要国の重要選挙予定されている)

 5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 6. ギリシャ問題:2018年に第3次支援終了

 7. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

以  上

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2016年9月 1日 (木)

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2016年8月末現在)

【米ドル】

8月は円高の後、月末に戻りました。

月初102円台前半で始まりましたが、8/2には、政府が発表した経済政策に市場がドル売り円買いで反応、100円台後半に押されました。この日発表した経済政策とは、前月7月10日の参院選挙で大勝したことを受けた与党がアベノミクスを勢いづかせようと取りまとめた政策です。一部の期待を裏切ったというのが原因ですが、政策効果を裏切られたのに円を売るとは不思議ですね。政策効果に期待できないから、日本経済は浮上しない。浮上しないと言う事はインフレにもならないので、デフレ通貨は強いという理屈から円を買ったということでしょうか。或いは、経済が浮上しないなら全体としてリスク回避に動きだすから避難先通貨である円を買ったということでしょうか。

それはともかく、8月は市場取引が薄く、ちょっとした材料に市場が過剰に反応しがちです。例月行事の米雇用統計では、雇用量に加えて賃金などでも好結果が出たと言う事もありますが、久しぶりにしっかりした反応を見せ、102円台に乗せました。

しかし、その後はさえない米経済指標の発表に再びドル売り円買いが進み、一時99円台半ばまで円高が進むなど、薄商いならではの理不尽な推移となっています。

月末には、注目されていたイエレン議長の講演内容が米利上げを期待させるものだったため102円台まで戻し、結局月初の水準から少しドル高円安の103円台前半で月末を越えました。

 

【ユーロ】

8月は行って来いの展開でした。

月初は、前月の低迷から少し復活する兆しを見せ、1.11台半ばで始まったあとも1.12台まで強含みました。その後は、85日に発表された米雇用統に計が市場予想を上回る結果であったため、米国の利上げ環境も整いつつあるとの見方から米ドルが買われ、一旦1.10台半ばまで下落しましたが、それから下旬にかけては、強含む展開です。

8月の薄商いの中、米経済指標に振られて、じりじりと1.13台前半まで乗せ、18日のFOMC議事録が利上げ観測を後退させるような内容であったことから、さらに1.13台後半に届く水準までユーロ高ドル安が進んだのです。

しかし、これも月末の数日(注目されていたイエレン議長の講演内容が米利上げを期待させるものだった)で一気に反転して結局1.11台半ばという月初と同じ水準で月末を越えました。

 

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

価値の保蔵という通貨の役割に注目するなら、経済の基礎力を表すGDPは大事な指標です。超長期的には物価水準の上昇が通貨を減価させますが、物価上昇と並行しがちなGDP成長率の高い水準は中期的には通貨を増加させるのです。

日本のGDPは低迷していますが、これを押し上げる経済政策以外の意外な作戦が2つあります。

一つは、1億総活躍の旗印の下に進められている配偶者控除の見直しです。もちろん総活躍は正面切った経済として底上げ効果を期待したものですが、それ以外にも計算上の効果があります。いままで家事はGDPに加算されていませんでした。お金が動かないから計算の仕様もありません。しかし、配偶者控除を見直して主婦が外へ働きに出るようになると、疎かになった家事を埋めるべく、お掃除サービスやら家政婦やら育児サービスなどのビジネスが盛んになるでしょう。それはいままでGDPに加算されなかった家事を表に出して加算することを意味します。日本人の総労働量は変わらないの統計上のGDPだけかさ上げされるのです。

二つ目はGDP算出手法の変更です。企業の研究開発効果はいままでGDPの計算対象外でした。しかし、研究すれば技術革新につながり経済を押し上げる効果があるはずだということになって、各国はこれを算入するようになっています。日本はまだ実施していませんが、最近新聞紙上では統計手法の不正確さが議論されるようになっています。僕にはこれが研究開発効果を算入するための世論形成に見えて仕方ありません。これも日本人の総労働量は変わらないのに統計上のGDPだけかさ上げすることになります。しかも数%も。

政府は、「やはりアベノミクスの効果絶大である」とその成果を強調するでしょう。そのうち暴力団の麻薬取引もGDPに加算するようになるかもしれませんね。

 

ユーロドル ・・・

英国のユーロ離脱は皆慌てましたが、「時が傷を癒してくれる」~Time heals all wounds.

All woundsとはいきませんが、それなりになるだろうと市場が思い始めたということではないでしょうか。201671日(6月末現在の記事)にも書いたように、もともとユーロ離脱はさほど不幸なことではないと思っています。一方では先月書いたように、長期的には、マンデル・フレミングの法則に蟷螂の斧を振りかざしているユーロの構造的不備が不安材料として残ります。中期では復活する場面もあるかもしれませんが、超長期では米ドルに対して弱いとみています。

下のグラフは、Euro Statから入手したユーロ円、ユーロドルの相場推移です。各年の平均値なので2016年はまだデータありませんが、ユーロが導入された当初からの長期的推移として参考になると思います。

 

160901

 

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

 1. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 2. 石油価格下落に伴う資源国経済の先行き懸念リスク回避による円買い(短・中期)

 3. 日銀金融政策の変化(政策決定会合の議論内容や発表内容)米国の金融政策スタンスとの比較。

 4. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 5. 英国のユーロ離脱投票結果の後遺症

 6. 金融当局による介入姿勢に関する発言など。介入懸念は円安、介入牽制は円高。

 

 

【中期的な材料(数ヶ月)】

 1. FRBの段階的・継続的利上げペースを占う、米経済主要指標。好調なら、ペース早くドル高。

 2. 英のEU離脱交渉の行方

 3. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

 4. 欧州中銀(ECB)の量的緩和策(2015/32016/9)の進行度合い(2017/3まで延期を決定(20151203ECB理事会))。独など主要国債の利回り、物価景気動向、貿易収支の変化。

 5. 欧州の政治要因:テロ対策や難民対策など、リスク退避先として評価されつつあるユーロに不安。

 

【長期的な材料(数年)】

 1. 中国など新興国の景気動向。改善・成長本邦輸出促進貿易収支改善円高(短期的な影響と異なる)。

 2. 円安による輸出促進効果で貿易収支の改善、経常黒字拡大が再び円高を誘う。

 3. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

 4. 英離脱後のEU各国への影響(2017年、主要国の重要選挙予定されている)

 5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下財政破綻超インフレ(円安)。

 6. ギリシャ問題:2018年に第3次支援終了

 7. 南海トラフ地震による大災害。対外資産取り崩して資金の国内還流が起これば円高騰。

 

 

以  上

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